独断 2021年12月

 金木犀きんもくせい の芳る季節になった。金木犀には少しばかりの思い入れがあるので、毎年少しばかり心を揺さぶられる。今年の初めての香りは所用で遠く出かけた先であったので、京都より数日早く聞くことができた。

 香りを愛でるのに、マスクは不要である。邪魔であり無粋である。香りそのものも妨げるし、感じる心も妨げる。

 私はラジカルアンチではないので、嫌がられてまでお店の中でマスクを外そうとは思わない。それでも屋外でマスクをするのは非科学的で馬鹿げているし、こういう季節を感じるという素敵な経験をも妨げることになるので、やめた方が良いと思う。

 甲子きのえね から始まって癸亥 みずのといまで六十の暦が一周することを「還暦」という。世の中の動きは六十年周期で変化するとした中国の思想から来たもので、おそらく、人間の一生がおよそ六十年であるから、世の中もそのように動くのだろう。

 だから人間が一生の間に経験できる季節の変化は、せいぜい六十回なのだ。金木犀も六十回、桜も梅も六十回。夏の暑さも冬の寒さも六十回で終わり。

 せいぜい六十回しか経験しないのに、「今年の夏は暑いなあ。温暖化だからなあ」なんて言うのは恥ずかしいことだ。人類の歴史はその五十倍も長く、地球の歴史は七千万倍も長い。

 去年より今年の方が暑く感じるのは、それは「地球温暖化」のせいではなく、歳をとって暑さがより身に沁むようになっただけのことです。よく感じてみてください。冬の寒さも厳しくなってきたでしょう。それはあなたの老化のせいです。呵々大笑。

 新年は壬寅 みずのえとら歳。壬寅は春の胎動を表し、変革を表す。さて如何 いかなる変革が生じるか。21.11.16

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