耳の中にある小さな骨の話

耳の穴を奥にたどると鼓膜があります。鼓膜は外耳道と呼ばれる耳の穴から身体の中に続く道に対して45度の角度で存在する膜なのですが、その鼓膜の向こう側に、小さな骨が3つあります。

この小さな3つの骨について、今日は少し話をしようと思います。

この骨の存在について知ったのは、高校の生物の時間でした。

授業中、「耳の中に骨がある」と先生が言い、黒板に骨の絵を描きました。骨は3つあり、鼓膜側からツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と名前が付いています。3つの骨は接していて、音が鼓膜をふるわせるとその振動がツチ骨に伝わって骨の動きに変わります。ツチ骨の動きはキヌタ骨に、キヌタ骨の動きはアブミ骨に、とその動きは3つの骨に順に伝わります。

アブミ骨は内耳の前庭窓という部分に接しているのですが、この内耳にはリンパ液があり、骨の動きはリンパ液の波を起こします。その波が感覚細胞を刺激し、電気信号が蝸牛神経により中枢へ送られ、脳で音として感受されるわけです。

音は鼓膜をふるわせ、骨を動かし、リンパ液を波立たせ、その波が感覚細胞を刺激して脳に伝わり、音が聞こえた、ということになるということです。すごい仕組みだと思いました。

何かの音が聞こえたとき、身体の中では鼓膜が振るえて骨が動き、体内の水分が波立って電気信号が発生している。そうして聞こえた音は人の言葉だったり、音楽だったり、鳥の声だったり、風が木々を揺らす音だったり、水の流れる音だったり・・・といろいろだけど、それらは時として自分を傷つけたり、癒したり、励ましたりする。音が身体を震わせ、結果として心を震わせたりもする。小さな小さな骨の振動が音を伝え、人生を彩っているというわけです。

その後、大学生の頃に私は耳小骨を見ることができたのですが、その小さくて繊細な骨は、それぞれ形が違っていて、精巧なオブジェのような美しさでした。それを見たときは心が震えました。この小さな骨が小さく振るえることで音を伝えていると思い、すごい!と思いました。

耳小骨はからだの中にあって、別に誰かに見せるために美しい形をしているわけではないのですが、それでもとっても美しいです。しかも、美しいだけでなく、ちゃんと音を伝えるという働きをしているわけです。耳小骨は音を伝えるという役割を全うする中でその形になったわけで、粛々ときちんとした仕事をする中で洗練された美しい形を持って働くに至ったわけです。すごいです。

そういうわけで、ときどき耳の中にある3つの骨のことを思い出しながら、調和的な働き、調和的な在り方をしていれば自ずと美しい形や機能が身についていくのではないか・・・、そんなことを思ったりしています。

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