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連載日本史281 2010年代の国際情勢

2010年代に入って、世界各国でも政権交代が相次いだ。中国では胡錦濤に代わって習近平が国家主席となり、北朝鮮では金日成・金正日に続く三代目の金正恩が総書記に就任、韓国では朴槿恵が史上初の女性大統領となったが一連の不祥事によって弾劾罷免となり、代わって文在寅大統領が就任した。中東では「アラブの春」と呼ばれる各国での民主化運動の広まりにより、チュニジアのベンアリ政権、リビアのカダフィ政権、エジプトのムバラク政権などの長期独裁政権が次々と崩壊した。シリアではアサド政権と反政府勢力の対立が泥沼の内戦となり、隣国イラクの政治的混乱もあって、過激派組織IS(Islamic State)が両国の国境地帯を拠点として勢力を拡大した。

2010年代の国際情勢(mainichi.jpより)

2009年にプラハで核兵器廃絶を訴える演説を行い、ノーベル平和賞を受賞した米国のオバマ大統領は、2016年には現職大統領として初めて広島を公式訪問し、核なき世界に向けてのスピーチを行った。翌年には核兵器禁止条約の成立に尽力したNGOのICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞。しかし米国大統領選挙では、共和党のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンに僅差で勝利し、「アメリカ・ファ-スト」を掲げて、環境問題や貿易・軍縮における国際協調の枠組みから離脱する動きを見せた。EUでも、中東からの多くの難民の流入を受けて、移民政策などを巡って各国の内部対立が激化し、排外主義を掲げる極右政党が勢力を伸ばすなど、内向きの動きが強まった。さらにイギリスが国民投票でEU離脱を決定。欧州統合への動きに対する逆風が吹き始めたのである。

グローバリゼーションのトリレンマ(三律背反)(blogs.ricoh.co,jpより)

ロシアのプーチン政権、日本の安倍政権にも共通することだが、加速する世界のグローバル化に対する人々の漠然とした不安が、「国民国家」という枠組みへの回帰志向を生み出しているような気がする。当初は泡沫候補と言われていたトランプが大統領選でまさかの勝利を収めたのも、グローバリゼーションの進展に伴う国内産業の空洞化によって職を失った人々の支持があったからだと言われている。しかしながら、大きな流れとしては、世界のグローバル化は避けて通れない趨勢であろう。問題は、それに伴う軋轢をいかに理性的に緩和すべきかであって、感情的な排外主義は摩擦を激化させるばかりだ。

外国人労働者数の推移(willof-work.co.jpより)

日本でも少子高齢化に伴う労働人口の減少を補うために、外国人労働者の受け入れ拡大が図られているが、彼らはそれぞれ一個の人格を持った個人であって単なる労働力ではない。移民、すなわち日本に永住するかもしれない隣人として、どれぐらいの人数を、どのようにして受け入れ、どのように権利保障をしていくのか、腰を据えて考えていく必要があろう。欧米や中東で起きている問題は、決して他人事ではないのである。

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