【短編小説】明日
キミが許さなきゃ、誰がキミに笑いかけてくれるんだ。
キミが歩を進めなきゃ、誰がキミの足を動かすんだ。
キミが決めなきゃ、誰がキミの未来を決めるんだ。
いい加減気付けよ。
肯定しろよ。
前を向けよ。
悲しみがキミを捕らえているんじゃない。
キミがあらぬ方向にもがいて、勝手に雁字搦めになっているんだ。
喪失は、鎖じゃない。
この先を生きていく為の道標だよ。
それが分からないキミじゃなかっただろう?
だから、笑ってくれ。前を向いてくれ。また一緒に、明日からの話をしよう。
……。
そうか。ここまで言っても分からないなら、もういいよ。
ボクも人間が出来ている訳じゃないんでね。態度を変えてくれないのなら、ここには二度とこないよ。
ただ、一つだけ。
あの時キミだけでも生き残ってくれて、ボクは心の底から救われたんだ。
もしキミがみんなと一緒に逝ってしまっていたら、塞ぎ込んで自棄になっていたのはボクの方だった。
だから…。
生きていてくれて、ありがとう。
えっ?
今、なんて…。
…そっか。
そっかぁ…っ。
べ…別に泣いてなんていないよ。
差し入れ、ここに置いておくね。少しずつでもいいから、今日こそはちゃんと食べてよ。
うん…また明日。
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