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てぃくる 405 もう古い

(1)
「なんでも新しいものがいいっていうわけじゃない」
「そうだねえ」

「古いものには古いものなりに、価値も味もある」
「うんうん」

「ぬか漬けと女房は古い方がいいって言うじゃないか」
「古亭主と濡れ落ち葉には使い途がないけどねえ」

(2)
「エイジドという言い方がある」
「うん」

「すぐに消費しないで寝かしておけば、熟成が進んで美味くなる」
「ふうん」

「だから、もう少し寝かしといてくれ」
「生きながら腐れてるじゃん。サバ以下ね」

(3)
「別れたのは、恋が古臭く感じたからじゃない」
「そう?」

「ああ。恋は、思い出に下げた方がよく輝くんだ」
「目の前のあたしは、古くて輝かないってことね」

「いや……」
「いいけど、フレッシュな危機に備えたら? ぶっ殺してやるっ!」

(4)
「長いつきあいと古いつきあいとはちがうと思う」
「うん」

「ようちえんからずっとつきあってると、古いよな」
「ようちえんどころか、もっと前からだもん」

「ああ。そろそろリセットする?」
「てか、あたしたち小学校に入ったばかりでしょ。つきあってないし」

(ブルーベリー)


 さすがに、ちょうちんブルマーってのは古いですかね。

☆ ☆


 古いものを愛する。古いものを嫌う。どちらがいいというものではなく、どちらも必要なのでしょう。
 古いものを大事にすることが文化やコミュニティの醸成につながり、古いものを捨て去ることで劇的な進歩やブレークスルーが生まれます。

 ただ。人は心身ともに必ず古くなっていくのに、古くなっているということをどうしても認めない人がおられます。その時点でもう思想老化に陥っている。どうしようもなく古いんですよ。自分の古さを逆手にとって味にするという発想があってもいいと思うんですけどね。

 ああ。そういうわたしは、もう古くてぽんこつですけど。

(2018-05-04)

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