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「あのコはだぁれ?」ジェットコースターに無理やり乗った怖さ

下記は上記音声配信を文字起こしして文章に書き直したものです

「感想」

フェスとは何か、それはただの音楽イベントではない。少なくとも、俺にとっては違う。太陽がジリジリと肌を焦がす中で、何時間も立ち尽くすその行為は、まるで四国のお遍路のようなものだ。いや、それよりは少しは楽かもしれない。だが、簡単な道のりではないことに変わりはない。特に今回、俺が挑もうとしているのはひたちなかで開催されるロッキンジャパンフェスだ。しかも二夜連続。これまでのフェスとは訳が違う。わざわざ遠出して、二日連続で自分を追い込むつもりだ。果たしてその先に何が待っているのかはわからない。だが、少なくとも精神が清められることを期待している。

正直なところ、来年はもうこんなことはしないだろう。フェスのマイブームも今年限りだと俺は思っている。だからこそ、今年はできるだけ詰め込んでおきたい。フェスという名のスピリチュアルな旅を、限界まで追求してみるつもりだ。音楽と苦行、その二つが混ざり合った先に、自分自身に何か新しい発見があるのかもしれない。あるいは、ただの疲労感と達成感だけが残るのかもしれない。どちらにせよ、試してみる価値はあるだろう。

そんなことを考えながら、俺は清水崇監督の映画『あのコはだぁれ?』を観に行った。映画館に足を運ぶと、夏休みの終わりを楽しむ大学生のカップルや友達同士がちらほらといて、映画が終わった後には「怖かったよね」と談笑する姿が目に入った。その光景を見て、かつての自分なら「ホラー映画なんてカップルで見に行く奴は呪ってやる」と思っただろう。だが、今の俺は違う。フェスを経験し、清められたのか、そんな若者たちを微笑ましく見守る自分がいるのに気づいた。

映画そのものについて言えば、まあまあの出来だった。『Chime』という映画を前回の配信で語ったが、それとは違った種類の恐怖が描かれていた。『Chime』では、リアルな日常の中に潜む恐怖がテーマだったが、『あのコはだぁれ?』はビジュアル的な怖さに重点を置いていた。まるでジェットコースターのように、一度乗り込んだら後戻りできない恐怖の旅が待っていた。そういった意味では、アトラクション的な楽しさもあった。ただし、その恐怖があまりに現実離れしているため、途中で眠気が襲ってきたのも事実だ。

『あのコはだぁれ?』では、登場人物たちが共有する恐怖が描かれていた。全員が同じ恐ろしい出来事を経験し、それによって次々と命を落としていく。幽霊やお化けが直接的に悪さをするという点では、典型的なホラー映画とも言えるだろう。しかし、その設定にはどこか無理があるようにも感じた。恐怖の演出があまりに過剰で、現実感が失われてしまっていたのだ。これが『Chime』との大きな違いだった。

それでも、映画館でホラー映画を観るという体験自体は悪くない。友達同士で映画を観て、怖かったシーンについて語り合うのは、映画の楽しさを倍増させる。それに、ホラー映画は一人で観るよりも、誰かと一緒に観る方が断然面白い。恐怖を共有することで、その体験がより深く心に刻まれるのだ。

そんな風に思いを巡らせながら、最後もオリジナル曲を用意した。歌詞は冒頭で流したものと同じだが、メロディーはパンクロック調だ。

フェス参りも映画鑑賞も、結局のところは自分との対話だ。何かを求めて足を運び、何かを感じ取る。そしてその感情や思考を他人と共有することで、新たな発見が生まれる。そんな循環の中で、俺は少しずつ変わっていくのかもしれない。あるいは、何も変わらず、ただ日常を生き続けるのかもしれない。それでも、こうして文章を綴ることで、自分の中の何かが整理されていくのを感じるのだ。次はどんな体験が待っているのか、楽しみだ。そして、その体験をどう表現するか、それもまた楽しみの一つだ。