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てぃくる 479 干物
干すと味が出る。
干物にするというのは、保存のためだけでなく美味しく食べるための知恵ですね。
落語に『てれすこ』という演題がありまして。
誰も見たことのない魚が浜に打ち上げられ、殿様がその名を知っておるものには褒美をつかわすという高札を立てました。ある漁師がお恐れながらと申し出て、その魚はてれすこと言いますだ、と。
他に誰も知らないのですから、信用するしかありません。殿様は渋々褒美を与えましたが、どうにも騙された感が拭えず不愉快でした。
なので一計を案じ、その魚をこちこちに乾し固めてしまいます。再び不思議な魚が見つかったゆえ、名を知るものには褒美をつかわすと高札を立てました。先と同様に件の漁師が現れ、その魚を見るなりそれはすてれんきょうと言いますだ、と即答します。
当然、殿様は激怒しますわな。それは最初と同じ魚じゃ! 誰も知らぬをいいことに、嘘八百を並べて儂をたばかったな!
その漁師は、あえなく死罪を言い渡されてしまいます。いよいよ打ち首にされようという時、漁師はどうしても子孫に言い残したいことがあると殿様に訴えました。まあ、最後の一言くらいはよかろう。殿様は許可を出しました。
「死罪になってしまうゆえ、決してイカの干したのをスルメと言うでないぞ」
☆ ☆
ということで。
こいつは干物になっていますが、おいしくも、美しくもありません。
殿、存分に成敗してくだされ。
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ヨウシュヤマゴボウの紫色の液果。干上がるとこうなりまする。
フレッシュな時には色が毒々しいイメージですが、干物になっても……やっぱり毒々しいですね。造形が。
(2018-11-26)