『BIRDIE WING』は「自分の全てを賭けてあいつに勝ちたい」という二人の少女の決闘を描いた物語だ
2022年4月開始のアニメは面白い作品が多いですね。
ジャンプ+看板作品である『SPY×FAMILY』とか、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』とかありますし、『パリピ孔明』なんかもあるんですが、その中でも個人的に気に入ったのが『BIRDIE WING』でした。
「『ジュエルペットサンシャイン』の稲垣隆行監督が『機動戦士ガンダム00』『僕のヒーローアカデミア』の脚本担当だった黒田洋介と組んで制作した女子ゴルフ物」「超人ゴルフ物にギリギリならないぐらいのリアリティ」ぐらいの情報で見始めたのですが、滅茶苦茶面白くて!
毎回しっかりと楽しませてくれる作品だったので、ちょっとだけ書かせてください。
心の中でライバルと真剣勝負する
三話まで見た『BIRDIE WING』の印象は「イヴ・アレオンと天鷲葵、二人のゴルフプレイヤーによる魂を賭けた真剣勝負の物語」でした。「ゴルフ」という直接対決ではなく、最終的なスコアで勝敗を決めるスポーツを題材にしているからこそ「あいつには負けたくない」「あいつに勝ちたい」という思いが剥き出しになっていて、その剥き出しの勝利への渇望が物語を熱くさせている。
主人公のイヴ・アレオンは賭けゴルフで生計を立てている。賭けゴルフだと一対一なので、イヴは「最終的なスコアで勝つこと」よりも「相手の心を屈服させて勝負から降りさせる」という攻撃的なゴルフをプレイスタイルとしている。
そんな「相手の心を屈服させる(=勝つ)ゴルフ」をするイヴに対して、ライバルとなる天鷲葵は「楽しむことを第一にするゴルフ」をしている。勝つためじゃない。楽しむためにゴルフをしている。
そんな誰が相手でも楽しんで、真正面から相手を超えていくことから天鷲葵は「無邪気な暴君」と呼ばれているわけですが、その二つ名も納得がいくほど「相手の心が折れるゴルフ」なんですね。
つまり、『BIRDIE WING』で描かれているのは「相手の心を屈服させるゴルフVS真面目に楽しむ(結果的に相手が自滅する)ゴルフ」という、二人のゴルフプレイヤーのプレイスタイル(生き方と言ってもいい)の戦いをやっているのですが、ゴルフは「相手プレイヤーを倒せば良い」と言うスポーツではないところがまた面白い。
「あいつならこうする」「あの人ならきっと何とかする」と心のなかで思い描き、それに負けない戦い方を強いられる。
そこにあるのは相手に対する信頼だし、ライバルとしての対抗心だし、己のプレイスタイルを貫き通すために強く自分を持つための戦い。
究極的には「自分との戦い」になるゴルフが題材だからこそ「ライバルの存在が自分をより強く持つことが出来る。それによって生き方がより強固なものになる」という物語は滅茶苦茶面白いんですよ。
ちょっと黒田洋介の代表作の一つでもある『スクライド』チックなのも良いですね。
超人ゴルフのギリギリを攻める
またゴルフ描写も個人的には面白いところですね。
イヴと葵。異なるプレイスタイルを持つ二人だからこそ、ゴルフの演出も全く別のアプローチを行った映像に仕立てており、視覚的にも「この二人は違うタイプのプレイヤーなんだな」ということが分かるようにしている。
具体的にはイヴは超人ゴルフにかなり寄せた演出なんですよ。
「レインボー・バレットのイヴ」という異名もそうですけど、「直撃のブルーバレット」などの必殺技もある。そうした必殺技の演出ではゴルフクラブの軌跡や弾道に色を載せていて「普通のショットとは違う」と言うことが一発で分かる。
またイヴの思いに答えるような演出がされているのも特徴的ですね。
全体的に「相手を屈服させることを主眼に置く、賭けゴルフの出身者」と言う設定に因んだ外連味のある演出になっている。
そんなイヴに対して天鷲葵は必殺技のようなものはありません。
独自のショットみたいなものはないし、変態的なゴルフクラブを持ち出してくることもない。強いて言うならイヴとの初顔合わせの際に一打目で使ったゴルフクラブぐらいですが、そこまで凄いものではないように演出されています(秘密兵器をここで使うのか?ぐらい)。
ただ葵のゴルフには「凄いことをやっているんだぞ!」と言うリアクションを多く盛り込まれている。
「上手くいけば強いけど上手くいくわけがない」「このコースはここが難易度を上げている」ということを丁寧に説明して、それを難なくクリアする葵に「スゲェ!」と驚く。そういうリアクションを積み上げることで「通常のショットが怪物級に凄い」「どんなゴルフでも楽しんでるから強い」という天鷲葵のキャラも立っている。
この二人を主軸にしている作品なので、両者の違いが際立つほど面白いと思うんですが、今のところは上手く行ってるかなと思います。
結びに
個人的な話をしますが、広瀬香美の主題歌も良いですね。
「アングラ超人ゴルフ物の外連味」と「二人の女子プレイヤーの青春の爽やかさ」の両方が感じさせつつ、どちらかといえば後者寄りの作品であることを明瞭にしているのは広瀬香美の歌があってこそではないかと。
あと単純に力強い歌声が良いですね。最初の音から作品の世界に引き込んでくれるのは強いですよ!
そんなわけでこれから四話を見るんですが、四話はなんかアングラ超人ゴルフ物の気配がする予告でもうすでに面白くなってきました
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。