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2023年8月「新型コロナ」データの見方について

2023年8月の「新型コロナ感染症」(COVID-19)のデータの見方について、メモします。

図1には、2023年8月末現在の日本の感染者数の推移を示します。日々の新規陽性者数が最大の頃(2022年8月)は、日本ではオミクロン株が中心でした。今の諸外国を見ても、オミクロン「の中の」何かの亜種が大部分、という状況です(図2)。
注意:なお、この数字(縦軸の値)はサンプリング結果なので、その値自体ではなくて、その推移(変化)に注目することが必要です(その上で、サンプリング率が時間的に一定である、と仮定します)。

図1:日本における新規陽性者数の推移(モデルナ社による推定値)。出典:https://moderna-epi-report.jp/
図2:COVID-19ウイルス(SARS-COV-2)の変異株。大部分がオミクロン株の亜種である(2023年7月)。出典:https://bit.ly/3qO9R2y

このため、新規陽性者数の流行ピークが、以前を超えないならば、日本でも他国と同様に、今後は減っていくと予想できます。なぜなら仮に、感染力も、人々の社会的注意現象も、仮に両方とも同じであったとしても、「移す相手が」どんどん減っているからです。そして今は、伝搬現象の最後に近いからです。こういう時は、最大があまり高くならない状態で(つまり、移す相手が少ないので、減るフェイズに、早くなるから)、終わりを迎えます。

図3には、フランスとドイツの場合を例にとって、新規陽性者数の推移を示します。これらの国ではCOVID-19流行は、ほぼ終わった状況にあるように見えます。

図3:フランスとドイツにおける新規陽性者数の推移。出典:https://bit.ly/47XpgxX

他方で、日本がいまだにクスブっている理由は、日本の戦略が、感染爆発をできるだけ先延ばしして、医療資源をできるだけ無理しないで、しのぐ、という方法をとってきたからです。そしてこの結果、日本での影響は、これでもまだマシだったと思えます(他国の影響は相対的にもっと大きかったと思われる)。

他国では、感染者数が日本の数十倍から数倍と、非常に多い期間が長かったことが思い起こされます。逆にこの結果として、他国では集団免疫(大多数が感染した=大多数が免疫を持った状態)が、日本より 早く 来たことになったわけです。
図4には、累積の死亡者数(人口100万人あたり)を示します。また図5には累積の新規陽性者数の推移を示します。どちらも日本の数字の少なさが目立ちます。
なおこの図4と図5では、日本は2023年5月から(残念なことに)データを出さなくなっています。従って実際には、その後も日本でも、増加を続けていることに注意が必要です。しかし集団免疫状態になるのを「遅らせる」ことに成功していることは確かだと思われます。

図4:米・英・独・仏と日本・韓国における累積の死亡者数(人口100万人あたり)の推移。出典:https://bit.ly/45ODcIU
図5:米・英・独・仏と日本・韓国における累積の新規陽性者数(人口100万人あたり)の推移。出典:https://bit.ly/45VlgfR


日本ではやっと今の段階で、最後の集団免疫に向かっている、ということが言えると思います。そこで今後、仮に何回か山を迎えたとしても(つまり今がそうだと思いますが)、次第に、その山自体も、減りつつ、感染流行の本当の終末を迎える、ということになると思います。

なお、流行現象の終末を迎えた 後 の地域的な流行で終わる状態を、エンデミックと呼びます。これはパンデミックに対比させて理解できる概念です。例えば普通の風邪(昔のコロナ)の流行現象がそれです。しかしながらエンデミックには明確な定義が存在しない、とされることにも注意が必要です。例えば、インフルエンザはエンデミックとは呼ばれず、毎年、エピデミックを繰り返すと言われます。

図6: 押谷仁・鈴木基・西浦博・脇田隆字「新型コロナウイルス感染症の特徴と中・長期的リスクの考え方」(2022年12月14日)、出典:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001024262.pdf


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