君の言う 10年先の 日曜日 そのリビングに 我はいるのか
君の言う 10年先の 日曜日 そのリビングに 我はいるのか
「将来は実家の近くに帰ってゆっくりしたいなー。1人で小さいネコ飼って一緒に映画見たいなー。」
人生できっと9人目のパートナーだった人の、夜中3時、寝る前に産み落とされた呟き。
誰に聞かせるでも無く、過去に見たドラマのワンフレーズでも無く。心の声っていうのはクッキーの食べかすの様に空気に逆らわずホロっと、ポロっと、床までこぼれ落ちるものなんだと知った。
そんな食べかすの様な言葉でも、彼と5㎝の距離で並んで寝てるのに聞こえない程ボクは鈍感ではない。むしろ彼の言葉は何一つ聴き逃したくなかったし、愛の囁きなんかその時の温度、照明の具合まで記憶しているのだ。それ位、好きという気持ちは脳みそを活性化させてくれていたという麗しきコイゴコロ。
そんなポテンシャルの高いコイゴコロは「大好きな彼氏の将来設計。」を一言一句聞きこぼす事なく掻き集める事が出来る優れもの。掻き集めた言葉の中にボクの名前は。。。必死になって身体中の細胞が探しまくったが、ボクという存在はネコにも映画にも勝てなかったらしい。
ネコは買ったら高いし、映画もDVD新品購入だと安くは無いよね。。。なんとか納得出来る材料を掻き集めてみたが、祈るのはネコが貰いネコで無い事と、DVDはレンタルではなく販売品である事を祈るばかり。
せめてそこには勝ちたいじゃんね。
天井を見上げたまま目は冴え渡る。今晩だけはなんとなーく擦り寄ってくっつく気持ちは起きない。袋に入った割り箸くらいピシッとしてたが本当はすでに半分に割れてたんだろう。ささくれもできちゃって、「あーあ。」って感じが止まらない。
あと4時間後には起きて支度して、快速電車に乗って日常が始まる。「あーあ。」
無音の夜の中に聞こえるのは冷蔵庫の音と、がっかりするボクの「あーあ。」って言う耳鳴り。
明日の朝、この呟きの真意を聞くか、知らないふりか、そもそも彼は覚えているのか。
世界中でボクしか知らない彼の将来設計。そこにはボクはいるのか?いるはずもなく、1年後は彼とも想像上のネコとも映画ともサヨナラして他の男の呟きを聞く様になりました。
今頃、他の誰かが同じ呟きを聞いて眠れなくなって、「あーあ。」って言ってる事を少しだけ祈ってる。