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女子大生純文学作家は異世界に転生したくない!? 第二話

 わたしは〝異世界〟の自分の邸の自分の部屋のベッドで眼を覚ました。

 ここを過ぎて悲しみの都(まち)。
 夢より醒め、わたしはこの数行を思い返し、その醜さといやらしさに、消えたい思いをする。やれやれ、大仰極まったり。

 わたしが窓の外を眺めた。朝の優しい陽差しの中、優しい緑の庭で猫と戯れているメイサが見えた。
 それは一枚の絵のような光景だった。きれいでかわいい人。

 

 メイサと目が合った。
 メイサははにかんだ。膝の上の猫が嬉しそうだった。

  * *

 わたしが扉まで歩き、扉を開けて、邸の様子を眺めた。

「お嬢様、お目覚めに?、朝食をご用意します」

 召使いの女性が笑顔でわたしに話した。
「いえ、顔も洗いたいから、どこに行けば?」
「お持ち致します」

 お持ちするの?

 部屋で待っていると、さっきまで庭で猫と遊んでいたメイサが笑顔で現れた。

「お嬢様、朝食をお持ちしました」

 パンとオレンジマーマレード、オムレツ、剥いたリンゴと切ったスイカ、そして紅茶。イングリッシュブレックファースト?だった。それをベッド用の食事テーブルと一緒に、わたしのベッドの上に置かれた。

「お嬢様、こちらもお持ちしました」

 水の入った木のバケツにタオルが入っていた。それをメイサが手で絞って水を落とし、わたしに渡してくれた。

「ありがとうメイサ」
「いえ、おそれいります」

 わたしが水分を含んだタオルで顔を拭くと、「お嬢様、失礼します」メイサが次は乾いたタオルで、わたしの顔を優しく拭いてくれた。

「ありがとう」
「いえ」

 食事は素敵で、メイサも素敵だった。わたしは満足していると着替えをメイサに促されたので、着替えることにした。

 着替えが始まるとメイサはさっきの召使いを呼んだ。水色のフリルのドレスを着せてもらった後、メイサはもう一人の召使いと一緒にわたしのコルセットを締めた。
 痛、苦しい・・(汗)。

 わたしは、優しい緑の庭を歩いた。メイサが日傘を差して一緒に隣を歩いてくれた。庭の水場の向こうは大きな池で、わたしは池の周囲を歩いた。

 わたしは、メイサにこの後のヒマリ・エレノーラの身の上がどうなるかを聞いた。それはやはりテンプレ通りの展開で、半年後に外国に大使として赴任中の父親が邸に戻り、ヒマリ・エレノーラに絶縁を言い渡すということらしい。そして親に絶縁された貴族の元令嬢は街で生活することを許されず、辺境の外国へ送られるらしい。それを王城では、追放された者は不遇な日々を送っているとして、物笑いにするということらしかった。
 よかった・・、斬首とかそんなのじゃなくて・・(汗)。

「お嬢様・・、すみません・・、わたしがあの時、フレデリア様に豚の血をぶちまけることができなかったために・・・。」

 豚の血をぶちまけるって、よくそんなこと考えたよね、ブルック・エレノーラって・・。

「気にしないで、メイサさん、それはわたしが悪いの、メイサさんは悪くない」
「メイサ・・・さん?」
「いえ!、メイサは悪くない!、すべては時の運命よ!」
「お嬢様・・」
「メイサ!、あなたはなにも気にしなくて大丈夫!、大丈夫よ!」

 うう。年上の女性(ひと)呼び捨てにするって慣れない・・(汗)。

 わたしはメイサと邸の庭を歩いた。幾何学的なフランス式庭園と、自然をそのまま生かしたイギリス式庭園とが混在されていた。
 わたしはその優しくも美しい庭にうっとりし、辺境の外国でスローライフを満喫できればいいなと考えた。

  * *

 昼食は豚肉のローストとレモンパスタ。デザートは剥いた蜜柑と葡萄だった。楽師が音楽を弾いてくれるということで、わたしは音楽部屋に行き、ピアノとバイオリンの伴奏を聴きながらコーヒーを飲んだ。

 ・・・?
 ピアノとバイオリンの旋律の間に声が聞こえた。わたしは音楽部屋を出た。

「メイサ!、あなたのせいでお嬢様は婚約を破棄されたのです!、死んで詫びなさい!!、死になさい!、死ね!」
「なぜ生きているのです!、三階に窓があります!、そこから飛び降りなさい!」

 え?!

 メイサさん?が、同じ召使いに両腕ををつかまれ、平手打ち?にされていた。

「あ・・あのー、なにをされているのでしょう・・」

「お嬢様!、このメイサのせいで、お嬢様がお可哀相な目に!、メイサを懲らしめているのです!」
「メイサ!、お嬢様に慈悲を請いなさい!」
「お嬢様!、申し訳ございません!、わたしのせいでお嬢様に重々なる不遇を!、わたしはもっと罰せられるべきです!」

「いや、みなさん、やりすぎだと・・」

「メイサ!、よく言いました!、ルイップ、ここへ鞭を持ってきなさい!」
「はい!、サロウドさん!」
「メイサ!、お嬢様に罰せられるのよ!」

 なに?、いったいなにがあるの?

 ルイップという召使いが鞭を持って戻って来た。

「お嬢様!、前回のようにこれをお使いください!」

 そう言われて、わたしはルイップに鞭を手渡された
 待って!、こんなの使えないです・・。

「お嬢様!、メイサに鞭を!、わたしたちが捕まえています!」
「いや、・・いいでしょう、やめておきましょう」
「お嬢様!、お嬢様が!、お嬢様が昨日王城であったことは!、このメイサが悪いのです!」
「お嬢様、許してください・・、でも・・、わたしが悪かったのです・・」メイサが弱々しくが言った。
「お嬢様!、お願いします!、メイサに鞭を!」

「・・・、昨日王城であったことというのは、わたしが皇太子から婚約破棄をされたことですか?」
「いえ・・、大きな不運とお聞きしております・・」
「じゃあ、わたしのことなのでもういいでしょ?」
「いえ!、すべての原因はメイサなのです!」 

 これなに言ってもダメなやつ?

「じゃあ、みなさんはわたしがよく勉強して、読書もしていることはご存知ですよね?」
「はい、お嬢様は、精錬された才媛です」
「最近読んだ本に、こういうのがあるのです、物語の出だしは、『わたしは召使いをいじめた』」
「・・・。」
「・・・。」
「『わたしは、ばかなことが嫌いで、それでばかな召使いをとにかくいじめた。ケイトはばかな召使いだった。林檎の皮をむかせても、むきながらなにを考えているのか、二度も三度も手を休めて、ちょっと!、とその度ごとにきびしく声をかけてあげないと、片手に林檎、片手にナイフを持ったまま、いつまでも、ぼんやりしている。足りないのかな?、と思っている』、こういう話なの」
「・・・それはメイサのような召使いということでしょうか?」
「そうかも」
「お嬢様、お嬢様がなにを伝えたいのか・・。わたくしたちではわかりかねます・・。」
「この貴族は貴族として出世できず、都に行き文士となったのです、そこにその文士が貴族だったことを知る剣士が夜回りで訪ねてくるのです」
「お嬢様、おそれいります・・、ルイップにはなにをお話されているかさっぱりわかりません」
「わたしは半年後に、辺境の外国に行くかもしれませんが、その外国でもわたしがエレノーラ家の令嬢だったと知る人が訪ねてくるかもしれないでしょう?、この物語はわたしの行く末を書いているかもしれない」
「お嬢様!、すみません!、お嬢様の深い心情を理解できず!、申し訳ございません!」
「そこでその剣士が召使いだったケイトは平民ながらも二人の子を産んで立派な母親として幸せに暮らしていると聞かされるの、『名家の子女の召使いというのは召使いまで立派に教育されるものだ』と、そこで、その元貴族の文士は、わたしは負けたのだと泣き伏すの」
「・・・。」
「・・・。」「・・・。」
「物語は、それでもこの負けがわたしの明日の活力につながると爽やかに終わるの」
「・・・。」
「お嬢様、わたしには・・、どう感想を述べていいか・・、わたしにはわかりません」
「わたしは辺境の外国で泣き伏したくないの、だからこういういざこざやめたほうがよくないですか?」
「・・・。・・・。」
「・・・、お嬢様・・、すみません・・、お嬢様の深い思慮をわたしたちがわからず・・」
「そう、じゃ、これでお終いでいいですよね?」
「はい、お嬢様、・・メイサ、お嬢様に感謝しなさい」

「お嬢様!、ありがとうございます!!」
 そう言って、メイサはわたしに笑顔で抱きついた。
 
 メイサ・・、近い。メイサ・・、おっぱいおっきい・・(汗)。

  

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