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佐川町立図書館さくとでのデジタル資源カード実践記録〈スタート編〉

2024年12月20日(金)、佐川町立図書館さくとがオープンしました(高知県)。さくとでは全館でデジタル資源カードを導入しています。この記事では、さくと開館までのデジタル資源カード導入実践の流れを私の目線からつづります。

写真:中央に大きな木の柱があり、傘のように広がった屋根裏の天井が見えます。木材と白を基調とした明るい図書館の空間です。
中央の大きな柱が印象的な木造平屋建ての建築です

デジタル資源リストの共有とフォーマットの検討

佐川町立図書館さくとは、延床面積1,200㎡の小さな図書館です。限られた空間を有効活用するためにも、開館準備の段階からデジタル資源を積極的に取り入れる計画をすすめました。アドバイザーを招いて、デジタル資源について学ぶ研修も行いました。

蔵書・配架計画が具体化してきたタイミングで、アカデミック・リソース・ガイド(arg)の岡本さんから50件ほどのデジタル資源リストが共有されました。デジタル資源カードのフォーマットも合わせて検討しました。先行して泉大津市立図書館での実証実験が進んでいたため、カードの試作をスピーディーに行えました。

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A5, A6, B6, 新書サイズのデジタル資源カード

4つのサイズのデジタル資源カードを試作し、開館のタイミングでは本棚に余裕があることから、A5サイズを中心に作成することに決めました。単行本と同等のサイズを確保することで、物理的にも紙の本と並列にデジタル資源を見せられるのが良かったです。

図書館の備品として、デジタル資源カード用のアクリル製POPスタンドを100個用意していただきました。プリントしたカードを挟んですぐに使えて、差し替えも容易なため、実践と更新のハードルを下げられます。

「まず扱いたいデジタル資源25選」からスタート

デジタル資源カードの配置は、LRG49号にも掲載した「まず扱いたいデジタル資源25選」からスタートしました。司書さんのアイデアで、参考資料のコーナでデジタル資源カードを一覧できるようにしました。

写真:参考図書の本棚に辞書類とデジタル資源カードが並んでいます
ずらりと並ぶと存在感が生まれます

真新しい棚に並んだ本に合わせて、25のデジタル資源カードを置いていきます。

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がんに関する本の側に「がん情報サービス」のデジタル資源カード
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分厚い紙の辞書の隣にオンライン辞書のデジタル資源カード

さくとでは、一般書と児童書が同じ本棚の上下段に並ぶ「混配」を採用しています。蔵書のボリュームによっては上下段の棚の余裕に差ができますが、そこが良いデジタル資源カード置き場になります。スマートフォンでも直感的に操作できる「職業情報提供サイト(job tag)」などは、子どもたちにもぜひ見て使ってほしいデジタル資源です。

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職業に関する棚に「職業情報提供サイト job tag」のデジタル資源カード

しばらくすると、誰かがデジタル資源カードに合わせた本をセレクトして並べてくれていました。紙の本とデジタル資源を組み合わせることで、データに文脈が生まれ、新しい本の読み方・情報の探し方を提案できます。

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『意味がわかる統計学』と e-Stat

1つのデジタル資源を複数の場所に配置することもできます。たとえば「青空文庫」のデジタル資源カードは、日本文学、海外文学、大活字本のコーナーに置きました。このとき、それぞれのコーナーに合わせてカードに掲載する説明文を書き換えました。

本棚に合わせてデジタル資源を追加

続いて、今度は本棚に合うデジタル資源を探してカード化していきました。佐川町や高知県の資料が並ぶ「さかわスタジオ」には、地域プロジェクトマネージャーの大道さんがデジタル資源カードを作ってくれました。「テンプレートがあるからすぐにカードを作れて便利!」と言ってもらえたのが嬉しかったです。

バリアフリー図書のコーナーには、「みなサーチ」のデジタル資源カードを。

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LLブックと並べた「みなサーチ」のデジタル資源カード

絵本コーナーには、「こんとあき特設サイト」のデジタル資源カードを絵本と並べて。

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「こんとあき特設サイト」のデジタル資源カード

本棚とメルマガ「ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)」で紹介されたデジタル資源を見比べながら、カードを追加していきました。門倉百合子さんがデジタル資源にNDC(日本十進分類法)をふってリスト化してくださっているので助かりました。

argの岡本さんからも蔵書に合わせたデジタル資源をご提案いただき、棚を充実させていきました。

写真:3段の小さな本棚に、書籍、雑誌、模型、デジタル資源カードが置いてあります
建築の資料を集めたモバイル本棚に「architecturephoto®」のデジタル資源カード

立派なBOX全集のある『鉄腕アトム』や『鉄人28号』の側には、手塚治虫、横山光輝のオフィシャルサイトを紹介しました。デジタル資源カード化するサイトを選定する中で、“通せんぼ広告”があるために残念ながら紹介を見送ったサイトがいくつかありました。利用者体験を損なう悪質なネット広告がはやく淘汰されることを願っています。

さわれるデジタル資源展示

画期的だったのは、デジタル資源カードの隣にそのサイトを表示したタブレットを置いたことです。気になるデジタル資源をその場でさわって情報にアクセスする体験ができます。カードとタブレットをセットで提示することで、館内に置かれた一連のカードがどういうものかが一目でわかるようになりました。

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巨樹・巨木林データベース」のデジタル資源カードとタブレット
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うちの郷土料理」は高知県のページをタブレットに表示して

雑誌とデジタルコンテンツ

さくとでは、雑誌コーナーでもデジタル資源を案内しています。25選で紹介されている「みんなの趣味の園芸」のほかにも、充実したデジタルコンテンツをもつ雑誌がたくさんあります。

雜誌コーナーのタイトルの札には、そうしたデジタルコンテンツへのQRコードを掲載しています。このとき、単に雑誌の販売情報のみを掲載しているサイト、商業広告色の強すぎるサイトは除外しました。

写真:雑誌の表紙がラックに並んだコーナー
さくとの雑誌コーナー

雑誌まわりのデジタル資源カード設置場所として、私たちが注目している場所がもうひとつあります。どこをどのように活用するか、今後のさくとにご期待ください。

佐川町立図書館さくとを訪れてみてください

さくとはオープン日以降、さまざまな世代の町民のみなさんで連日にぎわっているようです。2025年は1月4日(土)から開館します。ぜひ立ち寄って、心地よい図書館の実空間とデジタル資源の融合の実践を体験してみてください。

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