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日本一バラエティに富んだ医療行為を受けた経験がある看護師

仕事でnoteの更新が滞ってました。
昼夜が逆転してしまうと、書くのはもちろん、生活が乱れるという事が過去の経験からわかっていることで。

さて、表題の件
“日本一バラエティに富んだ医療行為を受けた経験がある看護師”とは
僕のことです。

そう、僕は、
“看護師であり、日本一バラエティに富んだ医療行為を受けた経験”
があります。

今回、ちょっと長くなります。
なにぶん19年前からの記憶を起こしますので、医療も今とはかなり背景や処理が異なると思います。そのつもりでお読み頂けましたら嬉しいです。

プロフィールにも記載していました通り、
僕は18歳の時に交通事故で肝破裂を起こしました。
バイクで車と出会い頭にぶつかりました。ただ、表面は骨折もなく全身打撲と擦過傷ですんだものの、実は内臓には致命傷を負っていました。

そんな最中ですが、車と衝突した直後は、
「あいた~ やってしまった。バイト遅れるやん・・」
な程度でした。
事実、搬送の救急隊に住所・氏名を聴かれた時も、
「すいません。バイト先に少し遅れると電話しといてもらえますか?」
などと、まぬけな事を伝えていました。

幸い事故現場からほどない距離にあった病院にすぐ搬送され、検査やなんやのためにストレッチャーであちらこちらと連れまわされました。
(ストレッチャーに乗っていると、常時上を向いているためどこをどの経路で動いたかが後から全くわかりません)
しかし、この間も、
「なんかお腹に違和感を感じる」程度だったので、自分としてはただ衝撃をうけただけなのだと思ってました。

様子が変わったのが、MRIを撮る段階になった時、
(後から医師に聴きました)

「あれ?なんか気持ち悪いな。・・・気持ち悪いぞ? なんやなんや?」
その瞬間に嘔吐しました。
嘔吐が止まりません。その後、急激に頭が真っ白になってくるような感じで、その時やっと自分でも命の危機を悟りました。

病棟のスタッフステーション併設のICUで管理されました。
隣で医師より母親にICをされていました。
「肝臓に問題があるから緊急に手術が必要」とのことでした。
心配を隠し切れない母親を横目に、
「どうもないわ」
と返答するのがやっとでした。

手術に先だって準備があります。数人の看護師さんと医者に囲まれて対応されました。
まずは両手のパックリ開放していた1cm程度の傷を縫合されました。
多分、無麻酔でした。(19年前ですw)

次に、Baカテーテルを挿入されました。いわゆる「おしっこの管」です。
男性の方は想像つくかもしれませんが、やはり抵抗あります。
実際、致命傷を抱えていたので自覚はさほどでした。でもやっぱりちょっとだけ痛かったです。

身体を清拭してもらい、手術衣に着替えさせてもらう。
点滴のルートをとられ、酸素マスクを装着しました。
ここまでもはっきり覚えています。
でいざ手術室へ。
麻酔薬をかがされ、意識はおのずと落ちていきました。

手術は成功し、僕は命を長らえました。

目が覚めて翌日。
僕は、こんなに多くのものをしょっていたのかと思うくらい、色々な医療器具を装着したり、囲まれたりしていました。

箇条書きにすると、
・心電図モニター
・酸素マスク
・点滴ライン(IVH)
・点滴が常時5本程度
・Aライン(動脈ライン)
・バルンカテーテル
・経管栄養の鼻腔チューブ
・ドレナージチューブ4本(胸腔2本、腹腔2本)
・低圧持続吸引器2つ
・背中(腰椎)から硬膜外麻酔のチューブ
・輸血
etc・・・

いわゆる「スパゲッティ症候群」とはこのことです。
でも、あの頃、あのおかげで助かったのです。
この入院生活をもう少し描きたいのですが、今回は入院体験記ではなく、
あくまで
「日本一バラエティに富んだ医療行為を受けた経験がある看護師」
としてのテーマなので、後は少し端折ります(笑)

この入院は3か月続きました。もちろん附属物は徐々に外れましたが、この状態からでも、3か月後にはある程度満足な状態で退院することが出来るのですから、医療はすごい。
そして、若さもすごいと思います、今だったらたぶん死んでます。

以下、この入院中に受けた医療行為です。

・手術の傷が膿んだ。
肝臓破裂を緊急的に手術しているものですから、大きな開腹術です。
実際、僕のお腹には今でも縦15cm+横25cmくらいの痕があります。
縫合した「糸」は時間と共に溶けてしまうものが埋没されているのですが、それまでに免疫力が落ちる等の状況があると、感染して化膿したりします。

で、この対応ですが、
Dr:「ああ~膿んだね」
といいながら、ゾンデと呼ばれている針金みたいなものをおもむろに取り出し、いきおいよくその針金で傷口を「グサッ」
もうね、「ギャー!!!」どころの騒ぎではありません。
もちろん麻酔もありません。ただただその針金で埋没した糸を抜くという作業が僕にとっては苦行でした。半端ないです。
実際、退院後に別の箇所が腫れた時、これを思い出して怖くなった僕は敢えて医者に伝えず、2年ほど抗生物質入りの軟膏でしのぎました。
んで、いつのまにか衝撃で糸ごと勝手に抜けてしまったと。
我ながら恐ろしいことをしたとは思いますが、当時の僕(たぶん今でも)にとってはあの針金の痛みほど恐ろしいものはなかったのです。

・胸腔ドレナージ
胸の中には空間があります。肝臓だけじゃやないのですが、代謝に異常を来すとこの“腔”の中に水がたまったりします。
これを抜く作業の一つが「ドレナージ」という治療になりますが、僕の場合、この水が胸とお腹に大量にたまりました。
お腹の水を抜くのはさして痛みはありません。(そうはいっても麻酔で針を刺され、太い針で貫かれるためちょっとは痛いです。)
問題は胸を貫かれる時です。

これには人によっても術者によっても一長一短あり、どれがいいとかはないようですが、僕の場合、胸腔ドレナージ2本の内、1本が常に肋間神経に触れていた可能性があります。

一言でいうと、
『激痛です』
しかも、『毎秒』です。

胸腔へアプローチするには肋間(肋骨と肋骨の間)を貫く必要があるのですがそこには肋間に沿って走る神経もあります。
これがうまくいかないと、その肋間神経に触れることになります。

で、この肋間神経の刺激がとんでもないです。

一言で言えば“地獄そのもの”です。

看護師さんの中にはこの胸腔ドレナージをみてきている人も多く、基本的にうまくいった事例を多数みている人もいます。
うまくいくと、「そんなに痛くない」ものです。
でも、肋間神経に触れた時は激痛です。
この状況は外部から判断できません。なので、医療従事者の中には、

「あのヒトは痛みの閾値が低い」

などと、まことしやかに判断する人、言う人がいます。
男性でこの苦痛を訴えると、あざ笑われる時もありますw

これを思ったことある医療従事者は、以後、考えを改めてください。
この考えは大罪です。
それが出来ないのなら、
今宵限り看護師でも、医療従事者をお辞めください。
はっきり言います。向いてないです。
後述しますが、僕自身、明らかに痛みを軽んじられるようなひどい対応をされたことがあります。あの恨みは一生忘れません(笑)

・上部内視鏡(胃カメラ)
上記2つに比べれば、胃カメラなんぞ屁でもないですが、初めて受けた時は戸惑いました。
あの頃は鼻アプローチはなかったので、口(咽頭)に麻酔のどろっとした液体を入れられ、やや感覚を鈍感にします。
で、カメラを口に入れられ、
「はい、オエッとしてください!」
と言われるのです。
うまく「オエッ!」と出来たら、食道にカメラが進みます。

あの頃、その状況のわけがわからず、食道までカメラが進んだ瞬間、
「ああ!息ができない!どうやったらいいの!?」
と数秒パニックになりました。もちろん気管と食道は別ルートなので息は出来るのですが、そういった考えもあるという想像をした説明が事前に入りますね。看護師さん。

この間に
・点滴棒を持ちながら、一人で階段を上るというリハビリをしたり、
・その過程で、胸腔に入っていたドレーンが柵に引っかかりヒヤヒヤした思い出があったり、
・持ち込みの鳥カラを食べたら脂分のせいか、急に40度の熱が出たり
(実は胆管炎でした。)
・その際に出現した悪寒や震えが、おおげさじゃなく、指揮者が指揮棒をふるくらいの振り幅で震えたなど

紆余曲折を経て、退院できました18の夏でした。

以後、特段問題なかったのですが、時折いきなり高熱が出てくることがありました。
んで、明らかにおかしな血液データが出た7年前くらいの夏。

普段、熱が出ても38度くらいなら何食わぬ顔で仕事している僕ですが、この時はさすが様子が変でした。
で、調べたら炎症反応と言われる「CRP」という数値が24程度。
通常、4や5でもしんどいものがこのような数値になっており、いっきに検査が始まりました。
・CT、MRI
・Gaシンチ(核医学検査)
・腹部超音波検査
・HIV採血検査

まぁ、色々やりましたが、結果的には元々手術した肝臓の内部の胆管という管が細くなってきている。
これが原因でそこを通る「胆汁」という液体がよどんで感染を起こし、「胆管炎」という状況になっているのではないか?という診断が下されました。
おまけにその通路には小さな石も出来ていると。

で、元々入院した病院へ10数年ぶりに入院し、処置を受けました。

・PTCD+胆道鏡
通常、肝臓内の胆管は数mm単位なので、そこをみるには特別なカメラを通すしかない。
ということで、まずは「PTCD」という手術を受けます。
これはどんなものかというと、肝臓の表面に麻酔で注射して、専用の針で肝臓ごとその中にある通路「胆管」を射抜く、という野蛮極まりない処置です(笑)
しかも、初回はお腹の動きを止めるのに「息止め」が重要なので鎮静はなしです。
んで、この時もまたくらいました。
PTCDには左右のルートがあるのですが、この時は右ルートを選択されました。右ルートは前述した「肋間」を通るルートです。


「痛っ!!!!!」
Drの処置開始と共に、とてつもない電撃痛が!!

Dr:「あっ!ごめん!」

またかい!!(泣)

・・・もうとんでもないです。
ほんとに毎秒痛いくらいです。

少し動きをとるたびに刺入部から電撃のような痛みが走ります。
入っている場所のせいで、水平に寝ころぶことができなくて、四六時中座っているような状態で過ごさなければなりませんでした(3週間)

それでも夜は寝たいので少しうとうととすると、ギャッジを上昇させたベッドなので自然と身体がずり落ちてきます。
ある一定の角度までずりおちると、刺入部に抵抗が走り、

「痛っ!!」

で目が覚めます。

いい年の男性ですが、もう本当に毎日泣きそうになりました。
人生初、睡眠導入剤も服用しました。でも痛みには勝てず同じことでした。

看護師さんにも笑われました。
挙句の果てに、
看護師Aさん「もりおかさんは痛みに弱い方ですか?」
      「それではお産とかできませんねぇ ははは」


なんだそのさげすんだような顔は?w
いやいや、百歩ゆずってこっちの先入観であっても、「普通はそんなに痛くないもの」って決め打ってる態度にしか見えないが・・・?

あっ、こいつ、
絶対馬鹿にしてる。


こっちだってこの処置するのはもう4回目
“うまくいけば”痛くないことなんてもちろん承知しています。
問題は君の所の先生が「失敗」したからでしょ(はっきり言います)

・・・こいつ 絶対許さねーw

いや、本当にですよw

ただでさえ、自分が医療従事者でどこで働いているのかも知られてるし、ましてや、ここで反抗しようならこれからきちんと対応してもらえないかもしれないというような不安を抱えている患者に対して、なんじゃその言いぐさは!www
しかも、「お産できませんね」って関係ないやろ!
出来ないことと比べることもそうだし、そもそも「小馬鹿」にしている態度がありありだと。
先ほどもいいましたが、このような看護師さんはセンスがないので即刻辞めて頂きたいとも思いますが、この方が以後、患者さんに対して優しく出来るようになっていてほしいなと切に思います。

ボルタレン座薬50㎎を8時間ごとに使用してても一切無効な痛みなんですから、神経の痛みをなめるな!!!!(笑)
患者が訴えている「苦痛」を自分たちのものさしで判断しないような、そんな医療従事者でいっぱいになってほしいと思います。

ちょっと思い出してイラつきました。
すみません。

で、この後はその刺入部を胆道鏡が挿入できる太さまで拡大していく予定でしたが、肋間に触れていることもあり、ある程度で中止になりました。。。
でも、そのころには血液データも落ち着いており、一度退院して仕切りなおすことになりました。

1年後、

再発しました。
もちろん、抜本的な対応はされていないですから。

で、次は以前と異なる大学病院でトライしました。

・ERCP+小腸ダブルバルーン
口からの内視鏡なのですが、もっと奥底をみるためのものです(すみません、かなり平たく言ってます)
で、僕の場合、十二指腸から小腸→肝臓というまれなくっつき方をしてます。
小腸はそのままだと常に「へしゃげて」いますので、カメラが通過できません。
で、ダブルのローラーをつけて「尺取り虫」のように目的地に進む。そんな処置です。

これには鎮静が必要なのです。なぜなら、相当苦しいからです。
僕の場合は肝臓が直接小腸とくっつけてあったりと、解剖がややこしいのもあります。
なんせ、内視鏡で胆管を直そうとしてくれました。
結果的にはこれは失敗に終わりました。理由は昔の手術によって、そこまでのルート(小腸)が腹腔内で癒着して張り付いているので、無理にはがしながら進むと危険と判断されました。やはり、PTCDによるアプローチになります。
現に、鎮静をかけていても、痛かったのは覚えていますし、暴れて何人かに押さえつけられたのを夢うつつに覚えています。
※ちなみに、鎮静は「ミタゾラム」という薬品を使うことが多いのですが、全く効かなかった僕は「プロポフォール」というものを使用されました。
ミタゾラムを使うと「すごく寝る人」と「すごく饒舌になる人」がいるらしいのですが、僕は何故か後者だったと、後で主治医に聴かされて少し恥ずかしくなりました。

・PTCD再トライ
今回は左ルートでした。左ルートは肋間を通さない分、やや固定が不安定になるようでしたが、無事に処置してもらえました。
全く痛くない!さすが大学病院、というか、うまくいくと痛みなんてないんです。あってももちろん我慢できる。
刺した穴を一週ごとに拡大させます。この作業が意外に痛くて、毎週苦行だと思ってました(例えるなら、毎週お腹に徐々に太くなる針を刺されているようなものです。麻酔は皮膚と筋肉にしかかかりません。腹膜という部分だけにはかからないので、たぶんその辺りを「押される」ようなイメージです)

治療には数日かかりました。
数日おきにレントゲンの透視下で処置をしてもらました。前述した原因のせいで、鎮静剤は使用できなかったのですが、最終的には胆道鏡を使わずとも結石を破壊してもらうことに成功しました。

・PTCDドレーン内瘻化
石もとれたし、胆道自体も風船で拡張(これがまた痛い)したのですが、今後も道がせまくなる可能性が高いと判断され、恒久的にドレーンを肝臓に留置し、埋め込もうということになりました。

なので、僕のお腹には今もドレーンが埋められています。
触ると、いわゆる「胃瘻」のようなものが触れる感触があります。
これを入れていても、数年単位で閉塞してまた胆管炎を起こすので、定期的に交換入院が必要です。

ちょっと長く書いたので疲れました(笑)
本当はもっと細かなドラマもあるのですが、何回も言う通り、今回は

『日本一バラエティに富んだ医療行為を受けた経験がある看護師』

がテーマなので、とりあえずこの辺で。

まぁあれです。
こんなんでも生きてますし、看護師としてやってきました。

しかし、誰よりも、
医療行為の『受け手』としての感覚は、
研ぎ澄まされていると思っています。

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K.Morioka
いつも読んでくださって感謝します。 医療業界のアグリゲーターになれるように頑張ります。