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てぃくる 35 冠
「王。どのような冠が最も高貴なのでしょうか?」
「そうじゃな。最も高貴な冠は、目には見えないのであろう」
「あーあ。王、まーた商人に騙されましたね」
「……」
「冠を戴かれないのは構いませんが、ウイッグだけはつけて下さいね。てかてか眩しくてかないません」
☆ ☆
侍従というのは、しばしば主人よりも批判性が強く、尊大で横柄になりますね。まあ権威主義を逆用するしたたかさがあるのは、むしろ健全なのかなーとも思いますが。
さて。
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ライティア。
セイロンライティアの名でも出回ります。近年、園芸店でも夏の鉢花としてよく見かけるようになりました。
ライティアはキョウチクトウ科の灌木で、温度さえあれば長期間咲き続けます。花は決して大きくありませんが、清楚な白花で、中央部に冠を抱いています。
単純なつるんとした花弁ではなく、こういう冠のような突起物を持つ花はスイセンなど他にもあって、その部分を副花冠と呼ぶんだそうです。
その冠が何を意味し何を誇っているのかは分かりませんが、質素な白花をさりげなく飾り、特徴づけます。冠の役割としては理想的ですね。この花の冠が尊大だと言う人はおられないかと。
それに引き換え。人間界の冠は権威、権力の象徴とされていますが、主人を引き立てることはほとんどないように思います。豪奢な冠に人が食われてる姿は滑稽そのものなんですが。しゃにむに冠をかぶろうとする御仁がことの他多いようですね。
口に御座す銀の冠に西瓜雨
(2013-07-06)