デジタル資源カードは誰でも自由に使えます
2024年12月2日(月)の夜、LRG第49号の発行記念連続企画の第2弾として「デジタル資源による図書館DX」Vol.2(河瀬裕子×福島幸宏)を開催しました。
イベントの中で、デジタル資源カードのデザインを誰でも自由に無料で使えるようにしていることが話題になりました。この記事ではその理由について、デザイナーの私の目線から記してみます。
デジタル資源カードとCCライセンス
デジタル資源カードは、現時点で3種類(A6, A5, しおり型)のデザインテンプレートを公開しています。これらのデジタル資源カードは、いずれも CC0 という考え方に基づき、誰でも自由に使えます。
色やサイズ、レイアウトを変えても良いですし、図書館に限らず、どこでも自由に使えます。新しいテンプレートを作って配布することも、商用利用することもできます。利用にあたっての許諾を得る必要も、クレジット表示も必要ありません(カードに別の素材を掲載する場合は、それぞれの利用規約を必ず確認してください)。
CC BY-SA から CC0 へ
デジタル資源カードをクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)に基づいて誰でも自由に使えるようにしようという方針は、初期段階からargの岡本さんと話していました。
当初は CCライセンスの「表示-継承(CC BY-SA)」にすることを検討していました。表示-継承とは、次のようなライセンスです。
つまり、デジタル資源カードを使うときはクレジットを表示し、改変する場合は同じCC BY-SAライセンスで公開しましょうという条件です。デジタル資源カードが広まるのと一緒に、デザインを提供した私の名前も広まると良いのでは、というありがたい提案でした。
しかし次のような理由から、岡本さん、河瀬さん、福島さんと相談してCC0で公開することにしました。
理由1:デジタル資源カードを見る利用者にとってクレジットは意識されなくても良い情報だから
デジタル資源カードは図書館の本棚に置いて、利用者がその場でスムーズにデジタル資源にアクセスできるよう掲載要素を厳選しています。デジタル資源の説明文を100字程度から2〜3行に減らしたことは、イベントの第1弾でも話題になりました。カードの限られた紙面の中で、コモンズ証を含めてクレジットを掲載すると、情報の優先度に対して視覚的な主張が強くなりすぎてしまいます。
デジタル資源カードを作る人はさておき、カードを見てデジタル資源にアクセスする利用者にとって、そのデザインの原作者は誰かという情報は意識されなくて良いと私は考えます。図書館の実空間でデジタル資源と利用者が出会うとき、それを媒介するカードのデザインはなるべく“透明”でありたいです。
理由2:カード自体のデザインには新規性・独自性はないから
イベントの第2弾で福島さんがまとめてくださったように、デジタル資源カードを用いた取り組みの画期的なところは次の2点です。
① 館内で一貫したフォーマットを用いてさまざまなデジタル資源を案内すること
② デジタル資源カードを関連する本棚の中に配置すること(利用者が情報を探す行動の中にデジタル資源との接点をつくること)
これらの広義のデザインに関しては、新しい可能性に満ちたやりがいのあるものだと感じています。
一方で、カード自体のデザインには大したことはしていません。印刷物にQRコードを掲載することは珍しくありませんし、グラフィック的に凝ったこともしていません。掲載項目と可変の要素、カードの目的と設置場所といった前提条件が共有されていれば、おそらく多くのデザイナーが同じようなフォーマットを作るのではないでしょうか。カード1枚1枚でクレジットを主張するほどでもないかな…というのが私の感覚です。
理由3:デジタル資源カードが自由な発想で発展してほしいから
これが最も大きな理由です。LRG49号にも書いたとおり、デジタル資源カードを使った取り組みは始まったばかりです。現時点で公開しているカードのデザインが決定版とも思っていません。現場での実践から、まだまだ改良できる余地があるでしょう。たくさんの場所で、いろんな方にこの試行錯誤に加わって欲しいと考えています。そのためには、道具であるテンプレートは利用条件を気にせず使えたほうが便利です。
デジタル資源カードのテンプレートは、改変しやすいようにプレーンな装飾にしています。たとえばテーマカラーを変えるだけでも、「その図書館らしさ」が生まれるでしょう。テンプレートは使われてなんぼです。ぜひ自由な発想で使い倒してください。
ここまで書いた理由はあくまで私個人の意見です。これからデジタル資源カードをデザインする人に同じ考えを強いるものではないことを強調しておきます。
応援してくださる方へ
とは言っても「無償であなた大丈夫なの?」「何か応援したい!」という心優しい方へ。ありがとうございます。こんなサポートの方法があります。
本を買って応援する
まずは「デジタル資源による図書館DX」を特集したライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第49号をお求めください。さらにデザインについて知りたくなった方は、ぜひ拙著『見えにくい、読みにくい「困った!」を解決するデザイン』を読んでみてください。色や文字、ことば、図解(レイアウト)、ウェブで情報を発信するときのポイントをユニバーサルデザインやアクセシビリティの観点からまとめた一冊です。デジタル資源カードはもちろん、図書館でのさまざまなデザインに役立つはずです。
自館での取り組みをシェアする
デジタル資源カードを作ったり、良い事例を見かけたりしたら、ぜひSNSなどで設置の様子をシェアしてもらえると嬉しいです! ハッシュタグ #デジタル資源カード をつけて、私たちをタグ付けしていただくのも歓迎です。みなさんのアイデアに触発されて、次のテンプレートが生まれるかもしれません。
個別にデザインや研修を依頼する
majima DESIGN では、印刷物やウェブのデザインのほか、ユニバーサルデザインやアクセシビリティの基礎研修も承っています。Code4Lib JAPANカンファレンス2024では、Canvaを使ってデジタル資源カードをつくるワークショップも行いました。
ご依頼は majima DESIGN のお問い合わせフォームから受け付けています。
今後のイベント予定
LRG第49号「デジタル資源による図書館DX」発行記念連続企画は引き続きイベントを予定しています。
第3弾は、2024年12月24日(火)語り手は福島幸宏さんと私と、シークレットゲスト…!? 12月20日(金)にオープンする佐川町立図書館さくとでのデジタル資源カード配架の実践を受けて語らいます。