てぃくる 1070 薬になる
「鹿の角って、薬になるんだっけ」
「なるよ」
「じゃあ、落ちてるやつ拾ってこよっと」
「ああ、あの枝分かれしてるやつは鹿角って言って、鹿茸とは別物だからね」
「ろくじょう?」
「袋角ってとこなの。まだ固くなる前のやつ」
「ふうん。じゃあ、これは使えるのかな」
「え? 今頃袋角?」
それは違う!
こんな不気味な袋角があったら大変です。でも、この妙ちきりんなものも実は薬になるんですよ。生薬名は五倍子。ヌルデの新芽にアブラムシがとっつくことで形成される虫こぶで、大量のタンニンを含みます。木についている緑のものより、褐変して地面に落ちたものの方が薬効が高いようです。
ちなみに五倍子は古来から染色や皮なめしなどに広く使われており、お歯黒の染め付けにもこやつを使います。黒を出すには五倍子よりもクヌギのどんぐりの実や殻の方がいいみたいですけどね。
五倍子拾う 膨るるものに形なし
(2023-11-19)
Medicine Man by Bobby McFerrin