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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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#詩のようなもの

詩『言葉たちの交差点』

あの時の言葉がスッと消しゴムで消せたら って想像してる自分がいるんだ 消せてしまう時点で言葉ではないのに 考えてもしょうがないことをグルグルさせてる 本当はもっと素敵な選択肢が いくらでもあったはずなのに 一番選んではいけないルートを その時の心は選んでしまった 時が過ぎればこころも傷んでゆく 間違えた場所はわかってる でもそこまで戻れない 足はただ前に歩いていくだけなんだ この道はすべて一方通行 引き返すルートなどあるはずない わかってるんだ、そんなことぐらいは こ

詩『number』

上の方に目立つ派手な数字 キラキラと光っている 下の方に埋もれている地味な数字 目に入ることは多分ない 上から下まで比較の世界 ふっと吹けば飛ぶような小さな私 あくせくしながら生きた証が 1から10まで刻まれていく 今すぐこの世界から消し飛んだとしたって 全て無駄だったと思うことは何もない ナンバーは一つずつ積み重なり 心の片隅から いつでも私を支えてくれる 何気ない日々のピースの一欠片 心の隙間にぴたりと収まり 綺麗な海を心に作る そんな小さな波紋が美しく広がって

詩『ノイズ マジリノ ソラ』

溜め息と下向きな人生が マーブル模様に混じった空 電車の窓から途切れ途切れに 眺める僕の無駄に黒い目 情熱が忘れ物となって ダンボールの中で息を潜めている 引取者が現れなくてずっと ほこりが付いたままの折り畳み傘 あれも これも みんな欲しい そう思って木にに登ってた なのにいつの間にか真顔に戻って 馬鹿馬鹿しくなったりしている 変な人間だよ でもみんな変だよきっと じゃなかったらこの世界に産まれないさ そんなキラキラした物 僕はまだ持ってない こんなキラキラした事 

詩『esperance.』

裸の幹が緑の葉を獲り戻し 目の前の空を確かに覆っていく 高く登った太陽が東の窓から入り込み この世のすべてを優しく照らしていく 私たちが思う以上に世界は 命の鼓動に包まれている 何かが何かを支え合って この大地に立っている 朝の通り雨で出来た小さな水たまり 夕方にはもっと小さくなっていた いくつもの夜を越えて巡っていく 水は魂の体現者かもしれない 悲しみと喜びが幾度も繰り返し 人は歳を積み重ねていく 老いたくないとは思っているが 無駄な足掻きだともわかってる 過行く季節

詩『暗い夜はやけに落ち着く』

暗い夜はやけに落ち着く 視界を遮るカーテンがあるから 暗い夜はやけに落ち着く ひんやりした空気が心地良いから 暗い夜はやけに落ち着く 星が空に綺麗だから 暗い夜はやけに落ち着く 今日あった嫌なことを反芻して帰るから 暗い夜はやけに落ち着く 昔の友達に会いたくなるから 暗い夜はやけに落ち着く 自分を映す姿鏡みたいだから 暗い夜はやけに落ち着く 家から漏れる声がとても楽しそうだから 暗い夜はやけに落ち着く 家から伝わる匂いがうちのと違うから 暗い夜はやけに落ち着く

詩『春と青を繫ぎ合わせた天才』

大画面のなかで誰かが誰かを愛して 誰かと誰かがぶつかり合って泣いて そして誰かが短い生命を廃業していく この季節の感動は大量消費されていく 彼らは彼らなりの人生があるさ 真似することは出来ない特殊な状況下だ 埃被った藍の制服捨てて 堅く馴染んだ礼服身に付けて 憧れに染まった髪は黒に戻して 誰かの期待にはそれなりに応える 僕らの行く先には 希望しか残らないんだ 進む方角は 日が登る前方のみだ 辞書なんて引かない頭の足りない季節を 難しい言葉で例えるのは野暮だと思う ア

詩『光線銃』

直線的な光が壁に当たり 無機質な影を創り出す 当たり前のようで当たり前でない物理 その集合体が今この星を作っている 月と太陽の関係性 そんなふうにして君を輝かせられたらいいなと思う そんなふうにして僕を留められたらいいなと願う あの日はそう思っていたのに 君はザラッとした言葉で僕をなじる もう返す言葉もそこにはなくて 頭の中は『終わり』という一文字ばかりで いつからだろうか 互いのダレた気持ち感じていたのは 何もしなくても過ぎていく時間が楽で 身を任せるばかりだったね

詩『time fries』

彼女の目をじっと覗くと 黒目の奥に好奇を感じる 好きという感情も嫌いという理性もなく 自分の好奇心を抑えきれずにいる彼女の目 その目付きで俺を見ないでほしい 値踏みされてる気がしてたまらなく不快 でもそれよりもっと不快なのは 彼女をそうやって値踏みする自分の態度 なんでいつのまに 彼女を忌み嫌ってしまったのだろう なんでいつのまに 最初の気持ちは消えてしまったのだろう って、自分勝手に自己嫌悪しちゃってさ 馬鹿みたいだね、ああ笑えてくる そこに確かに潜んでいるのは 互

詩『雛鳥』

いつも心の奥底で思っていた 誰かが僕を変えてくれるはずだと その時がいつか来るはずだと ひゅっと視界を横切ったツバメ ホームの上の巣に溜まって 優しい営みをそこに築く 口を開けていても エサは入りやしない 待ち望むものは自分で手にしなければ わかっていても 飛べない 飛ぶだけの勇気が 僕にまだない ぎこちないストロークで腕を揺らす それはまるで飛べない雛のように まだ飛ぶことを知らない僕なりに なにか一歩を踏み出すように 口を開けてばかりいた 僕は雛鳥のまま 空想ばか

詩『理由』

どこまで行っても私たちは 川岸のように平行線で 海に辿り着くまでひとつになることはない 心をスキャンして気持ちを読み取れたら この世界に恋という字が生まれなかった 言えない気持ちを四苦八苦して 見えない未来に手を伸ばしてく もう遅いって言ったって知らない 誰にも引き留める権利はない 暗がりを彷徨う君を引き連れ ここではない何処かへ導いていきたい 何よりも強くなるために 君の側に居ることの意味を見出すために 例えば僕は桜の木で そんで君は楓の木 互い半周遅れで巡り合うよ

詩『花を飾る』

家の窓に萎れた花ひとつ 水のなき瓶に刺さりけり 色の無い薄汚れた花弁一つ はらはら鮮やかに枯れている 輝きを失った生活 振り子のように 馬車馬のように AとBの往復続ける毎日 ときおり人はそれを憂いて どこか遠くへ身を放り出す けれど己に繋がれたる鎖の長さを知り かえって虚しい感情を沸き立たす 瓶を洗う。 ほこり取れて輝き取り戻す。 透き通るその体に映るもの 彩りを少し忘れたひとりの大人。 僕を洗う。 汚れ取れて光取り戻す? 薄肌色のその体に宿すもの 幸福を問う疑問

詩「衛星軌道」

「君が好きだ」という陳腐な言葉で 僕はこの旅にピリオドを打った ふたりが描いたふたつの線は この空に確かな軌道を描いてきた 褪せたシャツでも外に出れた 夏のふざけあった坂道 埃っぽいコートをびしょ濡れにした まだ誰もいない雪野原 覚えてる 覚えている 昨日のことのように思い出せる 瞳のカメラと頭のメモリーでいつでも呼び出す きょうも、あしたも、そのさきも きっとこの軌道は伸びていく 穏やかな空の下を電車は行きかう 無数のカメラとフィルムを満載にして その一つ一つに無限の

詩『高速バス』

重たいコートを着ないと寒い 藍色の裾を風に揺らす 履きつぶれかけた靴と共に 妙に新しい青のリュックを背負い 探しているものはなんだろう 新しい自分かな 知らない世界かな もしくは君の面影なんだろうな バスは走る 裸の大地を 実りを終えた里を なだらかな坂を越えて 手の届くサイズの未来へ ポケットにしわくちゃの折り紙 渡せなかった過去の想い 薄くなった鉛筆の線と 遠ざかった記憶の面影 手にしたものはなんだろう 確かな知識かな 尊い生涯の友かな 永久に愛すべき人を失ったの

詩『エンディング』

簡単に終わる恋じゃないって 俺はきっとたかを括ってたんだろうな 余裕モードだった自分に天罰下って 自分のせいなのになんか腐ってしまう 日付回って1時過ぎ ようやくベッドに入った時に なんか足りないなぁってちょっと思って いつもの電話がもう来ないこと気づいた きっとそうなんだろうな 思いもよらない展開って絶対あるんだよ そういえば昔見た洋物の映画 エンディングが唐突で消化不良だったな それでもこのストーリーは続く どうしようもない男のライフはまだ残ってる この胸が鳴る限り