べん毛④ アーキアのべん毛
アーキアも細菌と同じように,細胞から伸びたべん毛繊維(archaella)をくるくると回転させて水中を泳ぎます.
アーキアべん毛は,細菌べん毛と遺伝的相同性はない一方,細菌のIV型線毛と類似性がある ことが知られています.
そのためアーキアべん毛は,細菌べん毛の30種類より少ない 約7種類 のタンパク質で構成されています.
また,アーキアべん毛の直径は10 nm以下であり,細菌べん毛(25 nm以下)よりも細菌線毛(6 nm以下)に近いことが分かります.
アーキアべん毛の運動研究は高度好塩菌の一種 Halobacterium salinarum において,よく研究されています.名前にbacteriumという単語が含まれていますが,細菌ではなくアーキアです.
H. salinarum の遊泳速度は約3 μm/sで,べん毛の回転速度は最大30 Hz(ヘルツ:1秒間の回転数)であり,どちらも大腸菌のおよそ10分の1程度です.
べん毛の回転運動を駆動するモーターは6分子のFlaI(フラアイ)タンパク質から構成され,ATPを加水分解することで回転力を生み出します.そのため,一回転するために6分子のATPを消費するモデルが提案されています.(https://doi.org/10.1038/s42003-019-0422-6)
FlaIはユーリアーキオータ門に属するアーキアにおいては,FlaC,FlaD/E,FlaHタンパク質と結合してCytosolic ringを構成し,さらに膜タンパク質FlaJと結合して,繊維の形成にも関わります.
(べん毛⑤に続く)