イカれてる映画『108』

授業に行き始めればめんどくさい思考をやめられるかと思っていたが、ダメみたいだ。結局面白い、引き込まれる映像を見て、考えることから逃げて時間を潰している。『滅相もない』『RoOT』『永野と見る怖いコント』面白い映像のおかげで夜を乗りこなせている。でも本当に乗りこなせているのだろうか、ただ夜をこなしているだけじゃないか。

『大脱出2』が配信されると聞いて、DMMTVに登録した。『大脱出』は中毒になるくらいの面白さだったので楽しみに配信日4/24を待っていた。しかし、配信されるのは4/24の23時からで、4/23から4/24の夜にかけてみるものがなくなってしまった。そんなこんなで探していると、松尾スズキの『108』があった。松尾スズキ監督脚本主演のR-18映画。主題歌は星野源『夜のボート』だ。見るっきゃない。

さすがにR-18映画だ。頭がおかしい。こんだけ人の裸を見ることもないだろう。でも面白い。松尾スズキかっこいい!と思っている人間だからだろうか、バカだなあと思いながら、そのバカは人間全員が持っているバカであり、人生のバカさと悲哀を感じる。映画サイトのレビューは低かった。そりゃR-18映画なんだから低いだろう。レビュー高いR -18映画の方が怖いだろう。松尾スズキがやっぱりイカれた人間だと確認し、松尾スズキがかっこいいことを確認するための映画だ。こんなイカれた映画があってもいいじゃないか。

今の社会には受け入れられない映画だ。僕が実社会でこの映画を大人計画を知らない人にお勧めしたら相当ヤバい奴になってしまうだろう。10年前は星野源が変態という言葉を良い意味で使えるように社会を動かしていた。タモリから続く『変態』という褒め言葉は星野源が受けつぎ、一部の人たちの間で使われていたが、いよいよ昨今の社会情勢のせいで絶滅した。気持ちが悪い。変態を嫌う社会が。変態というのは天才とイコールである。天才であるにはイカれてて狂ってなきゃならない。もちろん悪い変態が人様に嫌な思いをさせてきたせいで、今の世の中になっているわけで、その行為は許されない。しかし、星野源やタモリ、ハライチ澤部とかの変態性を気持ちが悪いものとして受け入れようとしない世の中は許せない。そんな現代で松尾スズキがこの映画を公開し、一個の文化を続かせようとしている。大義だ。

『地獄でなぜ悪い』もそんな感じだった。イカれた映画。でも結局監督が悪いことをしていたことが発覚したのがひどく残念だ。イカれてることを考えながらも普通に生きている。この二面性がかっこいいのに。イカれてることを考えている奴が本当にいかれたことをしていてはダメなのだ。いかれたことを考える奴はいかれてるなりに社会を渡り歩き、その歩きづらさと思考の孤独さに苦悩してないとならないのだ。それこそ天才。金だけあっても幸福と満足をつかめない、そんなもどかしい姿が僕は大好きなのだ。星野源も松尾スズキもそんな点で共通している。

冒頭に挙げた4作の作品もどこかおかしい。しかし確かに面白い。なのにきっと見る人が見たら非難轟々なんだろう。ああもう嫌だこんな社会。イカれてるという褒め言葉を使って褒めてくれよ。俺は『バカだ』『イカれてる』『変態』を褒め言葉として使いたいんだ。この三つの言葉は俺にとって、世間一般で言う『天才』と言う意味なんだから。

主題歌『夜のボート』は星野源が売れる前に大人計画の舞台のために作られた曲だ。作詞が松尾スズキで、作曲は星野源。この曲の内容は昔と今の星野源のスタンスに共通している。そして就活が待ち受けている僕の気持ちにも通じる。一回の人生なんだから狂った思いを作品にして放出したい。そんな思いを抱えて眠る。

今日もただただ夜のボートに乗って夜をこなしていた。
このままどこの港に着くんだろうか。

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