ケアのあれこれ5 気付きを向けること
自分のこころとからだを整えるとき、何にどのくらい気付くかということに意識を向けておくと整えやすいことがあります。
例えば、身体の調子が良くないとき、どうしても調子の良くないところに意識を向けがちですが、実は調子の良くないところもあれば、調子がそれほど悪くないところもあったりします。
たとえば病院で診てもらった方がよいときには診てもらうまで、自分で様子をみることができそうなら調子が良くなってくるまで。調子の悪さに不安になったときに、調子の良くないところに手を当てたり温めたり冷やしたりなど自分でできることをするのと並行して、調子がそれほど悪くないところに気付きを向けると、何かが変ってくるかもしれません。
自分の身の回りにあるもの全てに気付こうとしても、私たちは人間ですから気付きを向けられる対象には限界があります。無限に、全てに、ということは難しいです。限界があるのだから、限りある『気付きのエネルギー』を良くないところだけでなく、ふつうなところ、良いところに向けてみるわけです。
さながら、おもちゃをねだる子どもに別の話題でコミュニケーションを図って気をそらしたり、転んだ子どもの膝に手を当てて「痛いの痛いの飛んでいけー」と手や言葉に意識を向けられるように手伝って相対的に痛みを和らげる年長者の意識で、自分自身に寄り添ってあげるわけです。
身体の痛みや調子の悪さにも効きますが、嫌なことがあったときや悲しいことがあったときにも効果的です。良いことや嬉しいことに意識を向けるのが難しければ、別に嫌ではないことに意識を向けてみる方がよいかもしれません。壁が白いなぁとか、椅子の座面が柔らかいなぁとか。
五感を使うのと並行して動いてみるのもいいかもしれません。動くためには色々と考えたり意識を違うものに向ける必要がありますから、あまり心地よくないものに集中できなくなることもあったりします。
私たちは自分の注意を強く引きつけるものに気付きを向けがちですが、世の中には気付いていないだけでそこに存在しているものがたくさんあります。静かにそこに存在している良い・悪いとラベリングできないようなニュートラルなものに意識を向けてみると、意識の水平線はずーっと先まで広がっていくような感覚になることも、あったりするかもしれません。