てぃくる 225 ぽわん
夢から覚める瞬間は、落胆と安心の狭間だ。現実に戻れるという思いと、帰らなければならないのかという思いの境界で、しばし佇む。
つい先ほどまで身を投じていた理想の世界からいきなり引き剥がされ、味気ない生活音と代わり映えのしない視野で埋め尽くされて。理想郷なんてものはそこに居れば理想でもなんでもなくなるのだと妙にニヒリスティックなセリフを眠気に突き立てているうちに、夢は静かに退場する。
夢を覚えているという人も、そのディテールまで完全に覚えることは出来ない。夢は理想と現実の奇妙な接合物であり、結局のところ双方の残滓に過ぎないのだ。記憶に残すほどの価値はないと見切られてしまうのだろう。
だからこそ同じ夢は二度と見られず、見た夢の全てを実現することも不可能なのだ。
ぽわん。
現実が夢の糊跡をきれいに拭き取るまでの、ほんの数秒。その間こそが、もっとも幸福な時なのかもしれない。
じゃりじゃりじゃりじゃりじゃりっ!!
げーっ! ち、遅刻だあああああっ!!
☆ ☆
ミドリハカタカラクサ
もうちょいましな名前の付け方はないのかと思いますが。
一般にはトキワツユクサの名前で知られていますね。でも、本物のトキワツユクサは、葉の裏が紫がかっているので区別出来ます。
もともとは園芸植物でしたが、逸出してあちこちで野生化しています。でもこいつら……種も出来ないのに、どうやって増え広がっているんでしょう?
それは夢なんかではなく、現実のホラーです……。
(2016-05-30)