【短編小説】エゴ
嗚呼、あったかいなぁ。
知ってる?人間の流す涙って、血液とほとんど同じ成分なんだって。
だから今、ボクもキミも同じようなものを体から垂れ流しているってことだよね。
本当にあったかい。
キミがボクの元へきてくれた時は、夢かと思った。ようやく分かってくれたんだって、喜びすら覚えたんだよ?
なのにさぁ...。
ふふふ、あったかいね。
ねぇ、いつからこうなったのだろうね。一体ボクは、どこで選択を間違っちゃったのかな?
はぁ...とてもあったかい。
何を問い掛けても、もうキミは応えてくれないんだろうね。さっきからうつ伏せのまま動かないキミから流れるあったかい血は、止まってくれないし。
警察の警告さえ振り切ってボクに会いにきたキミを見た時、やっと分かったんだ。
キミもきっと、苦しかったんだよね?
だってボクを支配している時だけ、キミはボクに笑顔を向けてくれたもん。優しくしてくれたもん。
それ以外はいつも不機嫌で、ボクが嘔吐するまでお腹を蹴ったり、服で隠れるところにだけ煙草に灯った火を押しつけたりしていたもんね?
そんな日々を過ごしていたから、幾ら周りから止められていようが、ボクに会おうとしていたんだよね?
自分の欲の為に。
そう。ボクの為にキミが動いたことなんて、ここ最近一度だってなかった。
キミが自分の欲を優先して動いていたのなら、ボクもたまには、自分に正直に動いたっていいよね。
そうだろう?
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