大阪カープ
大阪人で自称「カープ」という男と知り合いだったことがある。
「大阪人なのにカープ?」
「あのなあ。オレは広島カープのファンなんや。大阪人が全員タイガースファンや思うなよ💢」
ごもっとも。
カープは施療院を大阪に一つ、東京都会のど真ん中に一つ経営している整体師であり、大阪には別スタッフがいるが東京は一人でやらねばならず基本東京に一人暮らし。二週に一度くらい帰阪する。
患者さんのおじいちゃんおばあちゃんが来ない時は広島カープのゲームをするかギターを弾いているが、そのギターがなんとシャーベルという❗️
もともと同世代で同じようなメタルファン同士である私は悔しくて言った。
「チキショウ写真見せて❗️」
果たして美品であった。イヤホンアンプで練習するという。もとメタルバンドのヴォーカルだったが
「そら関西やもん。Xさんとかみたいなマジなやつちゃうで。なんかコント混じりのやつやった」。
カープは好きに走ったりして体を保つことは仕事上していたが、ランニングの途中で鍵を落として自宅マンションに入れなくなったり、患者さんにお菓子をもらいすぎて「食い切れへん。おまえ食べへんか」と泣きついてきたり、オンナ遊びをしていて毛じらみをうつされたことがあったり、5年も東京に住んでるのに道も電車もよく分かっていないという少し
「ばかなんじゃないのか」
という所はあったが、ノリがよくて話しやすかった。ちなみに手を握ったこともない。ほのかな想い?そんなこと思ってる同士が飲み屋で毛じらみの話したりしないから(一応その辺は小声で話しました)。
で、飲んだ時(カープは酒が飲めない)やごはん屋さんで私が何か注文する時、いつもびっくりされた。
「お…お前。注文早いねんな。なんかの競り市で競り落とすくらい早いで。女の子でそんなん初めて見るわ」
「潰れたけど家業居酒屋だし。飲み歴長いからねえ」
たとえば店員さんに
「ホッピーの白。あとタン、カシラ、てっぽう二本ずつ。てっぽうだけタレで」
とスラスラ言う。あとはゴチャゴチャ言わない。ホッピーが足りなくなってきたら
「すみませんナカお願いします」とか言うだけ。
ごはん屋さんならメニューを見て写真的に頭に入れたらすぐ
「◯◯パスタ、グラスワイン赤、以上で」
終わり。
カープはそれこそ女の子みたいに
「なあパンケーキ食いたないか?」なんて悩む。要らねえよ私甘いの嫌いなんだから。ラクラク言って、結局適当なカフェでそれぞれ甘味と酒でおしゃべり。
思い出す、勤め先の女性たちとのかつての飲み会。なぜ女の子たちはあんなにも悩み、結局全部頼み、全部食う。なぜ甘い飲み物頼んでデザートまで食う。払いは均等だから内心、一人だけ男の気分ではあったりした。あとウワサ話と陰口だとお酒まずくて(そうでない女もいるし、男でもそういう奴はいるが)。よって基本いつも一人飲み。恋する男の人とは別だけどね。
カープみたいな友達だと完全「野郎モード」で飲めるのでラクではあった。
一人で映画を観てきてぼーっとしていたある休日。カープから電話があった。
「いま何してんねや」
「んー映画観てきてぼけーとしてた」
「ヒマやったら今から◯◯駅来れへん?俺買い物したいんや」
「えー。何買うの」
「なんやBody Shopやらあったろ。俺ハンドクリーム欲しいねんな」
「まーたあんたそんなオシャンティなもんを」
「ちゃ、ちゃうねん。俺、肌、弱いねん」
まあ近くだったので行ったが、デパートの中などで案内図を見たのにまるきり別方向へ自信をもって歩き出すカープ。
「待て待て待て待て。今案内図見たばっかでなんで逆方向に歩き出すの」
「え?こっちちゃうんか?」
で、帰るのに駅へ向かおうとするとまたあさっての方向。
ただ、そういうどっか抜けてるカープとは何故か馬が合った。見た目はタッパもあってイケてる感じの五十路だし女も絶えないようだったが、まあ頑張れよと思った。
大阪の女の子の可愛らしさというのは分かる気がする。カープもある意味そんな天然さのある奴だったし、私の職場にそっち出身の女性がいてほんっとに可愛かった。先輩だけど。なんか私と話す時なぜかほほを染めてるし。ダメよ人妻ちゃん?
東男に京女。
たくらみのない一所懸命な関西の天然さんたち。そんなんばかりではなくっても、恋ではなくっても、私はいつもいいなあ、って思ってしまうのだった。