これはアイドル達からバトンを受け取った者の物語『アイカツオンパレード!』
『アイカツオンパレード!』が終わってから一週間が過ぎました。
この一週間は「君のEntrance」をバカみたいに聞きながらその余韻に浸っていたんですが、始まった当初はここまで私の胸に刺さる作品になるとは思ってませんでした。
ただ蓋を開けてみると想像以上に面白かった。自分の予想を超える方向で物語が展開されていき、毎回綺麗にまとめてくる。前半戦の段階で襟を正して見るようになっていまして、最終回は号泣しながらの視聴になってました。
で。
仕事の合間になぜここまで『アイカツオンパレード!』が面白かったのかについて考えていたんですが、やっぱり「クロスオーバー作品としての面白さ」「アフターエピソードとしての面白さ」「アイドル・姫石らきの物語の面白さ」の三つが揃っていたからだと思うんですよね。
クロスオーバー作品としての面白さ
『アイカツオンパレード!』の最も分かりやすい面白さはここでしょう。
『アイカツ!』『アイカツスターズ!』『アイカツフレンズ!』の三作品に登場したアイドル達が一同に介することで互いのアイカツ!を刺激され、新しい輝きが生まれていく。
この面白さは『アイカツオンパレード!』の情報が公開された時から多くのアイカツ!ファンを夢中にさせてきましたし、本編でも異なる世界で尊ばれている概念に触れることで自分のアイカツ!を高めていくアイドル達の姿には面白さしか無かったんですが、二話でいきなり『アイカツフレンズ!』の湊みおと『アイカツスターズ!』の虹野ゆめが「STARDOM!」でライブをして「作品の垣根を超えたステージもあり」ということが認識されてからはもうずっと面白かった。
『誰と誰がライブをするのか』『どの楽曲でライブするのか』だけでも面白いのに、演出でも見事な作品の融合を見せられているので愛着がある人間としては滅茶苦茶面白かった。
この面白さはクロスオーバー物だからこその面白さで、本当に最初から最後まで最高だった点だと思います。
アフターエピソードとしての面白さ
姫石らきを除いて『アイカツオンパレード!』に登場したアイドル達は全員「完結時点での設定で登場」という状態だったのですが、そのおかげで「あのキャラクターのその後」が見ることが出来たのもまた本作の面白いところだと思います。
『アイカツフレンズ!』組は切れ目らしい切れ目がなく参加しているような雰囲気だったのでそこまで大きな変化はありませんでしたが、『アイカツ!』や『アイカツスターズ!』はいくつか大きな仕事をこなしてきたような貫禄があって自分の記憶との違いと、その成長っぷりに驚かされました
個人的に特に良かったのはエルザ・フォルテでしたね。
『アイカツスターズ!』の頃のエルザ・フォルテは「母親からの愛情に飢えている」というキャラクターでしたが、ヴィーナスアークのアイドル達の愛情によってその渇望を満たされた後の『アイカツオンパレード!』のエルザ・フォルテはアイドルとしてはもちろん、指導者としてもパーフェクト。今日も元気にアイカツ!していることに「エルザ様が!元気に!仲間と!アイカツ!してる!」と感動するレベルでした。
姫石らきがアイドルを続けていくための物語
以上の二点はアイカツ!シリーズを見ている人間にとっての面白さでしたが、『アイカツオンパレード!』が『アイカツオンパレード!』という一つの作品として面白かったのは、その二点を全体に散りばめた上で「姫石らきの物語」を貫いたことにあると思います。
『アイカツオンパレード!』は「自分だけのプレミアムレアドレスを制作して、ステージに立ちたい」という夢を持っている姫石らき。そんならきが光るアイカツ!パスによって世界を飛び越えた先で出会ったアイドル達とアイカツ!をすることで、アイドルとして成長していく…………という物語でしたが、何が面白かったかと言うと姫石らきが段階を踏んで成長していくところにあると思います。
例えば姫石らきには「自分にとって都合がいい事が起きると『ラッキー!』と肯定的に捉えてしまう」という悪癖がありましたが、これは『アイカツスターズ!』の世界に迷い込んだ際に如月ツバサに厳しく見咎められ、アイドル達やスタッフが「観客を楽しませるためにどれだけ心を砕いているか」を学んで気をつけるようになりました。
また魚座の星座ドレスに感銘を受け、勝手にデザイン制作をした際にはデザイナーの気持ちについて学びましたし、結果を焦るあまり自分を出す事を忘れてしまった時にはエルザ・フォルテに厳しい言葉をもらいました。アリシア・シャーロットからは「与えられた役目に向き合うこと」も学んでましたよね。
そうした各世界で出会ったアイドル達をメンターとすることで多くのことを学んでいった姫石らきがたどり着いたステージが18話だったと思います。
デザイナーの先輩達から教えてもらった経験。
アイドルの先輩達から学んだ数々の教訓。
そして「プレミアムレアドレスを作りたい」と思った最初のきっかけ。
それら全てをリボンに織り込んで、姫石らきが作り上げた「リルリボンストーリーコーデ」とそのステージは、彼女にとって最初のゴールだったと思います。
君のEntranceで歌われているように「この瞬間のために生まれてきたんだ」だったのではないでしょうか?
最終回のような展開に私は胸を打たれたわけですが、感動しながら「このあと姫石らきは何をやるの?」ということは気になっていました。
姫石らきは夢を叶えてしまった。それも最高と言っていい形で。
彼女がここから先アイドルとして歩み続けるのであれば、彼女には「なぜアイドルをやりたいのか」という理由が、それも「幼い頃からの夢」に匹敵するほどの強く大きな理由が必要でした。
その「アイドルをやりたい理由」が描かれたのが最終話となる25話のエピローグでした。
元へと戻った世界でただ一つだけらきの手元に残ったリルリボンストーリーコーデ。そのコーデを見て姫石らきは、自分が先輩達から受け取ったものを理解します。
「夢のようだったけど、本当にあった。皆と一緒にいた時間。忘れない。勇気と憧れと手渡しの希望をいっぱいもらった。あの日と違う自分がいる。受け取った勇気を力に変えて。ここが、新しいスタートライン!行かなきゃ!光る未来へ!」
これが今の姫石らきが「アイドルをやりたい理由」なのだと思います。
つまり「先輩達から受け取ったものを次の誰かに渡すために、今を精一杯輝かせたい」ということが、今の姫石らきの夢なんですよ。
物語が始まった当初は「自分だけのプレミアムレアドレスが欲しい」とある意味即物的なものを求めていた姫石らきが「誰かに『自分が受け取ってきたもの』を届けたい」とアイドルでしか果たせない事を言えるようになった。
そこに彼女の「アイドルとしての成長」と言いますか。「辿り着きたいステージ」と「そこに至るまでの彼女のアイカツ!」が感じられてグッと来る。「いつかの再会」で「後輩」ではなく「一人のアイドル」として立つ姿を想像してしまうような、姫石らきの新しいスタートラインを見せてくれたから『アイカツオンパレード!』は『アイカツオンパレード!』という作品としてアイカツ!シリーズのどの作品と並べても見劣りしない作品になったのではないでしょうか?
最後に
WEBアニメとして隔週配信されているドリアカ編は、少し時間が戻した物語になっているんですが、時間が戻ったからこそ25話の価値はまた上がるんじゃないかなと思います。
だって、同年代の音城ノエルからもバトンを受け取っている可能性もあるんですよね。楽しみすぎる。
『アイカツオンパレード!』は「ここから始まるスタートライン」として素晴らしい作品でした。
ありがとう、アイカツ! そしてこれからもよろしくね、アイカツ!
追伸。
「トワイライトエトランゼ」、ひょっとしなくても名曲では?
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。