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てぃくる 640 蓋をする

「どこまで蓋をすれば、世界を覆い隠せると思う?」
「世界に全部蓋をしようとすれば、ものすごくたくさんの蓋が要るだろ?」
「そうだね」
「そんなにいっぱい蓋を作ったら、世界が蓋だけになってしまう」

「自分が蓋になっちゃったら、どうすればいい?」
「誰かに、これで蓋してって言えばいい」
「自分が蓋になりたくなかったら、どうすればいい?」
「誰かに蓋されればいいだけさ」

「誰が蓋をするかが重要なの?」
「いや、誰が蓋をしないかが重要なんだ」
「どうして?」
「蓋をするやつは、決して蓋をどけない。蓋をどかせるのは、蓋をしないやつだけなんだ」

「自分に蓋をする意味って、あるの?」
「さあ。それは蓋に聞いてみないとわからないな」
「その人に聞くんじゃなくして?」
「それがどんな色と形をしていても、結局蓋だからね」

「先に蓋をされちゃったら困るなあ」
「だったら自分から先に蓋をすればいい」
「誰に?」
「それは蓋を開けないとわからないね」

「世界に蓋をする意味って、どこにあるの?」
「さあ。事実として、どんな小さな蓋でも、その下に隠れる世界があるけどね」
「じゃあ、蓋禁止!」
「無理だって。みんな、蓋をして世界を区別してるんだから」

(ラッコタケ?)


鍋蓋の裏に隠れる春キャベツ

(2020-02-09)

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