東北自動車道において、このような交通事故が発生した。
この事故は、道路交通法や、自動車学校で習う知識をきちんと実践できていれば回避し得た事故であると思われ、被追突車両であるバスの運転手の行為には疑問点がある。
同様の事故を防止するために、今一度正しい法令の知識を確認しておきたい。
と規定する。
と規定している。
すなわち、本件のように、高速道路上で自動車が故障して動かなくなってしまった場合には、停止表示器財を用いて後方に注意喚起することが義務づけられている。停止表示器財の代表的なものは、赤色の三角の板であり、Amazonや楽天などで、数千円で購入することができる。
実際上、高速道路上で車が故障した場合については、さらに進んで以下のようにすべきであると推奨されている。JAFのウェブサイトから引用すると、
高速道路は、時速80キロメートルないし時速100キロメートルが制限速度とされていることが殆どであるが、実際には、場所によっては時速120キロメートル程度の速度で走行している自動車も珍しくない。運転手が危険を察知してからブレーキをかけ、自動車が停止するまでに要する距離のことを停止距離というが、時速80キロメートルで走行している場合の停止距離は約76メートル、時速100キロメートルの場合は約112メートルとされている。これは路面が乾燥していて平坦な場合の目安である。このことから、大雑把に言えば、100メートル程度手前で気が付いてブレーキをかけないと衝突を回避できないということが言える。道路交通法施行規則では、このことから、余裕を持って、停止表示板については200メートル先から視認できるものであることを求めている。
このことから考えると、JAFのホームページにあるように、自動車の運転手は、高速道路上で自動車が故障した場合、まずは同乗者を速やかに高速道路外に避難させなければならないことは当然である。後続車両による追突や轢過の危険があるからである。その上で、自らも停止表示板等を設置した上で、速やかに道路外に退避することが求められる。
本件のように、乗客と共にバスの後方に回って点検を行うなど言語道断である。
このような高速道路上で自動車が故障した際の対処方法は、自動車学校の学科教程で必ず指導されるものであり、筆者も自動車学校で停止表示板について学んだ後に、試しにAmazonで停止表示器財を購入してみた記憶がある。
バスの運転手は、自動車の運転のプロであるのだから、このような場合の対処方法については、一般のドライバーと比較しても、適切な知識を身につけた上で対応に当たることが求められる。特に、乗客の中には外国人もおり、我が国の道路交通法の規定を知らなくてもやむを得ないところであるから、尚更である。にもかかわらず、あろうことか自ら外国人の乗客と共にバスの後方に回り込み、点検を行っている間に後続のトラックに追突されたと言うことであれば、乗客に対する安全配慮義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任が成立する可能性が高いように思われる。
実際問題、NEXCO西日本のホームページを見ると、
という注意喚起がなされており、自動車学校で習った知識が十分活かされずに死亡事故につながるケースが相当数あることがうかがわれるところである。
弁護士が六法を知らないとか、医師が人体の構造を知らないと言うことであれば、そのような弁護士や医師に仕事を頼む人はいないだろう。それと全く同様に、バスやタクシーの運転手が、基本的な道路交通法の知識や交通安全のための基本的知識を欠落させたまま業務に当たっているということは極めて遺憾なことである。しかし、街中におけるバスやタクシーを見ていて、基本的な道路交通法の知識がないのではないかと疑問を抱かざるを得ないことは少なくない。車線変更時にウインカーを出さないとか、違法な態様での追い越しをする運転手は、普通に生活していてもかなりの頻度で遭遇する。
使い古された言い回しであるが、自動車は「走る凶器」である。自動車の運転を職業にする人は、乗客や周囲の運転手、歩行者など多くの人命を預かっているということを改めて自覚し、せめて自動車学校のテキストを読み直すなどして、日頃から法令遵守・交通安全のための基本的知識の涵養に努めてもらいたいものである。