社内の英語公用語化について
もっとも、日本国内でも新しく立ち上がるマーケットや今後も伸びると想定される需要やニッチ市場もあるので、海外に出なくても成長自体は可能なのでしょうが、自社が得意とする分野で大きく伸びる市場があるのにも関わらず、経済成長の果実を取りに行かないというのは、何とも勿体無い話ではあります。
本稿では、世界の市場規模が引き続き大きくなる一方で、人口減少等による日本経済の地盤沈下や規模縮小、更なる相対的な地位低下が避けられない状況下、曲がりなりにも国際的な経済活動をしている日本の総合商社の内部において、どのような英語社内公用語化の議論がなされているのか、その一端をご紹介したいと思います。
英語化は「手段」であって「目的」ではない。
2.論点
①組織目標や方針の周知と浸透
②ビジネス情報の共有
③その他社内業務連絡の効率化
①組織目標・方針・成果に関する資料
(対応状況)
・社内規則等は全て英語化済み
・決裁書類(稟議書)も英語化済み
・業務の月次報告は全て英語化済み
・地域本部内での業務連絡も英語化済み
ケース1:日本人のみ参加する会議であっても、会議も資料も敢えて英語で行う。この場合、議事録は自然と英語となる。
ケース3:日本人のみ参加する会議の場合、従来通り全て日本語とする。議事録は自然と日本語となる。
→ 結論的には、必ずしも英語が日本語同等に、議論を深める為の言語として使える人ばかりではないため、予め原稿を用意した薄っぺらい会議に終始してしまう印象あり。英語能力が仕事の能力そのものとして評価されるのはあまり良い傾向とは言えないが、日本語であっても声が大きい者が評価されやすいのも事実であり、自らの考え、主張を論理的に展開して、相手を説得する能力の一部として捉えるべきだろう。
③業務連絡
既に英語で行っている(日本人のみの場合は日本語のケースもあり)。
→ 業務連絡については、相手が日本語を解さない以上、英語か現地語でのコミュニケーションが必須となり、従来通りである。
3.現状評価と今後の展望
意思決定機関での英語化は、経営幹部層を日本語人材からのみ募るのか、その制約から解き放つのかと言うと言うことと同義である。もっと言えば、日本法人の機能を、日本にある本社のままとするか、グローバル企業の日本支社とするかの概念のせめぎ合いでもある。
また、各現場では「日本語も」出来る人材が優秀な人材として処遇されている一方で、「日本語しか」出来ない人材は、処遇出来ずに困っている。
ビジネスは、英語だけではどうにもならないが、英語がなくてもどうにもならないのが実情であり、現場事情を鑑みながら、最適解を模索し続けるしかない。
4.他社事例(ご参考)
会議体も全社を対象とした月例会議とするのではなく、事業特性(一般コンシューマー向け、法人向け)ごとに分け、結果として、より顧客に近い視点での深い議論が展開されるようになった。