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美 し い ナ イ フ

2度目のデヴィットホックニー展を鑑賞ののち、立ち寄ったナディフで石岡さんの初めて見る本があった。

フリーランスになって4年目になる。最近、自他共に「どうやったらこの世界を生き残れるんだろうか?」という話をする。
というか、私にはよくわからなくなっていた。自信をなくしていた。どんな力をつけていったらいいのか、なにかヒントはないかと探し回っていた。

その本をめくると、次から次へと言葉が目に飛び込んできて頭に強く響いた。石岡さんから放たれた鋭いナイフが、時代を優に飛び超えて何度も胸に突き刺さった。
サバイバルに特化した飾り気のない、砥石でも清らかな水でもなく、ある意味では最もハードな現実と孤独な思考の中で研がれてきた美しいナイフが。

心の中に起こってくるはっきりとしたひとつの噴流の行方を探る。外側からたぐりよせる様々な糸の中から、これはと思う一本を選び出す。その両者が激しく接近する風景を執拗な技術でつかみとる。

石岡瑛子Iデザイン

最初から与えられたものではなくて、すぐれた場を作っていくというのも、クリエイターの仕事のひとつだと思う。

石岡瑛子Iデザイン

最初は頭脳で分析、構築し考え方の基本を作る。その後、自分を「無」にして作り手たちの意思と感情を読みに入って行く。スタッフと話し込み、いくつかの候補に絞って、観客たちに向けて血液をドクドク送り込む。

石岡瑛子Iデザイン

「血液」というワードを目にしたとき、バラバラだった考えが線で結ばれて、脳内に私のための新しい地図ができあがるのを感じた。

ホックニーのように、美術史をはじめから学び直そうと思った。石岡さんのように、激しく全力で燃えあがって無になるのをためらうまいと思った。

そして濃く熱くなった血液を、私も世に送り込むのだ。

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