非線形座標
魂は、現在此処のみで、生きられない、生きていない。
未来から過去の守護を、過去から未来の鎮魂を、祈ることもある。
それらすべての〈とき〉を憩わせるのは、詩である。
空には、公然の秘密として隠された星座がある。
それは、星々を結んだ線ではない、星の連なりではない。
星と星の間にある闇であり、空である。
〈詩の座〉という。
詩の座にて、魂とたましいは睦み合う。
一篇の詩の書かれた一片の紙を燃やせば、その火は、静止流星の如く燃え、おそろしいほど美しいにちがいない。
魂の光化である。
そのひととき、いちばん近くの、ようやく出会えたものの顕現に、詩人そのひとこそ、目を瞠るだろう。
世はかくも、かような美で満ちている。
一生をかけて世に書きおくられた一篇の詩の、燃え尽きた透明なかたわらには、時を超えた〈とき〉が在る。
光にはなろうともしない〈ひかり〉が存る。
闇が深まればおのずと顕れ、燃やさずともみずから燃えている〈ひかり〉だ。