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Sono felice

人口に膾炙しなくていい。


早春の野の花はごま粒のように小さいが、太陽に等しいほどまばゆい。皆きらめきながら、そう言ってくれていた。お前はお前でいいと。


深夜に起きる癖は値千金だ。家人が熟睡してる間に家のことをすべて自分のペースで済ませられ、静かで且つパーティのよう。終わらせて家人の起きるまでのゆとり時間は神聖で、窓辺に行って星を眺める。ばらまかれた宝石のような冬の一等星たちは言う。
お前はお前でいいと。愛した友人たちの声色で。


空間。部屋も世界もこの体も分子の世界でさえ、ほとんどうつろな。そこへ入り込む水、空気、選ぶ美味な何某か。皆言う。
お前はお前でいい。
私たちはお前と何も変わらない。


体、たましい。
ヒトのつくる言葉やなんらかの態度や状況は、たましい、いかんによる。
昼間、教えてくれたのは猫だ。


私の体は思っていたより疲れていたらしい。
ベッドにふと倒れ込み、少し休むつもりが猫に寄られた。おなかのあたりにどさっと体を預けて来、堂々と丸まってまなこを閉じたのを眺めていたら、つられてすとんと眠ってしまった。


眠りは深く、夜眠るよりも深く。
目覚めると猫が金のひとみで見ていた。
ばかだなあ、イオ。
どうして休まないの?
もっとぼくと休もうよ。ここはお日さまが差し込んであたたかいんだし。


それは言語ではない。
花や星の言葉と同じ。
いまの私には、人間の言葉よりよく分かる。
笑って、のびをして、また動き出す。


いま。
この瞬間。
この久遠。

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