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どうしたの、泣いているの?
泣いていた。
T兄。
なんでいない。
ほかの人たちみたいに、あなたも死んでしまうの?また私を置いて。
写真の中の美しいほほえみ。写真立てはいつもぐしゃぐしゃだ。
私がこうして泣くこと知らないのでしょう。
T兄、いまどうしているの?今日どんなごひんを食べたの?みなさんと仲良くやれてる?
すると、ベッドにT兄が笑っていた。
私は猫に変身して、飛びつく。そしてわあわあなく。どうしてだどうしてだどうしてだ。
だいすきだだいすきだだいすきだ。
ごめんなにゃ子。俺バカだよな。
無事でいてくれるんならいいよ。明日私が死んだとしても。
その覚悟でおよめになった。あなたの猫になった。
どうして俺みたいな男を好きになってくれたんだか。
好きなことが誉だから。あなたのこと。
十六夜。
同じ、見ている。
天体はいつも私たちを直線で繋げる。
帰ってきたら。
残らず聞かせて。
あと、釣り教えて。
シャボン玉して遊んで。覚えた踊りも見て。あなたに考えた振り付け。あと覚えたお料理、食べて欲しい。あと、あと。
あげたいものしか見つからない。
半透明のT兄は笑った。
へんだな、俺もそうなんだよ。あげたいもんしかない。
こんな歳になったのにな。
お花がふるえている。
たくさん笑おうな。
それをまずはあげる。
それでずっとあげる。
私も同じ。同じ。
私の心は満ちていく。
夫の心が満ちていくのも分かる。
私たち、死んでいくんだねえ。
でもまだ、生きているよ。生かされている。
いまこの瞬間。
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