『劇場版アイカツプラネット!』『アイカツ!10th STORY』で見た「今だからこそのアイカツ!」
『劇場版アイカツプラネット!&アイカツ!10th STORY』を見てきました。
どちらも素晴らしい出来で、『劇場版アイカツプラネット!』はTVシリーズから少し後を舞台にしたアフターエピソードをボーナストラックのような面白さで飾って楽しませる作品で、『アイカツ!10th STORY』は改めて『アイカツ!』の最初の三人である星宮いちご・霧矢あおい・紫吹蘭に物語を戻して「卒業した後、彼女達はどうなるのだろう」を描いており、短い時間ながらも内容は詰まっていてとてもよかったです。
何より良かったのは『劇場版アイカツプラネット!』と『アイカツ!10th STORY』が着想は同じところから始まっているような事で、アプローチの違いでこういう形に落ち着いていることでしょうか。
「あれから少し時間が経った今、アイカツ!で何が出来るのだろう」という意味では『劇場版アイカツプラネット!』も『アイカツ!10th STORY』も同じ。血を分けた姉妹のような作品なんですよ。
感謝のアイカツプラネット!
『劇場版アイカツプラネット!』を一言で表すと「舞桜/ハナが企画したアイカツプラネット!感謝祭を見る話」になるでしょう。
TVシリーズからしばらく経って、皆アイドルとしての仕事も増えて忙しくなり、なかなか一緒に仕事をすることが出来ない。でもアイドルとして走り続けることが出来たのは仲間とそしてファンがいたから。その感謝を伝えるためにイベントを企画した舞桜/ハナは司会/進行役として、皆が楽しくなれるよう盛り上げていく!という筋書きなんですが、この作品で描かれている「あれから少し時間が経った今、アイカツ!で何が出来るのだろう」への解答は「感謝」なんですよ。全編に「感謝」が溢れていて、思わず「こちらこそありがとう」と言いたくなるほど感謝に溢れている。それが凄かった。
そもそも『アイカツプラネット!』って放送開始前から映画が出来るような企画はされてなかったと思うんですよ。
『アイカツオンパレード!』から結構な間隔を開けた新作だったし、ドラマ×アニメと言う枠組みがまず挑戦的だったしで「とにかく今できることを全力でやろう」的な作り方をしている。
にも関わらず映画が制作されたのはひとえにファンの応援があったからこそでしょう。そんなファンの応援に「まずは感謝、次に感謝、最後に感謝」を映像にするとこうなるのかなと思いました。
本作で開催されるイベントが「アイカツプラネット!感謝祭」であって「スターリープラネット感謝祭」ではないのもそういうことなんでしょうね。このあたりは実写の「現実とどこか地続きなような気がしてしまう」という部分と上手く混ざっていて凄くよかった。
それだけに「終わりたくない!」という舞桜/ハナの叫びに本当に「私も終わってほしくない。アイカツプラネット!の新作も見たい」という気持ちにさせられたんですが、アレを狙ってやってるのだとすれば大したものだなと。そんなことを思いました。
シリーズのファン向けのファンサービスとして斧とか崖登りとか学園長の声をしたドレシアとか面白かったんですが、本当にそういうファンサービスの「分かるやつには分かる」さり気なさも良かったですね。
個人的には撮影の裏側を見せたスタッフロールも「いつも感謝……!」と言う思いを引き出させる良いトリガーに見えましたね。
卒業のアイカツ!
一方、『アイカツ!10th STORY』は「あれから少し時間が経った今、アイカツ!で何が出来るのだろう」に「星宮いちご達がスターライト学園を卒業するけど、彼女達は思い悩みながら自分達の未来を描き出す」という物語で見せてきて、まず「開始から10年」と言う年月が過ぎたからこその重みを感じました。
『アイカツ!』における「卒業」って一般的な学業における「卒業」とはまた違うんですよ。普通の高校生物なら「卒業」は「別れと旅立ち」になるんですが、『アイカツ!』の場合は一番やりたいアイドルのお仕事は卒業しても続いていくし、アイドルであり続ける限り仕事などで会うこともある。だから「卒業」といっても「別れと旅立ち」にはならない。これからも生きていくアイドル活動の中の一つの区切りにしかならないんです。
だからこそ、その「区切り」で「自分はどう生きたいのか」「どう生きれば私らしく生きていられるのか」に思い悩む姿が今作で一番面白いんですよ。「これからの私のプロデュース」に真剣になる星宮いちご達と一緒に「どうするんだろう」と考え、悩み、彼女達の出した答えが面白く、そうなれることを応援したい気持ちにさせられる。
地味ながら「アイドルのセカンドキャリア」みたいなところにも踏み込んでいる話ではあるんですが、こうしたことを既にやっている事例として星宮りんご達がいることで「みんな、そうやって大人になっていく」と味わい深くさせていたのも良かったですね。
そして半年後に本当に新作があるのも凄いことだと思います。
見たのが初日初回ではなかったのでサプライズではなかったんですが、「卒業する半年後にライブやる!頑張る!」で結んだ物語から大体半年後に本当に新作があるのって最高じゃないですか?
それを今出来ることとしてやってきた事、ファンとしては嬉しかったですし、もっともっと未来向きの今を半年後に見せたいな!ということを誓うぐらい良い展開だと思いました。ライブもありますしね。
結びに
本作がファンムービーであることは間違いありません。
TVシリーズを全く見ていなくてもそれなりに楽しめるようには設計されていますが、やはりTVシリーズを見ていればこそ大きく響く。そういう作品であることは紛れもない事実でしょう。
しかしながら両作ともファンムービーとしての振り切り方には凄まじい。
『アイカツプラネット!』で描かれる感謝はTVシリーズを踏まえるからこそ面白いものですし、『アイカツ! 10th STORY』についてもTVシリーズでマスカレードの二人を見ていればこそ「自分らしく自分を幸せにするセルフプロデュースは色々あっていい」の具体例として機能している。
そういう面白さが本作にはたくさん詰め込まれている。ファンとしては満足出来る映画でした。
「ファンのために制作された映画」と言う意味でも「らしい」と感じる本作、出来れば映画館で。そしてアイカツ!が好きないつもの友達と一緒に見れたら幸せだなと思いますね。
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。