スタートアップ初期(経営1社目)の方に伝えたいこと。その1
本記事について
本記事は、幾度かスタートアップを代表取締役として経営した経験から、創業直後の方に伝えておきたい事についてまとめています。
主にスモールなスタートアップを初めて経営している方向けで、バリエーションが億に届かない段階を想定しています。
あんまり良いことは書いていません。経営してみると、意外と違ったなってなる人もいると思うので、ちょっとずつまとめていこうかなと思って書いております。
お暇な方だけお読みください。
◆つぶさない事業計画を練ろう。
当たりませのことを書いていますが、経営1社目の時は私もできていませんでした。なんとなくで書いていることがほとんどかもしれません。
こういう商品を作って、こういう顧客に届けて、目標はコレ、タイムスケールをテキトーに引いて、KGIやKPI、OKRなんかはこういう感じで・・・採用計画は・・・資本政策は・・・ではだめです。
確かにシード期やアーリー期はそれでも回るかもしれません。しかしながら、思ったより早く需要が生まれてしまい、人材確保が間に合わない、資金調達が間に合わない、組織づくり(内部の整理)が間に合わないetc.となりかねません。
私はそれで、黒字で潰しかけました。(縁あって何とかなったから笑い話ですが、本当によくない。)
ほんとに怖いですよ、黒字倒産。売掛だけ膨らむ一方で、誰も幸せにならないです。仕事量は増える一方。採用が間に合わないので、負担だけ増える。事業成績(あえてこの言い方)は良いのに、本質的に使えるキャッシュが減っていく。なのであえて言っておきます。『事業計画は可能なだけ深く練りましょう』
しかしながらシード期などは、すぐに計画変更することになります。日々目まぐるしくやることが変わっていくのも当たり前です。どんどん計画修正しましょう。あなたが自身の事業のために生きているのであれば、あなたは過去より、自身の事業についてより深い理解であるはずです。将来の展望や、着地地点、問題点etc.以前より広い視野、高い視座で見れているはずです。なので、どんどん修正し磨き上げていきましょう。
とは言いつつも、ここまで、『じゃあ何を書けばいいの?』について触れていません。結論から先に言います。
『計画上のBS/PL/CF』を書きましょう。これを書いていない1年目スタートアップは本当に多いです。もしかしたら不要かと思われるかもしれませんが、あくまで私の意見ですが書いておくべきです。
なぜか?簡単です。重めに資金計画をしていた場合、突然倒産する可能性が大きく減るからです。これはあなたのみならず、従業員、出資者、その他すべてのステークホルダーに対して、ここまでは潰れないという担保になります。人は担保があると安心できるものです。
間違っても、あなたの信頼を担保にしてはいけません。それは将来にわたって大切に蓄積していくべきものです。思惑通りに成長するスタートアップなんてほとんど生まれません。そんなもののためにあなた自身の信頼をベットしないためにも、『計画上のBS/PL/CF』を書きましょう。そしてどんどん修正してみてください。それがあなたの財産になります。
◆良い商品に注意
さて、計画ができたら、実際に実行しなくてはなりません。商品を作ってローンチする。それを改良して再度世に出す。これからあなたはこの過程を何度も踏んでいくことでしょう。
あなたは経営1社目で、自分が『これはいける!』と思った商品を作って世に出しています。そんな時、注意しなければいけないのが『良い商品』です。『良いだけの商品は会社を潰します。』これを忘れないでおいてほしいです。
必ず『プロトタイプ』を作りましょう。あたり前ですが、やりすぎてはいけません。現在のキャッシュで維持できる、事業が回る(会社を潰さない)ようにプロトタイプを作りましょう。
プロトタイプは、『検証すべきなにか』に対して作るものです。最終系の『良い商品』を作るための実験です。最終的な良い商品は、実験結果やその市場再現性から、自社のスケールに合わせて改良していけばよいのです。あくまで実験なのですから、『目的』を明確にして作りましょう。
良い商品やサービスを作ることと、事業をスケールすることは必ずしもイコールではありません。スケールは必ず計画的に行う必要があります。
また、良い商品(ここではあえて、あなたにととってよい商品と、お客様にとって良い商品を混同しています。)がスケールに適しているとは限りません。
さて、あなたが開発している、販売しているその商品は、『良い商品』ですか?それとも『スケールに適した商品』ですか?
あなたがあえて『スタートアップ』として一定のバリエーションを短期で得たい場合、その商品が『ただ良いだけの商品』であってはならない可能性があります。(語弊がある書き方ですが、このまま進めます。)
例えば、市場の輪郭がある程度見えており、まとまった出資を受け、幾つかラウンド踏んでをスケーリングしていくありがちなケースを考えます。
あなたが目指すべきは、SOM(あなたが現在獲得している市場規模)をSAM(あなたが将来獲得すべき市場規模)に近づけていく作業になります。出資を受けるということと、どう出資者をExitさせるのかという戦略は、事業計画でイコールになっているべきです。
あなたが作っている商品が、早急なスケーリングを必要としない場合や、製品の品質のみで競合と渡り合っている場合、それは事業のメインプロダクトとなり得はするが、出資を受けてまで急成長させることの意義が本当にあるのかを今一度考えてみるべきです。
そういった性質の商品であるならば、VCからお金を貰ってやるより、せっかく作った『良い商品の売上げや実績』をもとにその安定化に努め、銀行などから融資するほうがよほど理にかなっています。
忘れないでほしいのですが、あなたが新規市場と思ってやっていることのほとんどは、既存市場の顧客奪取にすぎません。本当の意味での新規市場というのは、そう簡単には生まれえません。
最近ではAIスタートアップの事業計画などを読ませていただくことが幾度かありましたが、結局のところエンタメ市場の下流部分(クリエイター市場)や、キャバクラ経営のインターネット版の安価多売をしようとしているケースがほとんどです。
そうは言っても、あなたがやっていることが革新的であり、本質的に新規市場であるのであるならば、TAM(獲得できる可能性のある全体の市場規模)を膨らませていくことが必要かもしれません。
あなたが本当に先頭を走って新規市場開拓をしているのであれば、それはもはやTAMを広げる事に他なりません。一寸先が闇どころか、存在しないものを手繰り寄せなければいけない道です。心から、応援しております。
◆次回について
こんな感じで偉そうに語っていますが、過去の経験から、やはりやってみなければわからないこと、やってみたがうまくいかないことが殆どです。
私は何回か経験し、事業のトップとしてチャレンジすることはもうないかもしれませんが、これからチャレンジする方に少しでも足しになればと思いこんなくそみたいな記事を書きました。
今後も、何度かこういった記事を書くかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。