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東北自動車道追突事故 正しい道路交通法の知識を持って運転しよう

東北道バス事故で3人死亡、宮城 エンジントラブルで停車中
宮城県栗原市の東北自動車道下り線でバスに大型トラックが追突した事故で、県警は17日、バスの運転手の日本人女性と、乗客だったネパール国籍の男性2人の死亡を確認したと発表した。大型トラックの男性運転手は頭を強く打ち、重傷を負った。県警高速隊によると、バスはエンジントラブルで路肩付近に停車。運転手と乗客40人が全員降車した後、後方付近にいた3人がトラックにはねられたとみられる。県警が身元や事故の原因を調べている。
 事故は16日午後8時10分ごろ、発生。バスには運転手の女性1人、ネパール国籍の39人、バングラデシュ国籍の1人がいた。

3人死亡の東北道追突事故 バスの点検中に巻き込まれたか
16日夜、宮城県栗原市の東北自動車道で路肩付近に停車していたバスに大型トラックが追突し、バスの外国人留学生の乗客など4人が死傷した事故で、バスがエンジントラブルで停車したあと、亡くなった留学生2人とバスの運転手がバスの後部に回り込み点検中に、事故に巻き込まれていたことが分かり、警察が詳しい経緯を調べています。
この事故は16日午後8時すぎ、宮城県栗原市の東北自動車道の下り線で路肩付近に停車していたバスに大型トラックが追突したもので、バスの後方近くの道路上にいた乗客のネパール人の男性2人とバスを運転していた50代の日本人女性の合わせて3人が死亡しました。
また、大型トラックを運転していた青森県の運送会社の30代の男性が頭に大けがをしました。
バスにはネパール人39人とバングラデシュ人1人の外国人留学生、合わせて40人が乗っていて、これまでの調べでバスは煙が出るなどのエンジントラブルが起き、路肩付近に停車し、全員が車外に出ていたということです。
その後の調べで、亡くなった留学生2人とバスの運転手はバスの後部に回り込み点検作業をしていたということです。
警察に対し複数の留学生は「停車してから5分から10分程度で追突された」と話しているということです。
警察は、3人が点検中に事故に巻き込まれたとして詳しい経緯を調べています。
栗原市の東北自動車道での事故を受けて、住宅設備大手の「LIXIL」は、大型トラックに追突されたバスの乗客40人の外国人留学生は、この会社の岩手県一関市にある工場の従業員だったとしたうえで「このような事故に巻き込まれ、心からお悔やみ申し上げます。亡くなられた方のご家族の支援などは、派遣元である会社から行われていますが、LIXILとしてもできるかぎり支援をしていきます。警察の捜査にも全面的に協力してまいります」などととコメントをしています。

東北自動車道において、このような交通事故が発生した。
この事故は、道路交通法や、自動車学校で習う知識をきちんと実践できていれば回避し得た事故であると思われ、被追突車両であるバスの運転手の行為には疑問点がある。
同様の事故を防止するために、今一度正しい法令の知識を確認しておきたい。

道路交通法75条の11第1項は、
自動車の運転者は、故障その他の理由により本線車道若しくはこれに接する加速車線、減速車線若しくは登坂車線(以下「本線車道等」という。)又はこれらに接する路肩若しくは路側帯において当該自動車を運転することができなくなつたときは、政令で定めるところにより、当該自動車が故障その他の理由により停止しているものであることを表示しなければならない。

と規定する。

これを受けた道路交通法施行令27条の6は、
法第七十五条の十一第一項の規定による表示は、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める停止表示器材を、後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置に置いて行うものとする。
一 夜間 内閣府令で定める基準に適合する夜間用停止表示器材
二 夜間以外の時間 内閣府令で定める基準に適合する昼間用停止表示器材(当該自動車が停止している場所がトンネルの中その他視界が二百メートル以下である場所であるときは、前号に定める夜間用停止表示器材)

と規定している。
すなわち、本件のように、高速道路上で自動車が故障して動かなくなってしまった場合には、停止表示器財を用いて後方に注意喚起することが義務づけられている。停止表示器財の代表的なものは、赤色の三角の板であり、Amazonや楽天などで、数千円で購入することができる。

実際上、高速道路上で車が故障した場合については、さらに進んで以下のようにすべきであると推奨されている。JAFのウェブサイトから引用すると、

1.ハザード ランプを点灯して、路肩に寄せる
車にトラブルが発生した際は、ハザードランプを点灯させ、できるだけ路肩に寄せる。橋やトンネルなど、路肩が狭かったり、路肩がない場合、可能な限り広い所まで自走する。
2.発炎筒、停止表示器材を車両後方に置く
同乗者を避難させてから、発炎筒、停止表示器材を車から50m以上後方に置く(見通しが悪い場合、さらに後方に)。燃料漏れの際は、引火の危険があるので、発炎筒は使わない。
3.ガードレールの外側などに避難
同乗者といっしょにガードレールの外側に避難。橋や高架など外側に避難できない場合、車から離れてガードレールに身を寄せる。追突された際に巻き添えにならないように、車より後方に避難する。
4.非常電話か携帯電話で救援依頼をする
1kmおきに設置してある非常電話か携帯電話で救援依頼する。携帯の場合、場所が特定できるように、路肩にあるキロポストの数字を伝える。なお、非常電話で連絡した場合も、そのままJAFに救援依頼できる。

高速道路は、時速80キロメートルないし時速100キロメートルが制限速度とされていることが殆どであるが、実際には、場所によっては時速120キロメートル程度の速度で走行している自動車も珍しくない。運転手が危険を察知してからブレーキをかけ、自動車が停止するまでに要する距離のことを停止距離というが、時速80キロメートルで走行している場合の停止距離は約76メートル、時速100キロメートルの場合は約112メートルとされている。これは路面が乾燥していて平坦な場合の目安である。このことから、大雑把に言えば、100メートル程度手前で気が付いてブレーキをかけないと衝突を回避できないということが言える。道路交通法施行規則では、このことから、余裕を持って、停止表示板については200メートル先から視認できるものであることを求めている。
このことから考えると、JAFのホームページにあるように、自動車の運転手は、高速道路上で自動車が故障した場合、まずは同乗者を速やかに高速道路外に避難させなければならないことは当然である。後続車両による追突や轢過の危険があるからである。その上で、自らも停止表示板等を設置した上で、速やかに道路外に退避することが求められる。
本件のように、乗客と共にバスの後方に回って点検を行うなど言語道断である。
このような高速道路上で自動車が故障した際の対処方法は、自動車学校の学科教程で必ず指導されるものであり、筆者も自動車学校で停止表示板について学んだ後に、試しにAmazonで停止表示器財を購入してみた記憶がある。
バスの運転手は、自動車の運転のプロであるのだから、このような場合の対処方法については、一般のドライバーと比較しても、適切な知識を身につけた上で対応に当たることが求められる。特に、乗客の中には外国人もおり、我が国の道路交通法の規定を知らなくてもやむを得ないところであるから、尚更である。にもかかわらず、あろうことか自ら外国人の乗客と共にバスの後方に回り込み、点検を行っている間に後続のトラックに追突されたと言うことであれば、乗客に対する安全配慮義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任が成立する可能性が高いように思われる。
実際問題、NEXCO西日本のホームページを見ると、

運転者も同乗者も通行車両に注意しながら車を降り、ガードレールの外など安全な場所にすみやかに避難してください!車内や車の前後での待機は後続車から追突される恐れがあり危険です。ガードレール外など安全な場所にすみやかに避難してください。事故や故障時に車の前後や路肩にいて、後続車にはねられるといった死亡事故が多発しています。

という注意喚起がなされており、自動車学校で習った知識が十分活かされずに死亡事故につながるケースが相当数あることがうかがわれるところである。
弁護士が六法を知らないとか、医師が人体の構造を知らないと言うことであれば、そのような弁護士や医師に仕事を頼む人はいないだろう。それと全く同様に、バスやタクシーの運転手が、基本的な道路交通法の知識や交通安全のための基本的知識を欠落させたまま業務に当たっているということは極めて遺憾なことである。しかし、街中におけるバスやタクシーを見ていて、基本的な道路交通法の知識がないのではないかと疑問を抱かざるを得ないことは少なくない。車線変更時にウインカーを出さないとか、違法な態様での追い越しをする運転手は、普通に生活していてもかなりの頻度で遭遇する。
使い古された言い回しであるが、自動車は「走る凶器」である。自動車の運転を職業にする人は、乗客や周囲の運転手、歩行者など多くの人命を預かっているということを改めて自覚し、せめて自動車学校のテキストを読み直すなどして、日頃から法令遵守・交通安全のための基本的知識の涵養に努めてもらいたいものである。

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