情景の殺人者を読んで
シリーズ三作目で、今回も大変面白かったです。シリーズ化して大変にめでたいです。
あらすじは上記リンクからご確認ください。
ネタバレを含みますので本編を読んでからお読みください。
ジェンダーバイアスがテーマ?
作中、割と直接に「男女の区別なんてなくせばいいのに」という表現が出てきます。
「歌の終わりは海」について書いた以前の記事でジェンダーバイアスが偏ってなくてこの作品はオアシスだというようなことを書いたのですが、ジェンダーの問題はこのシリーズを貫く裏テーマみたいなものなのかなと思います。
女性だけの探偵事務所を営む小川さん。職業柄女性であることを武器にせざるを得ないがそのことに葛藤する純ちゃん。
そもそも冒頭のプロローグがミスリードでした。うっかり騙されました。それだけ自分の頭もまだまだ固いのだと思いました。
犯人について
物語の核心部分についてのネタバレを含みますので、気になる人は読まないでくださいね!
犯人が確定するまで、犯人は男だと思い込んでいました。栂原の息子が、母が殺された時の情景を繰り返し再現しているのだと思い込んでいたのです…。
上述した思い込み(情けないけど、プロローグの恐竜の絵を描いているとか、映像の勉強をしているといった情報)から男だと思い込んでいたのですね。
後でよく読んでみると、栂原の前妻が殺された事件と犯人の母が殺された事件は年代が違って別の事件なんですよね。頭の中がごちゃごちゃになっていました。
犯人のトラウマ
自分なりに、犯人が連続殺人を繰り返すことについて理解しようとしてみると、これはトラウマになった出来事を繰り返す再演反応だと思いました。
子どものプレイセラピーの勉強をしていたときに知ったのですが、つらい出来事に遭遇した子どもは、遊びの中でそのつらい出来事を何度も繰り返すことがあるといいます。
犯人の場合は事件の生々しい感情が切り離されて(解離して)、情景だけが残って、その情景を再現することに以上に執着するようになってしまった。
殺人事件に執着するというのは、過去作の萌絵や加部谷が危ない目にあいながらも殺人事件に関わろうとするいうことと結びつきます。
実は繰り返し出てきてたテーマだったんだと。
萌絵や加部谷は、危ない目にあいながらも、立ち直っていきますが(加部谷はまだその最中ですが)犯人はこれも以前の記事に書いたのと同じでセーフティネットがなかったために犯罪を繰り返すことになったのかと思いました。
そう考えると犯人の犯罪を犯す手を止めるのが純ちゃんだったっていうのも最高になんていうか、エモいとしか言いようがないです。
あと、鷹知! こんなに面白い人だったっけ?
彼が気になって過去作を読み返しまくっています。
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