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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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#文芸

小説『私たちは何処へ往くのだろうか?』第六話

ひと段落し、ユウはベンチに座って、警官に事情を尋ねられていた。身柄処理が終わったレナが、ユウの隣に座る。 「はー、疲れた。久しぶりに刺激的なドライブだったわ」 「…」 「ごめんねー。怒った?有給取ってたってのも実は嘘。バリバリの仕事…仕事っていうか、捜査ね。黙ってて申し訳なかったんだけど、私、関西厚生局の麻薬取締官なの。」 レナの父親は、関西裏社会に精通する人物だった。しかし薬物密輸の経由地に使っている大阪港が、国際博覧会の開催に伴い警備が強化され、利用できなくなった。

詩『言葉たちの交差点』

あの時の言葉がスッと消しゴムで消せたら って想像してる自分がいるんだ 消せてしまう時点で言葉ではないのに 考えてもしょうがないことをグルグルさせてる 本当はもっと素敵な選択肢が いくらでもあったはずなのに 一番選んではいけないルートを その時の心は選んでしまった 時が過ぎればこころも傷んでゆく 間違えた場所はわかってる でもそこまで戻れない 足はただ前に歩いていくだけなんだ この道はすべて一方通行 引き返すルートなどあるはずない わかってるんだ、そんなことぐらいは こ

詩『number』

上の方に目立つ派手な数字 キラキラと光っている 下の方に埋もれている地味な数字 目に入ることは多分ない 上から下まで比較の世界 ふっと吹けば飛ぶような小さな私 あくせくしながら生きた証が 1から10まで刻まれていく 今すぐこの世界から消し飛んだとしたって 全て無駄だったと思うことは何もない ナンバーは一つずつ積み重なり 心の片隅から いつでも私を支えてくれる 何気ない日々のピースの一欠片 心の隙間にぴたりと収まり 綺麗な海を心に作る そんな小さな波紋が美しく広がって

小説『私たちは何処へ往くのだろうか?』第五話

初老の男とガタイの良い黒服集団、そして何かもぐもぐ食ってるデブの男。見たらわかる。父親と追っ手の集団である。とうとうラスボス登場か、と言わんばかりにレナは男たちに視線を向ける。 「おいユウ!いいから、こっちに帰ってきなさい!今ならお前のしたことは全部許してやるから、来い!」 「馬鹿言ってんじゃないわよ色ボケ親父!あんたは新宿二丁目のオカマバーでテキーラキメてケツの穴でも掘られてなっつの!」 「なんだその態度は!お父さんは二丁目になど行かん!歌舞伎町のぼったくりバーに行って店

詩「have your measure」

分かり合えないこと 本当はもっとたくさんある気がする 目には見えないだけで もっとたくさんある気がする。 それを分かり合えたふりをしても いつかボロが出るもんで 無駄だということもわかってるつもり どうして言いたいことを 僕は飲み込んでしまうんだろう その時間が無駄であることをわかっているのに なぜ意味もなく 体が嫌なものを避けるのだろう そこにある意味にも気づけないままに 限界まで伸ばしたメジャーが この世界の広さを訴えかけてる気がする これ以上伸ばせませんと言わん

小説『私たちは何処へ往くのだろうか?』第四話

車の中。フロントガラスには雨粒がぽつぽつと打ち付けていた。液晶時計は12時30分を差している。レナとユウは、腹ごしらえをするために路地の路肩に車を止めて、崎陽軒のシウマイ弁当を食べていた。 「なんで逃げなきゃいけないのにわざわざ崎陽軒なんですか。その辺のコンビニの弁当でもよかったじゃないですか。あと車止める意味もわかんないんですけど」 「いいじゃない、私崎陽軒大好きなの。それに、走りながらごはんなんか食べられるわけないじゃないのよ」 「…でも今じゃないと思います」 「あらあ

小説『私たちは何処へ往くのだろうか?』第三話

「彼氏には、別行動をお願いして。どこか一か所で合流してから行くより成田で合流した方が追っ手の目くらましにもできるしちょうどいいわ。それと、私大阪から有給取って来てるの。土地勘ゼロだしこっちの道そんなに詳しくないから、ナビゲートよろしくね」 2人はホテルの玄関を出た。 「そういえば、名前まだ聞いてなかったわね。私はレナ。あなたは?」 「ユウって言います。やさしいって書いて優」 「蒼井優の優ね。覚えたわ」 レナとユウは、雨の中ダッシュでレンタカー屋へと向かった。 ・・・・・

詩『esperance.』

裸の幹が緑の葉を獲り戻し 目の前の空を確かに覆っていく 高く登った太陽が東の窓から入り込み この世のすべてを優しく照らしていく 私たちが思う以上に世界は 命の鼓動に包まれている 何かが何かを支え合って この大地に立っている 朝の通り雨で出来た小さな水たまり 夕方にはもっと小さくなっていた いくつもの夜を越えて巡っていく 水は魂の体現者かもしれない 悲しみと喜びが幾度も繰り返し 人は歳を積み重ねていく 老いたくないとは思っているが 無駄な足掻きだともわかってる 過行く季節

詩『暗い夜はやけに落ち着く』

暗い夜はやけに落ち着く 視界を遮るカーテンがあるから 暗い夜はやけに落ち着く ひんやりした空気が心地良いから 暗い夜はやけに落ち着く 星が空に綺麗だから 暗い夜はやけに落ち着く 今日あった嫌なことを反芻して帰るから 暗い夜はやけに落ち着く 昔の友達に会いたくなるから 暗い夜はやけに落ち着く 自分を映す姿鏡みたいだから 暗い夜はやけに落ち着く 家から漏れる声がとても楽しそうだから 暗い夜はやけに落ち着く 家から伝わる匂いがうちのと違うから 暗い夜はやけに落ち着く

小説『私たちは何処へ往くのだろうか?』第二話

「ごめんなさい事情は後で説明するので助けてください!!」 彼女はレナに必死に訴えかけてくる。しきりに後ろを気にする彼女。追っ手がいるのか?レナは反射的に彼女の手を取って、公園の茂みに引きずり込んだ。そのまま身を伏せる。直後、追っ手と思われる黒服たちが、隠れていることに気付くことなく明後日の方向に走り去っていった。 しばらくして、茂みから出てくる。二人は雑草が服に張り付いているのを手で払いながらも、お互いに動揺を隠せずにいる。 「…ありがとうございます、急にこんなことに巻き

小説『私たちは何処へ往くのだろうか?』第一話

大阪府大阪市中央区大手前。かつて天下を手中に収めた豊臣秀吉が居所としていた錦城・大阪城が目前にそびえる。 そのほど近くの合同庁舎に、厚生労働省関西厚生局のオフィスがある。一番広い会議室の中、麻薬取締部・通称マトリに所属する警官や刑事の面々が、一堂に集結していた。整然と並ぶ捜査員たち。その中に一人、凛とした表情の女性がいた。白い肌、切れ長の目、きつく結んだ黒髪のポニーテール。育ちの良さを感じる、容姿端麗さである。 「桜木怜奈」 上司と思わしき男が、彼女の名前を呼んだ。

小説『コウベ・タータンチェック・メモリーズ』

「摩耶子~、明日暇?」金曜日、私は職場の同僚に声を掛けられた。「えー、なんで?」「いや、暇だったら梅田にご飯でも行かない?と思って。」「あー・・・」私はスマホの電源を入れると、さっさっと指で画面を撫でる。それとなく操作したように見せると、「ごめん、明日予定あるわ」と答えた。「男?」「ちょっと、そんなわけないでしょ~~~」「男ではないわ。でも、予定あるから!ごめん!じゃあね!」 それだけ言って、私は同僚に背を向ける。たまの休みぐらい、カーストも何も気にせず過ごしたい。だから、

小説『日向と日陰』

昼夜を問わず眠り続けることが、私はよくある。 ステージで上手く活躍できなかった時や、 激しいレッスンで、心と体をすり減らした時や、 心なき声を浴びせられた時。 どんなに追い詰められても、眠っているときだけは、自分がひとりであることを実感できて、安らぐのだ。家に帰って、羽毛布団の中に潜っていると、まるで自分の体がすっぽりと大きな麻袋の中に詰められているような気分になって、このまま誰かに海に沈めてほしくなる。 世界は全て日陰と日向でできている。 沢山の人の注目を集める華々

詩『春と青を繫ぎ合わせた天才』

大画面のなかで誰かが誰かを愛して 誰かと誰かがぶつかり合って泣いて そして誰かが短い生命を廃業していく この季節の感動は大量消費されていく 彼らは彼らなりの人生があるさ 真似することは出来ない特殊な状況下だ 埃被った藍の制服捨てて 堅く馴染んだ礼服身に付けて 憧れに染まった髪は黒に戻して 誰かの期待にはそれなりに応える 僕らの行く先には 希望しか残らないんだ 進む方角は 日が登る前方のみだ 辞書なんて引かない頭の足りない季節を 難しい言葉で例えるのは野暮だと思う ア