珠数つなぎから「大麻合法化」議論の見方が変わった。
もう何年も前に、ある芸能人が「大麻合法化」を訴えているのをネットニュースの見出しか何かで見て、ちゃんと内容も見ずに、別に無くても困らないものを、わざわざ合法化しなくても…と思っていた。
その後、はじめて「医療用大麻」という言葉を耳にした時、あぁそうか、必要としている人がいるのか…だったら制限すべきところは制限し、必要な人たちには届くようにしてあげればいいのに…ぐらいに思っていた。
その程度の認識だった。
春頃に懇意にしているお寺のご住職から
「境内の木を剪定したから、その枝木をつかって良いよ」と言ってもらえた。その木は、前から作りたいなぁ~と思っていた材だったので、喜んで珠数をつくることに。
「せっかくだから、ちょっと違う作りにしたいよね」
「御幣(ごへい)みたいな房つくれないかな」
ふわっとした会話から、
しめ縄について調べ始める。
↓
麻について調べ始める。
↓
はじめて「精麻(大麻)」という言葉を知る。
「精麻:水でも塩でも祓えない穢れを祓う」ことができる神聖な植物だとか…強っ⁉
言われて調べてみれば、しめ縄とか神様事でよく見かけている…見かけていただけ。見えていなかった。
穢れを祓うことと関係があるかどうかは分からないけれど、浄土真宗の得度用として使われる珠数に、麻房の珠数があるのは知っていた。
ただ、会社員時代にも独立してからも私は作ったことがなかったので、扱い方も分からない。けれど、調べれば調べるほど「麻房、イイね」となった。
ところで麻って、どこで手に入るの?
そこから更に調べると、
日本における大麻文化の奥深さ、
日本の大麻農家さんの現状、
自分が麻を全く分かっていなかったことに驚きっぱなしだった。
日本の大麻文化
珠数職人という仕事柄で言うと、最も身近な麻文化が先述の珠数房。
そして、お盆の迎え火・送り火に使うオガラ。
あと、ナスとキュウリで作る馬と牛の脚(割り箸だと思っていたらオガラで作るらしい…知らなかった)。
他にも、結納品の一つで「友白髪・共白髪(トモシラガ)」は、白髪に見立てた麻糸を束ねた縁起物で、白髪になるまで末永く幸せに、麻のように強い絆で結ばれるようにという願いが込められている。
縄文土器の模様にはじまり、現在では身近とは言えないかもしれないが、弥生時代から木綿が普及するようになった奈良・鎌倉時代頃までの布製品は殆どが麻製品だったとか。
現代でも神社のしめ縄や横綱土俵入りのまわし、七味唐辛子、油、花火の材料、建材、神事や伝統行事などなど…言われてみると、あぁ~結構、身近にあるある。
日本人にとって古来よりかかわりの深い大麻。
せっかくなら国産を使いたいと思い探してみると、
圧倒的に多い海外産。
日本の大麻農家さんの現状
古来より大麻は神事だけではなく農作物として衣食住に用いられてきたが、
戦後のGHQ占領下で、目的如何に関わらず、麻薬含有の多少を問わず、その栽培を禁止されたことにより大麻生産は激減。
現在、国産精麻の大半が栃木県で生産。
高齢化と後継者不足で、いつまで続けられるか分からないという農家さんが多い模様。大麻は成長が早く、栽培自体は難しくないようだが、その後の収穫~精麻づくりが手作業。
簡単に書くと、
刈り取り→余分な葉を落とす→煮沸→発酵→皮を剥ぐ→剥いだ皮を磨く→乾燥
これは手間がかかる。
他県でも生産はしているものの、厳しい規制下での栽培を余儀なくされているらしい。安易な興味が薬物への入口になり兼ねないから規制せざるをえないのだろうけれど、それって農作物としての正しい知識があれば不要な規制のはず…なんだかなぁと思ってしまう。
ちなみに、現在は麻薬成分の殆どない品種に改良・品質維持されているのだそうだ。
最初は、麻と聞いて思い浮かぶのは 「リネン」くらいだった。
仕事柄、オガラは知っていたけれど、それが大麻の茎だって知らなかった。
そもそも、「麻=大麻」という認識がなかった。
戦前の日本では、大麻が身近な存在だったということも全く知らなかった。
麻がこんなに手間のかかるものだと知らなかった。
上質な麻が、こんなに美しいものだとは知らなかった。
自分の関わる範囲のことでさえ、まだまだ知らないことばかりだと気づかされる。
医療用大麻の合法化も必要だと思うけれど、日本の文化としても無くならないでほしい。2023年の大麻取締法等の改正が、国内の大麻農家さんにどう影響していくかは、今後の日本社会における理解度によるところだと思うけれど、どうか大麻農家さんが、もう少し増えるよう、働きやすくなるようになってほしい。
亜麻(あま):リネン → 生成り(亜麻色)・白。柔らかくサラッとしている。繊維が細く短いため毛羽立ちが少ない。
苧麻(ちょま):ラミー → 白、絹のような光沢があり、発色が良い。ハリ・コシがある。繊維が太く長いため、リネンに比べると毛羽立ちやすい。
黄麻(こうま):ジュート → 耐久性に優れている。麻袋や漁網など。
洋麻(ようま):ケナフ → ジュートの代用として麻袋に使われる。
大麻(おおあさ・たいま):ヘンプ → しなやかなハリ。繊維はラミーと同じく太いがラミーより短い。リネンやラミーよりシャリ感がある。自然な光沢。化学肥料や農薬を必要としないため環境に優しい。日本文化の視点から見ても精神性の高い素材。
見出し画像は残念ながら海外産。
現在、国産を手配中。
お話を聴かせてくれたのは問屋さんだけれど、麻の事を色々教えてくれて、麻文化を守っていきたいと、とても熱量のある方だった。
こういう方と一緒にお仕事ができるのは嬉しい。
国産精麻が届くのが楽しみ。