【短編小説】雨
しとしと。
ザーザー。
ばしゃばしゃ。
降り方によって音も様々で、雨って面白いよね。
そんなことはない?
雨は憂鬱になるから嫌い?
そっか。
僕は雨の日も好きだよ。
晴れている日もいいけれど、ほら。
みんな傘さしているか濡れているかだから、どんな顔していたとしても気付かれないでしょう?
傘という障害物もあるから背後に立って驚かすことも出来るし、何を話しているかも悟られにくいし、何より…。
こんな風に何色の液体に塗れていたとしても、雨は全部流してくれる。
だから僕は、むしろ雨の日の方が好き。雨足が激しいに越したこともない。
傘を持っているお陰で存在感が普段からなくても、雨のせいに出来る。
話し掛けて無視されても、雨音が遮っていたからと言い訳が立つ。
殴られ蹴られどんなに血が着いても、雨が降りしきる外に飛び出せば関係ない。
まぁ…そうして飛び出して、結果的に今の僕があるのだけれどね。運転手が気付かなかったとはいえ、トラックに轢き逃げされるだなんて思わなかったよ。
雨が弱まってきたね、もう逝かなきゃ。
じゃあね。久し振りに人と話せて嬉しかったよ。
駄目だよ、待つことなんて出来ない。それにキミが僕のように何かされていても、僕は手を差し伸べられないし差し伸べることもしないよ。
キミの置かれている状況は、キミ自身が招いたことなのだから。あの時、僕を突き飛ばしたのは直前まで味方面していたキミでしょう?
今度こそお別れだ。先に待っているよ。
バイバイ。僕を虐げていた主犯さん。