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永遠のモノクローム
「なんばしよっとか。はよ帰るばい」
飛びこんできた博多ことばに、蓋が開く。
錆びた蝶番がきしむ。
初めてのひとり旅、目的地は博多色に染まるキミだった。
どんたく、もつ鍋、中州の屋台。
壁うすく、階段きしむボロアパート。
明けない夜をふたり泳いだ。
バスに揺られて昼寝して、目が覚めたら海ノ中道。
波かき分けて走る景色に、息をのむ。
デッキシューズ片手に波を蹴散らす私に、キミはカメラを向けた。
「なんばしよっとー? 可愛かねぇ」
モノクロームに切り取られたあの日の私が、そこにいる。
笑顔こぼれて。
「プロの写真家になりたいんだ」
生一本なキミは親とぶつかり、家を出た。
東京を目指すはずが、流れ流れて福岡へ。
写真を学びながら身につけた土地の言葉は、キミをこの街へさらった。
滑り込む新幹線、発車のベル。
指をほどくと、カメラを構えるキミが滲む。
最後だと知らずにいた。
そのときは、まだ。
青葉香る十九の季。
永遠のモノクローム。
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