キンプリ

『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』第一話 最短最速最高率で「やりたいこと」まで辿り着かせる新章開幕

4月15日に『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』第一話が放送された。
「『KING OF PRISM』ってなんだろう。見てみるか」と初めて『KING OF PRISM』に触れた人は「なんだこのアニメは……」と圧倒されたことだろうし、『KING OF PRISM』を見たことがある人もやっぱり「なんだこれは……」と圧倒されたことだろうと思う。
なにせこのアニメ、全く無駄がない。始まりから終わりまで全く無駄がなく、「やりたいこと」「見せたいもの」のために最速で最短ルートを駆け抜けるように物語が進行していく。
それでいて遊び心は忘れず、ふんだんに盛り込まれているのだからまさに「息をつく暇がない」と言った作りだ。
時事ネタや他作品のパロディ、過去作のオマージュなどが散りばめられた作りになっていて、「初めての人も、キンプリを愛してくれた人達も一話から確実に夢中にしてやる!」という菱田正和監督の強い意志を感じさせる。
ここまで密度が高く、そして進行が速いと「訳がわからない」「全くついていけない」となりそうなものだが、菱田正和監督の持ち味である「作品情報の優先順位の付け方の異常なまでの上手さ」が発揮された「ギリギリついていける」というギリギリのところをついている。そのため、本作は一話だけでこれだけの情報が詰め込まれているにも関わらず「氷室聖率いるエーデルローズと法月総帥率いるシュワルツローズのライバル校同士のプリズムショー対決」「兄弟の確執」という情報を理解することができ、「なるほど『-Shiny Seven Stars-』は聖と仁の代理戦争的にライバル校同士の対決の様子が描かれるのだな」ということが分かる。
これだけで「恐ろしいまでによく出来ている……」と唸らされるが、いきなり最終決戦直前へと時間を飛ばしたのはもう「凄い」の一言に尽きる。
詳細は二話で明らかになるため今回は伏せておくが、これをやったことでこの物語は「必要なものだけでシナリオを構成する」ということに成功した。余計なものは一つもない。これから描かれる11話に登場する全てのものがこの物語に必要なものになった。
おそらくは1クール12話という短い時間の中で、菱田監督自身の得意とする4クールアニメのやり方を展開するために生み出された脚本技法なのだろう。
しかしそれは「何が必要で何が不必要なのかをシーンどころかカットレベルで把握していないと出来ない」こと。
ここでも「菱田正和でなければ生まれ得ない作品」であることがよく分かるだろう。監督・脚本・シリーズ構成・演出・プリズムショー演出・制作進行。全てに関わった経験がある人間が監督を努めているからこそ、『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』はここまで「最速で最短ルートを最高の効率で駆け抜ける」作品としてスタートを切ることが出来たのだ。

それにしても。
一話を見るたびに「この作品は恐ろしいな」と思う。
自分は長年応援してきた人間の一人だが、今回のアバンタイトルを見ただけで『PRIDE the HERO』から今日までの時間で生まれていた自身の慢心を炙り出されてしまった。「TVシリーズになったからといって生ぬるいことはしませんよ。まさかぬるい事をするなんて、思ってませんよね?」と、心の中にはびこっていた慢心にナイフを突き立てられたような気分だった。
甘えていた。鈍っていた。
こいつらを相手に本気で構えないのは「ヤバイ」……!最悪「死ぬ」……!
そんな大切なことを完全に忘れていたなんて。
そのことを思い出した自分はそのまま突き立てられたナイフの柄を握り、自身の心から慢心をえぐり取り、覚悟を固めて二話三話と続けて見てきたわけだが、今回一話をテレビで拝見して確信した。
やはりあの時感じた「自身の慢心を今この瞬間えぐり取らないと死ぬ」は何も間違いではなかった。生きて自分の足で映画館を出るためにはあのタイミングしかなかったのだ。
凄い作品である。ここまでのものを「一話」として出してくるなんて、思いもしなかった。
しかしこれはまだ「最初の一発」にすぎない。ここから先はもっともっと凄いものが次々と描かれていく。
そしてその「凄いもの」の一つが来週放送の第二話で描かれる。
歌舞伎役者の家に生まれた太刀花ユキノジョウにスポットを当てた第二話を見れば、『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』が「なぜ凄いのか」「どう凄いのか」が分かることだろう。
一話を見て「何が何だか」と思った人もいると思うが、出来れば二話まで見て欲しい。この二話を見ればきっと『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』が理解できるはずだ。

それはそれとして「ええ……長年ファンをやってきた人間ですら身構えるほどの作品なの……」と思っている人もいると思いますが、長年ファンをやっているからこそ『一瞬でも気を抜いたら、死ぬ……!』となっているだけです。
「よく分からん」という人はもう本当に気楽に見てください。「推せる子が一人はいるといいな!」ぐらいの軽い気持ちで結構です。
ただ「推せる子」と出会えたらその子の当番回まで見てください。
九話まで既に見ている身として言いますが、どのキャラクターにも見せ場があって滅茶苦茶面白いですし、そのドラマに魅せられて今までピンと来てこなかったキャラクターですら応援したくなったりします。
なので肩肘張らず、軽率に見ていただけると嬉しいです。


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九条水音
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。