『科捜研の女』について語らせてほしい

2月10日放送の『科捜研の女』に、『ウマ娘』のサクラバクシンオー役で知られる声優の三澤紗千香さんが出演されるという発表がありました。

三澤紗千香さんファンの友人から「三澤さんは科捜研の女ガチ勢」と言う話は聞いておりましたが、そんなガチ勢である三澤紗千香さんの出演は放送日に『科捜研の女』をつい見てしまう人間としてはとても嬉しい限りです。楽しみですね。
そして今回の発表を受けて思い出したのですが、『科捜研の女』について全く話をしていないなと。映画もちゃんと見に行くぐらい好きなのに、こういう話をした記憶がないな!と!そう思ったのです。
せっかく『科捜研の女』に注目が集まっていますし、こういうことでも無ければまず『科捜研の女』の話をすることもないでしょうから、「私にとっての『科捜研の女』」について少し書いておきたいと思います。

『科捜研の女』とは榊マリコの面白さ

私にとって『科捜研の女』の魅力・面白さとは、突き詰めて言えば「榊マリコ」になります。榊マリコがいなければ私はここまで『科捜研の女』を見ることはなかったでしょう。三澤さんの出演に嬉しくなってわざわざ筆を執ることはなかったと思います。
沢口靖子が1999年から演じている榊マリコですが、「一体何が面白いのか」というと、彼女は「真実を追求したい」という気持ちに忠実なんですね。
『科捜研の女』はミステリードラマですし榊マリコは京都府警科学捜査研究所の所属なので毎回様々な事件が発生するのですが、榊マリコの行動理由は「犯人を突き止めたい」とか「犯罪を止めたい」とかではないんです。「ただ真実が知りたい」。本当にそれだけなんです。
その真相究明への熱意は並々ならぬものがあるのですが、そのマリコの熱意に振り回されるのはいつも周囲の人間達……。真相究明に必要とあれば高額なものですら経費で購入してしまうし、人手が足りないと分かったら拾の父親だろうが平気で使う。映画では警察庁刑事指導連絡室長になっていた元夫ですら真相究明に協力させていましたからね。
ここまで読んだ方には何となく分かると思いますが、『科捜研の女』とはつまるところ「真相を究明したい榊マリコと、そのマリコに振り回される人達の話」なんです。
その「マリコとマリコに振り回される仲間達」の描写が、毎回滅茶苦茶面白いから『科捜研の女』は面白いんですよ!むしろマリコの無茶振りがなければ『科捜研の女』ではない!とまで言い切ってもいいと思います。

直近の10話とか「自宅謹慎中の容疑者が毎日どこかに出かけていく→どこに行っているのか家人ですら知らない→どうする?」となった後、「かくし芸は独特の動きをしている→その動作をパターン化して街中のカメラの映像分析にかければいい」まで辿り着くんですが、その後にマリコがやったのは「容疑者は五種類のかくし芸をやっていた→私達も五人いる→五人でかくし芸を一人一つ覚えてパターン化しましょう」ですからね。
「何いってんだマリコは」とテレビの前で思いましたよ。

科学と倫理

そんな『科捜研の女』ですが、真面目なところは真面目なんですよね。
まあ犯罪に立ち向かう人達を描いていますし、殺人事件も扱う作品なので当然といえば当然なのですが、そんな真面目な要素の中でも「他人を傷つけることはどんなことがあっても許されることではない」は重要なところかなと思います。そして、それを体現する人間として「榊マリコ」が用意されている。
前述したように、榊マリコは真相究明のためならなりふり構わないキャラクターなのですが、彼女は「科学技術で誰かが傷つけられること」を決してよしとはしません。
最先端の技術で、この技術がゆくゆくは多くの人を救うことになったとしても、今誰かを傷つけるための手段として使われているのなら、その事実を決して許しません。加害者側にやむを得ない事情があったとしても「こういう使い方をされるべきではなかった」と、こうなってしまったことを悔やむ人間なのです。
そういう「科学者として、技術者としての倫理」を強く自覚している点こそが榊マリコのヒロイックな魅力なんじゃないかなと思います。
普段はあれだけやりたい放題なのに、その技術や知識を自分が他人を傷つけるための道具としては絶対に使わない。
その「いざとなっても一線を踏み越えない安心感」と「普段のやりたい放題さ加減」が同居している点が榊マリコの魅力ですし、『科捜研の女』と言う作品の「安心できる面白さ」に繋がってるんだと思っております。
まあ「マリコが何を言い出すのか」という危険さはあるんですけども。

互いに任せられるところは任せる

榊マリコの話ばかりしてきましたが、榊マリコの仲間──つまり科学捜査研究所のメンバーやレギュラーとして登場する警察官達も本作の魅力の一つですね。
榊マリコの無茶振りにつきあわされている人達ではあるんですけど、榊マリコの「真相を究明したい」という熱意を信頼しているし、榊マリコも彼らが「その領域でのプロフェッショナル」であることを信頼しているので、互いの結果がどのようなものであったとしても建設的な議論へと発展する。
科学捜査研究所、及びレギュラーキャラクター全員が共有している「背中を預け合える仲間」という意識があるからこその「検査結果を元にした建設的な議論」は『科捜研の女』の「毎回ある見どころの一つ」かなと思います。
個人的には榊マリコと内藤剛志演じる刑事・土門薫の戦友めいた絆も大好きなんですが、あの二人の関係性はちょっと言語化しにくいですね。でも好き。映画でも取り上げられてて滅茶苦茶好きでした。

最後に

というわけで長々と書いてきましたが、『科捜研の女』ってやっぱり面白いんですよ。長く続いているシリーズだけあって、キャラクターも立っていて脚本の構造もしっかりとして安定して面白い。
これは長く続けてきているからこそ「何を目当てに見られているか」の分析がしっかりしているからこそだと思うんですが、その「ファンの求めているもの」を提供しつつ時事ネタなどしっかりと時代性を活かした話も入れてくるから全く見飽きない。似たような話はあっても、「同じ話」はないんですよね。
昨年公開された映画も「科捜研の女を見に来たら、いつもより少しリッチな科捜研の女が見れる」と言う作品になっていて凄くよかった。こういう「映画館まで見に来てくれた人達が満足できるもの」をスッと出せるのは凄いことだと思います。
そんなわけで。皆も見よう、『科捜研の女』!
今週は「デジタル舞妓殺人事件」だぞ!思わずオウム返ししたくなるパワーワードが飛び出すドラマは『科捜研の女』と『警視庁・捜査一課長』だけ!




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九条水音
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。