【小説】復讐代行者 シロツメ【1】
ぼくは昔から、世の中のシステムいくつかに疑問を抱いてきた。
子供は元気に遊ばなければ駄目。
男子たるもの心身共に強靭でなければ駄目。
女子なんだから家事育児に備えなければ駄目。
大人になったんだし結婚して子孫を残さなければ駄目。
何故子供は元気だと決めつけるのだろう。
何故男子はしなやかに淑やかに生きてはいけないのだろう。
何故女子は家庭に入ると決まっているのだろう。
何故大人は結婚という契約を結ばねばならないのだろう。
何故、何故、何故、何故。
現代こそその空気は変わりつつあるけれど、それでもやはりそんな思想が未だ根強く残っているのも事実で。先入観というやつだろうか。とにかく人間は決めつけに固執する生き物なのかもしれない。
そのまだ固定されていない不安定な土台の上で個性だ自主性だと上っ面で喚いている人もいるのだから、そんな人が増えてはもう救いようがないだろう。
まぁぼくもぼくで声を大にして自分の主張を通せないのだから、同類だと指摘されても何も言えないのだけれどね。
ここからは自分の話になるけれど、ぼくは周りから『まーくん』と呼ばれている。周り、というのは現実世界でのことではない。ネットのSNSの中での話だ。
冒頭に知ったような口を叩いてはいたが、実はまだ17歳の未成年だったりする。学校には行っておらず、かと言ってアルバイトもしていない。完全な引きこもりのニート、いわゆるヒキニートというやつだ。
そんなヒキニートのぼくだけど、唯一現実社会と繋がりを保っていることがある。
愛用のノートパソコン、通称ノートンくん(これはぼくが勝手に呼んでいるだけで機種名でもなんでもない)がメールが届いたことを報せてくれた。ノートンくんのトラックパッドの上で指を滑らせてメールの文面を確認する。そこにはたった一言だけ。
『ピースフル』
送信元のアドレスにざっと目を通してから特別に作っておいたフォルダにメールを移した。
それから特定の掲示板へアクセスして、新規書き込みと書き込んだ人のハンドルネームを一瞥して端末からあるグループにメッセージを残す。
『依頼がきたよ』
ぼくは昔から、世の中のシステムいくつかに疑問を抱いてきた。
その中でも特に疑問なのが、法に則ったルールだった。
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