私にとって『ファイナルファンタジー16』は「究極の幻想」と呼べる最高の作品だった
『ファイナルファンタジー16』をクリアしました。
発売日からクリアまでは仕事を抑え、空き時間はほぼ全て『FF16』に捧げるつもりでプレイしていましたが、もう何も言うことがありません。
滅茶苦茶面白かったです。
「<ゲームでしか出来ない物語体験>ってこういう事を言うんだな」ということを改めて教えられましたし、「ゲームはここまで出来る」ということを噛みしめることが出来た作品でした。
まだ高難易度モードである「ファイナルファンタジーチャレンジ」とか残ってるんですが、一旦現時点での気持ちを書き出しております。
外連味たっぷりアクション×操作の分かりやすさ=快楽
『FF16』をクリアまでプレイしていて感じたのは「分かりやすい操作で、外連味たっぷりなアクションが出来ると、こんなにも気持ちいいんだ」ということでした。
『FF16』はとにかく操作が分かりやすい。
攻撃ボタンを押せば攻撃するし、回避ボタンを押せば回避するし、魔法を撃ちたかったら魔法ボタンを押せば良い。それらが入力してすぐにクライヴのアクションとして行われているし、召喚獣ごとの固有アクションである「フィード」も殆どの状況でいつでも使用できる。
召喚獣の力を一部使用したアビリティについても「アビリティボタンを押しながら二種類のボタンのどちらかを入力する」というシンプル極まりないものなので、ボタンを適当に入力していてもクライヴはそれなりに格好いいアクションを見せてくれるんですよ!
これに派手なエフェクトと当たった瞬間に最高に気持ちよくなれる効果音が加わるので、最初から最後までもう最高に楽しい。楽しくない瞬間が本当に無い。全てのバトルで楽しいアクションが出来るゲームでした。
それでいて召喚獣やアビリティの組み合わせで、自分だけのコンボルートの構築を考える事ができるのも良かったですね。
「使いやすい召喚獣やアビリティ」は確かにあるんですけど、そこに拘る必要はないというか。自分なりのコンボルートを構築し、それで魅せるプレイに走れるので、そこで工夫出来るのは良かったと思います。
貯めて解放する面白さ
そんなアクションゲームとして最高に気持ちいいものがある『FF16』ですけど、強敵やボス戦では雑魚戦とはまた違った「隙を作り出し、そこに全火力を解放する面白さ」が加わってるのがまた最高なんですよ。
強敵やリスキーモブと呼ばれる賞金首、シナリオボスには「ウィルゲージ」という特殊なゲージが設定されていて、このゲージを削り切る事で敵は「テイクダウン」という状態になって一定時間行動不能になる。
このテイクダウン中は敵が受けるダメージが上昇するので、強敵やボス戦では「ウィルゲージを何とかして削ってテイクダウンさせ、その隙に全火力を叩き込む」という戦い方が定石になっていくんですけど、これがまあ楽しい!
雑魚戦は「高火力を押し付けていく面白さ」なら、ボス戦は「テイクダウンで作り出した僅かな時間に全火力を解放する面白さ」なので訴えかけてくる面白さの性質が全然違う。
アビリティのクールタイムも計算に入れながら、「どうやってテイクダウンさせ、どのアビリティで相手のHPを削っていくか」を作っていくのがまず楽しい。それにテイクダウンから復帰すると「テイクダウン中に与えた総ダメージ量」が表示されるんですけど、上手く回せばその総ダメージ量が大きくなっていくのもたまらない。でかい数字は精神に効くので、立ち回りを効率化するごとにデカくなっていく数字に興奮します。
これにリミットゲージを使い切るまで攻撃力を引き上げる状態になる「半顕現」の要素も加わることで「貯めて、解放する」という気持ちよさが本当にどこでも体験できるのは良かったです。
なおボス戦は大体全部面白いんですけど、終盤になればなるほど楽しい物が増えていくのでそこも最高でした。ラスボス戦はベタだけど「ファイナルファンタジー!」ってパワーがあってよかったです。
面白すぎて笑いが止まらない召喚獣合戦
そして本作のウリである召喚獣合戦なんですが、まず「全部違うバトル」で、「一つとして同じバトルが存在しない」のはちょっとどうかしてますね。
そして全部面白い。面白くない召喚獣合戦は一つもなかったし、全部の召喚獣合戦が最高の体験だったと言えるほど、飽きなかったし最高に楽しかった。基本設計は普段のバトルを簡素にして、ダメージの桁数が二桁ぐらい上げているぐらいなのに、ここまで楽しいものが出来るんだなと素直に感心しました。
それでいて毎回「前回より今回の方が面白い」と言えるものを出してくるのは単純に凄い。「これより面白い召喚獣合戦、もうないでしょ」と思っていたら確実にそれを超えてくるので、「次の召喚獣合戦はいつだよ」がプレイする意欲になるぐらい召喚獣合戦が最高に楽しかったです。なんかもうずっと笑ってました。面白すぎて。
特に良かったのは、おそらく大多数の人がそうだと思いますがバハムート戦でしょうか。
「クライマックスで使うやつでしょそれ!」と思う演出がバハムート戦だけでいくつも詰め込まれていて、一つ使用されるたびに映像のテンションも上がっていくんですけど、そこにシナリオも全力で載せてきているので、プレイしているこちらのテンションも滅茶苦茶上がっていくんですよ。
「嘘でしょ……」→「そこまでやって大丈夫なの!?」→「もうここまでやられたら笑うしかないでしょ」の順番にテンションが上昇した結果、バハムート戦の中盤以降はずっと笑ってました。
この体験は『FF16』でしか味わえないものだったので、正直これだけでも十分すぎるぐらいやる価値があると思いますね。
人が人として生きられる世界
総合的に見ても、ゲーム部分に関してはほぼ満点と言って良い作品だと思うし、アクションゲームとしての面白さや召喚獣合戦の楽しさがゲームを進行させるための原動力として機能している点から見ても「よく出来ているゲーム」だと思うんですが、シナリオについてはどうかというと「良かった」と思います。ただ真面目すぎるのでそこがどうかなという気は少し。
『FF16』ってクリスタル無しで魔法が使える「ベアラー」と言う人達が虐げられている世界なんですよ。彼らは異種族というわけではなく人間の中から一定確率で生まれてくる存在なんですが、その扱いは良くて奴隷、悪くて使い捨ての道具でまともに人間扱いされていない。
「子供が生まれたけどベアラーだったから処分してもらったわ」みたいな会話が日常会話レベルで登場しているといえばそのヤバさは理解できると思いますが、とにかく「ベアラーというだけで人間としてはまず扱われない」。
クライヴ達はそんなベアラー達を解放し、「人が人として生きられる世界」を目指して活動しているんですが、その戦いの中で見せられるのは「生きていくことの欲深さと罪深さ」なんですよ。
そしてその罪深さと欲深さを噛みしめる度に「それでもお前はこの世界と人々を肯定するのか」と問われるんですが、最終的な落としどころとして「確かにお前の言う通りなんだけど、でも今の自分は、この世界とこの世界に暮らす人々がいたからなので、俺は彼らを愛してこれからも一緒にやっていきたい」としたのはまあ良かったんじゃないでしょうか。
人と人とのつながりなんて大体の場合において面倒くさいことなんですけど、その関係性の面倒臭さから逃げたら「自分であることの意味」ってないですからね。
「その面倒臭さも含めて、何とかやっていきますよ」とした結論は、今回の『FF16』開発が『FF14』所属者だから出来ることなのかもしれません。
あとサブクエストなんですけど、メインシナリオでは描ききれなかった部分を補完しているところがあって、「『生きる』ってことはエゴの押し付け合いという面倒臭さの極地を生むものである」という部分も地味にサブクエストの方が強く出てましたね。
まあ終盤にガッと解禁された要素は大体「それ本編に入らなかったの!?」ってなる物が多かったんですが。ジルとかジルとかジルとか……。
トルガル周りは本当に良かった。イヌ好きは必見……と言いたいが、このゲームは軍用犬が出てくるので犬を倒さないと進められないゲームだった。
総論
『FF16』って真面目なゲームだと思うんですよ。
あらゆる要素が「このゲームをプレイした人間全てに最後まで楽しんでもらおう」とする配慮がされていて、少しでも引っ掛かりそうな場所は可能な限り排除されている。
ステルス要素が入りそうな箇所とかチェイスシーンになりそうな箇所とかあるんですけど、そこもステルスにはならないしチェイスシーンにはならない。演出的にもあってもよさそうなのに。
でもそうなってないのは「そこで躓く人もいるかもしれない」という配慮だと思うんですが、ただ安易に外すのではなく「外すとして、どういう形にするのが望ましいのか」まで検討されてそうなのがまた凄い。
そういうスタッフの誠実さや真面目さが随所から感じられるゲームってなかなか無いものなので、それだけでもプレイしてよかったと感じてます。
それを抜きにしても滅茶苦茶面白かったですけどね!
最初から最後まで、「ゲーム」を楽しませていただきました。
まさしく「究極の幻想」と呼ぶに相応しい作品で、FFシリーズの中でも一番好きかもしれない。
最高でした。
おまけ:米津玄師は禁止カード
そろそろエンディングに入るか入らないかぐらいで米津玄師の主題歌を流すのは禁止にした方が良いと思うんですよ。
『アンナチュラル』の「Lemon」とか『MIU404』の「感電」とかもそうなんですけど、作品の余韻に浸ってたら歌詞とメロディで的確に心を刺してきてくるじゃないですか。
ああいうのを体験するたびに「ずるいなぁ」と苦笑いしていたんですが、『FF16』のテーマソングになっている「月を見ていた」は、歌詞もメロディも『FF16』のためにしか存在し得ない楽曲、かつベストなタイミングで流れ始めて、楽曲が流れている間に描かれたこと全てを最も印象深いシーンに変えてくる。
これはもう負けましたね。
映像と音楽に心を持っていかれて涙が溢れた体験、久しぶりすぎて動揺しました。ありがとう米津玄師(もちろん楽曲を購入した)。