独断 2021年11月

 現実世界は戦争状態であるが、「受験戦争」という名はあれど、受験は戦争ではない。「そんな甘いことを…」という声が聞こえてきそうだが、受験は戦争ではありません!受験を戦争などと例える人は、本当の戦争を知らない人だ。本当の戦争は、自分の意思とは関係なく無理やり参加させられ、ついさっきまで隣で話していた人の腕がちぎれ、足が折れ、首が飛ぶ。明日は我が身。

 受験は戦争ではない。自分の意思で参加するものだし、どう失敗したって命までは取られない。受験はスポーツにも似ているが、スポーツでもない。受験は対戦相手がいないからだ。スポーツでも直接相手を負かす類のスポーツではなく、陸上など自分の記録が結果になるスポーツには似ているかも知れない。

 なぜこんなことを書くか。受験は戦争のように、「敵に勝つんだ」「負けたら酷い目にあうぞ」などと諭した方が、より真剣に、より発奮して勉強するのではないかと考える人が多い(だから受験戦争などという言葉がある)が、実際にはそういう「敵」を仮想したり「脅し」たりによって勉強させたり、また「ご褒美」で釣ったりした場合、その子が伸びないことがデータとして明らかになっているからだ。

 知ること、理解すること、覚えることの達成感、充実感、自分の進歩の体感こそが、勉強の本質である。そしてそこには「自らやること」と「真剣さ」が不可欠な要素である。

 私はいつも言う。「真剣に勉強しないなら、不合格になった方がよろしい」。これは「受験」などという一事象に矮小化されるものではなく、自分の「生き方」という人生最大事の裏返しだからです。

2021.10.12

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