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女子大生純文学作家は異世界に転生したくない!? 第三話

 わたしは音楽部屋に戻り、コーヒーを飲もうとするとコーヒーが冷めていた。わたしがそれを飲もうとすると、メイサが替えを持って来ると言った。

「お嬢様はご機嫌な時は紅茶ですよね?」
「そうなの?、・・・紅茶で」
「はい、すぐお持ちします」

 わたしって、ご機嫌な時って紅茶なの?、でもひとり暮らしを始めてからは安いティーパックの紅茶ばかりで、、というより、わたし今ご機嫌なの?

 メイサが紅茶を持って戻ってきた。
 ウェッジウッドっぽい苺が描かれたかわいいティーポットでかわいい薔薇の模様が入ったティーカップに注いでくれた。

「お嬢様、騎士団長のブルー様がお越しです、お会いしたいとのことでした」

 ブルー?、たしかテンプレならわたしのことをずっと好きで、想い続けている騎士団長だ。ロン毛で髭の。

「わかった、会いましょう」
「お会いなさるんですか?」
「え?、もしかして騎士団長ってかっこわるい人とかすごいデブの戦士とか怖い顔のおじさんってこと?」
「いえ、騎士団長様は見た目はお美しい方で、お嬢様とお年も近い方です・・」
「そうなの?!、じゃお会いしましょう!」

 わたしは化粧をしてお出かけの準備をした。メイサが筆のようなもので唇に紅を塗ってくれた。

 騎士団長は邸の庭で待っていた。精悍で風になびく髪、あご髭は少なめで口元の髭は格好よく手入れされていたイケメンだった!。

「お待たせしました」
「ヒマリ様、お会いできてとても嬉しく思っています」
「そうなんだ」
「はい、お詫びしたいことが」
「え?、なにかお詫びしたいことがあるのですか?」
「はい、昨日の王城であった出来事に、ヒマリ様が傷ついた際に、わたしが駆けつけて守らなかったことです」
「そんなに気にしなくていいですよー、わたしはもう大丈夫ですから」
「ヒマリ様」
 そう言って、騎士団長のブルーはわたしの手を取った。ブルーの手の温もりが伝わった。

「ブルー様、おわきまえを!!」 

 え?、突然のメイサの言葉に、わたしもブルーもびっくりして、お互いに手を引いた。

「ヒマリ様、お元気だったこと安心しました、今日は謝罪の言葉だけで十分です」
「え?、一緒に紅茶でもどうですか?」

 ブルーは、メイサの顔を見た。メイサは目を細めてブルーをにらみつけていた。

「ありがとうございます、・・でも今日はこれで帰ります、またお訪ねしてもよろしいでしょうか?」
 そう言って、ブルーはわたしに微笑んだ。かっこいい!
「じゃ、また来てください、紅茶でも飲みましょうねー」
「ありがとうございます、また次回に」

 そう言って、ブルーは、庭の入り口に休ませていた馬に跨り、颯爽と去って行った。

「ブルー帰っちゃったね」わたしは言った。
「お嬢様」メイサが言った。
「なに?」
「お嬢様は昨日大変なことがございました、傷ついたお嬢様の心の隙を狙いに来たブルー様にご注意ください、騎士道にもとる行為です」

「へ?」
 もしかしてメイサって独占欲強い人?、仲良くなったらめんどくさい人?

  * *

 わたしが邸に戻るとルイップが話しかけてきた。

「ヒマリ様、お元気のようですので、ダニエル様がお会いしたいと仰っています」
「ダニエルって?」
「は?」
 ルイップは不思議そうな顔でわたしを見た。
「い、いえ、・・昨日婚約破棄されてすごいショックで・・、一時的な記憶喪失なの・・、ということで、ダニエルって?」
「お可哀想なヒマリ様、ダニエル様は実のお兄様です」
「あ!、お兄さんね、ルイップ!、冗談よ、冗談、お兄さんを忘れるわけはないでしょ」
「さようですか!、よかったです!、それではダニエル様がお待ちです」

 わたしはルイップに案内されて、ダニエルに会うことになった。ダニエルの部屋は、邸の奥にあり、薄暗い廊下を歩くことになった。それにおかしい。乙ゲー『フレデリアの鐘鳴る』もラノベ『悪役令嬢渡溺』も、ブルック・エレノーラはひとり娘でお兄さんはいないはず。
 なんだろう?、モフモフのエルフのケモ耳のお兄さんでもいるのだろうか?、それならまだかわいいからいいけど、獣人だったらどうだろう?、無理なんだけど。。

 邸の一番奥、暗い廊下の一番奥の部屋の前にわたしはルイップに案内された。
「ダニエル様、ヒマリ様がお越しです」
「そうか」と男の人の声が聞こえた。

 わたしは部屋の中に入った。部屋の中大きな窓からの優しい光に溢れて、ベッド横たわる短髪の端正な男の人がいた。

 わたしが近寄ると、その短髪の男の人はベッドから少し腰を上げた。

「大丈夫ですかダニエル様・・」
 ルイップが気遣った。
「大丈夫だ、ヒマリの方こそ大丈夫か?」
「へ?」わたしは言った。
「昨日大事があって泣き伏しと聞いた、ヒマリ、大丈夫か?、お前は強がっていても女の子なんだから」

「・・・。」
「どうした?、やっぱり強がりもいえないほどショックなのか?、元気出せよ」

「・・・。」
「お前が無理やり皇太子の婚約者になったのも僕の責任だ、この体で家を継げない僕が悪いんだ」

「おにい・・さんは、からだが悪いの?」
「なんだ突然意地悪だな、ごめん、ぼくが病弱で、僕にかかる家名をぜんぶヒマリに背負わせている」
「そうなの?」
「そうだ、悪いのは全部僕だ、だから元気出せよヒマリ」

 わたしはなにも言えなかった。いや、言わなかったというか、どう、なにを言えばいいか・・。
 その時、ダニエルがわたしの脇の下に手を伸ばした。

「いぢへ?!」
「ははは、なんて顔してる!、ヒマリ、ほんとだな元気そうだ!」

 へ?、セクハラ?、でもダニエルは無害な笑顔で笑い、わたしを見た。

「ヒマリ、元気出せよ、悪いのは僕だ」

 ・・・。
 ・・・。・・・。
 これがわたしの・・、お兄さん・・。
 



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