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【短編小説】葛藤

やぁいらっしゃ…。
ああ、キミだったか。おかえり。

今回は随分と長いことかかったね。
で、どうだった?

そうか。相変わらず決定的な手がかりは掴めなかったか。

なに、キミがそこまで気落ちすることないさ。元々これは私の問題なのだから。それに…。

いいや、何でもない。
そろそろご飯にしようか。

今夜はキミの好物、野菜たっぷりの私お手製であるポトフだよ。たんとお食べ。
…美味いかい?そうか。


案外すぐ寝てしまったな。やはり連日私の大切なものを探し回って疲れていたか。
誰も探してくれ、だなんて頼んでいないのにねぇ…本当に困った子だ。

あの子には言いそびれたままだったが、私の、魔術師の大切なもの…使い魔の契約が途中で勝手に切れる条件は、二つに一つと決まっている。

主の命が、契約満了するより先に尽きた時だ。

今頃あの元使い魔がどこにいるのか、亡霊の身となった私には知る術もない。
私を慕ってくれていたあの子には、何故か霊魂の私が生前と同じ姿に見えているようだが…。

さて。
いつ、何と説明しようか。

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