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ヴィレヴァンでジュークボックスを見て切なくなった話

今年3月、東京はお台場にある大型ショッピングモール「ヴィーナスフォート」が22年というその長い歴史に幕を閉じた。
ここ最近はお台場もすっかりオワコン扱いされてしまい、ヴィーナスフォートはそれを象徴するような施設になっていたように思う。私はお台場周辺のカラッとした人工的な賑やかさが好きで、特に予定のない休日はゆりかもめで何をするでもなくお台場に行っていた。なので、ここ数年のヴィーナスフォートの閑散とした雰囲気も知っている。
それゆえに、異国の地でのんびり散歩しているようなあの静かなメインストリートが、閉館間近ラッシュの人でごった返している様子をニュースで見た時に、そのギャップの大きさにとても驚いた。

数々のメディアで取り上げられる少し前に、またフラッとヴィーナスフォートに足を運んだ時のこと。施設内にあるヴィレッジヴァンガード、通称ヴィレヴァンの横を通った際に閉店セールが実施されていることを知り、思わず入店した。
店内を見渡せば半額は当たり前、最大80%オフにも至る(本当に閉館直前には90%オフもあったらしい)破格のセール。他の店舗も同様に閉店セールを行なっていたが、ヴィレヴァンほど気合いの入ったセールはなく、実際店内は多くのお客さんで賑わっていた。セールは閉店の1ヶ月以上前から実施されていたようで、私が行った時はもうかなりの商品がさばかれていた。なので、おびただしい数の商品数で圧倒されるような一般的なヴィレヴァンのイメージとは異なり、何も置いていない商品棚もところどころにあった。
だからと言って店内に悲壮感めいたものはなく、残された商品群の中からお宝を見つけようとするお客さんたちの熱気が溢れており、ちょっとしたお祭りのような雰囲気である。

私もこんな機会は滅多にないと思い、アンテナを目一杯はりながら店内を歩いていたところ、まさにアメリカンな年代もののジュークボックスが目についた。

ジュースボックスのイメージ(Wikipediaより引用)

「うわ〜、これぞヴィレヴァンって感じでテンション上がるな!しかしセールとは言え高い…!」なんて思っていると、ふいに忘れていた記憶が蘇ってきた。

・・・

それはおそらく2000年か2001年の頃、当時中学生だったときの記憶である。日曜日の朝、まだ日が出る前に、私はそこそこの軽装でママチャリに乗って、友達の家に向かった。友達と合流した後、向かったのは東京方面である。
具体的な目的地はない。ただとりあえず、当時住んでいた千葉から西へと行ってみよう。それが友達と決めた計画だった。なんて無計画であり、なんてエモーショナルなのだろうと今になっては思うが、当時はそれでも一生懸命プランを立てたつもりだった。

千葉の中でも比較的東京に近いところに住んでいたので、自転車を走らせて1時間かからないくらいで23区内に入った。舞浜や幕張に行く際によく使われる湾岸道路沿いをひたすら走っていたため、ディズニーランドを視界の左側に捉えたのちにすぐ夢の島、新木場を通過していく。そうしてたどり着いたのがお台場だった。

もう日はのぼっていたが、それでもまだ朝は早く、マクドナルドで束の間の休憩。友達同士でお台場にくるのは初めてだったし、朝方のマックも未体験だったため、とにかくテンションが上がった記憶がある。

まだまだ西に行ってみたいが、せっかくだしお台場のいろんなお店を見たいとなり、あてもなくお台場周辺を歩き回ったのち、オープンと共にヴィーナスフォートに入店した。
この思い出は2000年か2001年のことなので、ヴィーナスフォートもまだ誕生してから2〜3年目と歴史が浅く、かなり賑わっていた気がする。この記憶にあるヴィーナスフォートはとにかく広く、さんざん歩いた先で見つけたのが、ヴィレッジヴァンガード ヴィーナスフォートお台場店である。

当時は今よりもアメリカっぽい雑貨が多くて、店内は広く、暗く、深かった。何色とも言い表せない不思議なネオンサインが店内の至るところにあり、その雰囲気に中学生の私は完全に飲み込まれた。その中でも特に印象深かったのが、ギラギラと輝くジュークボックス。もちろんどのような用途のものなのかわからなかった当時の私に、その謎のアイテムは強烈な印象を残したのだった。

・・・


閉店セールでおよそ半額になっている余りもののジュースボックスを見て蘇ったのは、この記憶である。同時に、中学生時代のこのヴィーナスフォートお台場店に体験が、私にとっての初ヴィレヴァンだったことも思い出した。

そして、そのヴィレヴァンがもう間も無くなくなり、その最後のセールで自分を含めた多くのお客がお祭り気分になっている。

この一連の流れを改めて認識した時に感じた思いを、未だにうまく言語化できないでいる。思い出すまでは完全に他人事で、良いものを安く買えるならラッキーくらいにしか思っていなかったにもかかわらず、ジュースボックスを見てからは諸行無常のはかなさや、中学時代の貴重な体験を忘れていた情けなさなどが次々と込み上げてきた。

人生初のヴィレヴァン体験はずっと忘れていたけれど、年代物のコカコーラグッズやディズニーグッズ、日本にはない企業の昔のノベルティなど、アメリカ雑貨が大好物なのは、あの時に見たジュークボックスからきているのかもしれない。
そう思うと、私はヴィレッジヴァンガード ヴィーナスフォートお台場店には多大なる影響を受けているのだと実感し、貴重な体験をさせてくれてとてもありがたい気持ちになった。

お宝商品を発掘したいというミーハー心に、中学時代は何も買えなかったからこそ、遅くなったけれども何か貢献したいという思いが加わり、あまり他では見ないようなコカコーラグッズなどをたくさん購入し、パンパンになったレジ袋を持ちながら店を後にした。

改めて、長い間おつかれさまでした。また会う日まで。

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