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ちっとも映画に詳しくないけど話したいのさ『前田建設ファンタジー営業部』
ちっとも映画に詳しくない上、子どもの頃から「感想文」というものが苦手なカエルが、話す友達も居ないので書かせて頂く、ちっとも映画レビュー。
『前田建設ファンタジー営業部』
とても面白かった。ほんのすこーしネタバレがあるかも。
写真は浮かれて買ったパンフレットです。
この映画の特に良かったところは、四つある。
テンポの良さ、作品への入り込みやすさ、ハジケ具合、スタッフロールだ。
まずは一つ目のテンポの良さについて。
私は、ごく個人的に実写映画に偏見があって、とりあえず邦画実写は事故と思っている節がある。
具体的には、テンポが悪く、冗長で訳の分からない間とBGM。
登場人物たちのどうでもいいすれ違いや、「はい、ここで感動してね! どうぞ~!!」感の押し売り。
滑り倒す寒いギャグがてんこ盛りだと決めつけているのだ。
全てがそうじゃないというのはわかっていても、一度こびりついた偏見を払拭するのは容易いことでは無い。
だから、「今回もどうせそうなんでしょ? はいはい」といった具合の、偏見丸出し野郎になって、映画館に行ったのである。
でもそれは杞憂に終わった。
テンポの良さはシン・ゴジラ級をマークし、どうでもいいすれ違いや、いさかいもなく、トントコ話が進んでくれた。
そして、話が詰まりそうになったら、すぐに発破してくれる。
いやー、スッキリするね。ダムの放水みたいだね。
私はイラッとしなくていい映画がとても好きだ。だって、虚構にまでイラッとしたくないからね。
短気、せっかち、待てない、というトリプルスタンダード野郎なので、ちょっとでも「ん?」と思うと嫌になってしまうが、この映画はそんなことがなかった。それだけでずいぶん気に入った。
二つ目は作品への入り込みやすさ。
事前情報全くなしで見にいった私は、「ファンタジー営業部? ナニソレ」状態だった。
だから、映画の世界観についていけるのか心配で仕方が無かった。だって、ついて行けなかったら、もうただただ苦行だから……。
でも、その心配を払拭するかのように、映画冒頭は始まる。
開始数分で、主人公を含めたメイン登場人物数人が、上司の思いつきトップダウンの“ファンタジー営業部”に“巻き込まれる”のだ。
この展開方法のおかげで、主人公たちの「はい?(何言ってんだコイツ)」と、観客である私の「はい?(何言ってんだコイツ)」が一致する!
これはストレスフリー!
そのあと、少しの間、主人公たちはやる気ゼロのダルダルスタイルのままだが、ひとり、またひとりと、堕ちていく。
そう、最初はイヤイヤながらも、プロジェクトに主体的に関わることで、だんだんやる気になってくるのだ!
仕事も、勉強も、ゲームも、習い事も、何事も分かってきたときが面白いってやつだよね。
この時、観客はもちろん何もしてないんだけれど、主人公たちが一生懸命取り組んでいる所を見ると、自分自身が頭良い感じに頑張っているな! と錯覚できて気持ちが良くなる。
そして、主人公たちと一緒に、物語へとのめり込んでいくのだ。
この構造がとても楽しい。そして、そこに至るまでの時間も短くてとても良い。
この感じは、シン・ゴジラの官僚たちが頭良く喋っているのを聞いて、あたかも分かったフリをするのによく似ている。
私は、何もわかってないのに、ドヤ顔で官僚たちの話聞くのが得意。
あの感じが好きな人は、この映画が向いているかもしれない。
そして、三つ目はハジケ具合。
これは実際に見て貰わないと説明しづらいのだけれど、役者さんがバシッとキメる時の演技が少し過剰なのだ。
1個挙げるとすれば、登場人物にカメラがぐぐっと寄って、ハッキリとしたウインクに、キラ☆リーンというSEをつけてるところ。
映画的というよりは、少しアニメ的かな? とも思う。
実写映画でやると、すべった時にはブリザードが吹き荒れ、地獄の業火で大やけどをする、諸刃の剣の演技だよね。
その、過剰だけどちょうどいいあんばいの演技が、所々に散りばめられていて、観客を飽きさせない。
あの演技は、多すぎてもダメだし、少なすぎてもダメだと思う。
自滅しちゃわないギリギリのところで使いこなし、作品の雰囲気を構築していく。とても上手いのだ。
この過剰演技は、物語展開がグダりそうなときに発破する役割も担っていて、前述の作品のテンポの良さをガッシリ支えている。
イエイ! 強靱!
だから、ダレずに面白く見ることが出来た。
最後にスタッフロールについて。
映画を見るとき、私は、いつもスタッフロールがちゃんと終わって、劇場が明るくなってから帰る。
なんか、スタッフロールの途中で帰るのは、初見のラーメンに、初っ端から胡椒をぶっ掛けまくって食べるような失礼感があってね。
あとは単純に、暗い中動くと、鈍臭さレベル100の私は、他の人に迷惑かけちゃうから控えてるのだ。
とはいえ、スタッフロールってさ、とても失礼だけど楽しくない。延々名前がロールするだけのモノが多いからだ。
ぼーっと文字列を眺めながら、実のところ「あ~、早く終わんねーかなー」と思っている。私はせっかち野郎だからね。
でも、この作品のスタッフロールは楽しい。
アニメのオープニングみたいに作られていて、アニメーション仕立てになっている。
最近の映画はこういう凝ったスタッフロールのものもあるらしいけれども、あんまり見たことが無かった。
だから強く印象に残って、「ああ~、これはいい」と思ったのだ。最後まで、楽しい!
だからか、スタッフロール中に帰っている人が居なかった。
ただの偶然かも知れないけれど、もしかしたら、“見ていられる”スタッフロールだったから、なのかもしれない。
余談であるが、この映画、タイトルの雰囲気から、漫画や小説の実写だと思っていたけれど、どうやら原作は実在する企業のホームページらしい。
そのページは以前から有名だったらしいけれど、残念ながら私は不勉強なので知らなかった。
だから私は、この映画のどこからどこまでが“ファンタジー”なのか、スタッフロールに「前田建設工業」と出てくれるまで、サッパリ気付かなかった。
2003年という謎の具体的時代背景に違和感を覚えつつも、全部まるっと虚構だと思っていたせいで、
「いや~、面白い話を考える人がいたもんだなあ~! すげ~! でも、これ、一人で書く(描く)のに死ぬほど勉強して資料集めないとじゃん……」
と居もしない作者に感心していたのだった。
結局どこまでが“ファンタジー”なのかというと、前田建設工業は現実世界に実存する企業で、ファンタジー営業部もあるから、このお話の骨格はノンフィクション。
ただ、骨格はノンフィクションだけれど、細かい登場人物や会話などの肉付け部分はフィクションもあるのかな? といった感じだ。小説で肉付けしてそうだね。
まだ、小説は読んでないから推測だけれどね。
まあ、でも、別にこの話がフィクションなのか、ノンフィクションなのかは、映画の面白さには関係無かった。
円盤が出たら、買いたいと思う。