『ワッチャプリマジ!』は「本気でやるから楽しく、真剣だから悔しい」を描く
1月16日放送の14話から『ワッチャプリマジ!』も第二クールに突入しました。
第二クールで描かれるのは合宿編ということで、第14話からは皇あまねが本格的に登場。「宝塚!」な熱いライブと、「秘すれば花」と隠していた自分の魅力を解き放つ皇あまねが美しく、今回の合宿編がどうなるのか気になるところですが、本格的に合宿編が始まる前に「1クール目は何を描いていたのか」を振り返っていきたいと思います。
本気で生きている人はカッコいい
『ワッチャプリマジ!』のテーマとは何でしょうか。
プリティーリズムは「なりたい自分に」、『プリパラ』は「み~んな友達!み~んなアイドル!」、『キラッとプリ☆チャン』は「やってみなくちゃ分からない!分からなかったらやってみよう!」をテーマに一年間展開してきたのですが、『ワッチャプリマジ!』は一年を通して何を描こうとしているのでしょうか。
私が思うに、『ワッチャプリマジ!』のテーマは「本気で生きている人はカッコいい」なんじゃないかと思います。つまり「カッコいい本気の生き方をしよう」、生き様の話ですね。
この辺りはプリマジスタ達の姿でしっかり描かれているかなと思います。
ジェニファーに真剣勝負で勝って高みへと至りたい弥生ひなは、生来の面倒見の良さもありますが何より本気でプリマジに励む姿が人を惹き付けていますし、心愛れもんは自分を応援してくれる人達に本気で感謝を伝えるためにプリマジに挑戦することを選びました。
何より一話で描かれた陽比野まつりがまさにそうでしたよね。
まつりは「プリマジの事は大好き!だけどデビューには少し躊躇してしまう」という子でした。これは「プリマジがしたい」は本気でも、「プリマジでこうしたいあれがしたい」ということがなかったからですが、「大魔法使いになる!」という大きな夢を語るみゃむと出会い、「夢がない」ということを指摘されたまつりは、「憧れのジェニファーみたいにカッコよく」を胸にプリマジに挑戦。ドンドンと変わっていきます。
まつりの「憧れのジェニファーみたいにカッコよく」は、みゃむのような具体的なものではありませんが、「カッコよく生きたい」を本気でやっているまつりの姿はカッコよく、1クール経ってテーマにピッタリのキャラクターに育ってきたように思います。
本気にも千差万別
また「本気にも千差万別、人それぞれのやり方があって、それらは優劣をつけられるものではない」というスタンスを貫いているのも本作の特徴と言えましょう。
弥生ひなのように己を磨き上げて真正面からステージに挑むタイプもいれば、皇あまねのように「秘すれば花」と本来の魅力を普段は封じ込める事で本気を見せるタイプもいる。
その方向の極地とも言えるのが甘瓜みるきでしょう。
「自分は可愛い」ということを世界に証明し続けるためにプリマジを行っているみるきですが、彼女のやり方は「自分がチャンスを得るためならどんな手段でも取る。それが相手を蹴落とすようなことであっても」「『勝てば100でも負ければ0』と『絶対に勝てる10』なら絶対に勝てる10を何度も取る」なんですね。
みるきのやり方は正攻法ではないし、他人を陥れることを許容しているところもあるので決して褒められたやり方ではないんですが、「本気でやる以上、そういうやり方をする人もいるでしょう」と半ば黙認されているし、「勝てる10を拾い続ける戦い」も「侮れないやり方」として肯定されている。
こういう「本気のやり方にも色々ある」という描き方をするのはとてもユニークなんですが、もう一つ付け加えておくとプリマジ以外でも「本気でやっている人間はカッコいい」を描いている点は大事なところですね。
まつりの幼馴染の伊吹橙真がそうなのですが、彼は飴職人を目指していて、その本気で夢を追いかけている姿はプリマジに打ち込むまつり達と等価値として演出されている。
『ワッチャプリマジ!』はプリマジが題材な作品ですが、脇役で「プリマジ以外でも本気でやってる人はカッコいいんだよ!」ということをしっかりと描いている点は本作のテーマに横の広がりをもたせるという意味で重要な点かと思います。
本気でやるから悔しい
ここまでは「本気でやることは素晴らしいことだ!何よりカッコいい!」と言う話をしてきましたが、プリマジの世界って勝負事の世界なんですよね。
作中でも大会の様子が描かれていますし、勝者がいれば敗者がいる。皆が本気でやっていても光陰が出てしまう非情な世界なんです。
そんな「非情な世界である」ということを描いた物語が、『ワッチャプリマジ!』1クール目の最後を飾る物語でした。
先輩と慕う弥生ひなと戦うことになったまつりでしたが、勝負の結果は敗北。精一杯、本気でやったのに弥生ひなに勝てなかった悔しさで次のことも考えられなくなるほど落ち込んでしまいます。
「本気の勝負の世界なので敗北もある」ということは頭で理解していても、「精一杯やったら悔しくない」と言葉にしていても、実際に味わうとやっぱり悔しい。悔しくて悔しくてたまらない。
そういう敗北から生まれる感情を1クール目の最後に持ってきたのは「プリマジは楽しいだけの世界ではない」ということをまつり(と視聴者)に理解させたかったからでしょう。
そして「楽しいだけの世界ではない」ということを十分に理解させたからこそ、みゃむの思いを受けて、まつりの出した「またこんな思いをするかも知れない。でも私はプリマジの楽しさをもっともっと表現したい」に意味があるんだと思います。
悔しさがあるから頑張れる。悔しさがあるからもっと楽しさを伝えたい。
喜びもあるんだってことを皆に伝えたい。
この悔しさがあるからより強い楽しさが生まれると言う構図は、勝負事がある世界だからこそでしょう。
一皮剥け、みゃむとともに頂点を目指すことを決めたまつりのさらなる活躍に期待できる締めくくりだったんじゃないでしょうか。
結びに
「本気になる」って軽く扱われることも多いじゃないですか。
特にゲームとかの娯楽になると「本気でやってる」と言うと「正気か?」みたいな反応をされることも多いですし。でも「本気になれるものがある」って素敵なことですし、それに本気でやってる姿ってカッコいいんですよ。
そういう価値観を今しっかりと描いていこうとする『ワッチャプリマジ!』の方針はとても素晴らしいことをやっているな!と感じます。
魔法で輝くきらびやかなステージを題材にしているのにも関わらず、普段はどちらかといえばスポ根要素が強い……と言うバランスも、双方を上手く引き立てていて素晴らしいと思いますね。