Why Divorce Cases Involving Allegations Of Abuse Still Confound Family Courts 日本語訳3/4
レイチェルビルンボウムは、高葛藤家庭と家庭内暴力の問題を抱える家庭の問題に、1990年代から取り組んでいる。西部の社会福祉の教授である彼女の研究が示唆するのは、「高葛藤」という言葉は、お金に関する痴話喧嘩から、深刻な虐待まで、幅広い概念を連続的に表すものとして用いられてきたと言うことである。
「家庭内暴力と高葛藤事案というのは区別する必要があります。ここは気をつけるべきポイントです」とビルンボウムはいう。彼女は同時に子どもの権利の研究もしている。「この2つは同じものではありません。子どもや女性達は、死に追いやられたり、苦境に立たされたりされうるのです」
彼女は、オンタリオの裁判所によって高葛藤事案とされた事案の約3分の1においては、家庭内暴力に関する具体的な証拠があるか、若しくは家庭内暴力を懸念するだけの十分な理由がある事案であることを発見した。
このような理由で、彼女は調停手続の一般的な傾向に対して警鐘を鳴らしている。調停手続は時間と費用の節約になり得る。しかし、それは同時に、女性に対して、かつて自分を虐待したものと交渉することを強要することになり得るし、あるいは、虐待自体を公にすることを控えるように強いることにもなりかねない。バンクーバーにあるライズ女性の法センターの2020年の報告によれば、第一線で働く人々と虐待を受けた経験にある女性に聴き取り調査を行ったところ、虐待を受けた経験のある女性がDVについて言及することは、自らの心証を悪くすることになりかねないと代理人弁護士から言われたという経験は普通のものであるということであったという。
そうしたアドバイスが、仮に家庭裁判所実務の現状に併せたものであったとしても、ネイルソンは、そうしたアドバイスは、女性を黙らせることにつながっていると考えている。「これは古典的な板挟みなのです。敵対的な当事者と見られないように、家庭内暴力に関する情報をあえて盛り込まないようにするか、一歩踏み出して敵対的な当事者とレッテル張りされるかの究極の選択を強いられるのです」
ケイトの代理人弁護士が彼女に注意したように、高葛藤とのレッテルを貼られることによって、種々の烙印を押されることになる。この世の中には、裁判所の介入なしに問題を解決できない夫婦は、両者痛み分けとなるものだという常識が広く存在する。ジェンダーに関する神話が、さらに問題を複雑にしている。
2011年のアメリカの研究により、裁判官と調査官は、代理人弁護士や社会福祉士に比較して、虐待を受けた母親が、虐待についてウソをつき、子どもを父親から遠ざけようとしていると考える可能性が高いことが明らかになっている。また裁判官、調査官は、親権者や面会交流に関する判断を行う際の要素として、家庭内暴力をより割り引いて考える可能性があることも明らかになった。危険に対する予測や、離婚後の暴力に関する知識が欠如していることが、虐待する親を単独親権者にしたり、虐待する親との共同親権を認めることにつながっているのである。
母親が虐待を受けたと主張することは、単に敵対的だとか意地悪だという風に見られるだけでなく、「片親疎外」をしている、子どもを他方配偶者と敵対させようとしている、と非難される危険性も持ち合わせている。こうした概念は、世界中の家庭裁判所を席巻している。そして、この主張は、虐待加害者とされる人々が、しばしば親権を巡る紛争の中で持ち出すものであり、子どもを虐待する親の元に置いてしまう結果となるという事態が生じてきたのである。
片親疎外の抗弁が広まりつつあることへの懸念は非常に高く、WHOのICDにこれが含まれることになったと言うだけで、36カ国から350人以上の専門家が集まり、この片親疎外という概念は、厳密な科学的根拠に裏付けされたものではない、議論のあるものであり、両性の平等という問題に配慮していないものであるという非難決議を行った。彼らは、この片親疎外という概念が、国際機関のお墨付きを得ることはよくないと考えており、その成果がみのり、ICDから片親疎外は削除された。
ネイルソンはこの非難決議に署名をしたひとりである。彼女は、片親疎外というのは問題のある考え方であると考えている。すなわち、虐待の加害者が、加害者を怒らせた被害者が悪いのだとして虐待の被害者を責め立てるための虐待の戦術として反響を得るのではないかということである。「なぜ、自らが子どもの最善の利益のために努力してきたことを示すことが、親の責務とならないのでしょうか(訳者解説:子どもの利益そっちのけで、片親疎外などと相手方配偶者を非難するのはいかがなものかという意味であると思われる)」と彼女は問う。
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