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『ひみつのアイプリ』私の愛する「ビジネスから始まる関係性」の話

『ひみつのアイプリ』でとても美しいものを見た。最高以外の言葉が不要と思えるほど美しい関係性を見たのだ。
『ひみつのアイプリ』とは日曜10時より放送しているアニメである。
『ワッチャプリマジ!』放送終了後、ライブやゲームで細々と継続されていたプリティーシリーズの復活後第一作目となる『ひみつのアイプリ』は、「秘密」を物語のキーワードに「アイドルプリンセス=アイプリ」として活動する少女達を描く。
「秘密」という老若男女問わず好奇心を掻き立てられるワードを軸としているためか、親友との約束を反故にしてしまっている現状に負い目を感じてすれ違ったり、自分自身が秘密にしていた気持ちを相手に見透かされていたりと、『ひみつのアイプリ』は要所で受け止めるための体力が必要になる展開を見せてくるのだが、最新話となる17話ではビジネスパートナーから始まった関係性が死を迎え、「一緒にいたい」と涙と共に願った大切なパートナーへと生まれ変わる瞬間が描かれており、その姿がとにかく最&高だったのだ。
17話で中心になるのは三ツ葉アイリと四之宮リンリンである。
アイリとリンリンは二人で「アイスマイリン」というユニットを結成しており、人気も知名度もあるユニットだった。
「だった」というのは最近は人気も頭打ちになり、ライバル達との差もつけられ、後輩である本作の主人公達にも追いつかれているからだ。
「アイリと組めば人気も出る」「リンリンがいれば分析力で人気も急上昇」と仲の良さではなく計算でユニットを組んだ二人。そんな打算的な二人なので、何をやっても伸び悩む状態であることを受け止めて「解散」を決めてしまう……という流れは、開始地点が『ビジネス』と変化球だが流れとしては素直なものだろう。
「私達はアイプリだけで繋がっています」「だから解散したらお終いや」。
ずっとやってきたのに何ともドライな関係性だと思ってしまうが、このまま何でもない関係に戻ってしまう二人を変えたのは、後輩達の「お友達だったらずっと一緒にいたいって思います」という言葉がきっかけだった。
この言葉を聞いた二人は「自分達の関係性は本当にビジネスだけだったのか?」「そこには他に何もなかったのか」を見つめ直す一夜を過ごすのだが、その後の二人が「自分にとってのパートナーとは?アイスマイリンとは?」を出し合うシーンが分かっていたことだが素晴らしかった。
特にアイリに「お腹の中、ぷんぷんだよ!」と詰め寄るリンリンから始まる一連の流れはリンリンを演じる和多田美咲の悲痛な演技もあり、何度見てもその悲しみに涙してしまう。
「こんなはずじゃなかった」
「全部楽しかった」
「ラストライブなんて言わなきゃよかった。本当は止めてほしかった」
何回見てもここの演技は悲痛さといじらしさが共存していて惚れ惚れする。
リンリンに和多田美咲をキャスティングした事に納得しかないほど、素晴らしい演技だったと思う。
監督の一人である藤咲氏によるとリンリンは「計算高く冷静だが、本性は根っから可愛い子」とのことなのだが、このシーンはまさにそういう「本性」の部分が強く感じられる。
まさに「キャラクターの秘密」を理解させて、好きにしてしまう展開と演技といえよう。

最終的にアイスマイリンは引退を撤回し続投することになるのだが(まあゲームでも実装は第三弾からだし)、今までは「様子見」「データを取りたい」と勝負を避けていた二人が真のパートナーへと生まれ変わってこれからどうなっていくのかが楽しみだ。
この他にも「最強の存在が最強である姿を一番近くで見たいので、ユニットを組んでます」という強火の副生徒会長とか、夜空を見上げて「あの頃は見えていたが今は見えなくなった一番星」について想う真実夜チィとか面白くなりそうな要素は多いので、『ひみつのアイプリ』は素晴らしい。
アマゾンプライムでも配信されるようになったのも最高だ。

なおこれは余談だが、アイリとリンリンは『ウマ娘プリティーダービー』ではテイエムオペラオーとメイショウドトウと声優が同じ(加えていうなら審査員の一人はナリタトップロード役の中村カンナ)なので、今年公開された『新時代の扉』のアフターエピソードを見出せるところもあるので、そういう意味でも「見ていてよかった」と個人的には思っている。
そうだよ超「悪いオタク」仕草だよ!

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九条水音
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。